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「SC e: Concept」はモバイルパワーパックe:を2個搭載する原付二種電動スクーターのコンセプト
2023年10月26日から開催中のジャパンモビリティショー2023で、ホンダは原付二種相当の電動スクーターのコンセプトモデル「SC e: Concept」(エスシーイーコンセプト)を世界初公開した。
ホンダは2023年8月に同社として初の一般ユーザー向け電動二輪車「EM1 e:」を発売。原付一種のスクーターで、車両本体、バッテリー、充電器を含めたフルセットを30万円未満で買えるという点も注目された。
これに続き、原付二種でも一般ユーザー向けの電動二輪車を開発中ということのようだ。
SC e: Conceptの動力用電源は、ビジネス用電動二輪車ベンリィ e:シリーズやEM1 e:が採用する交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」(ホンダ・モバイル・パワーパック・イー)2個で、シート下スペースに搭載される。
シートも前後に長く、原付二種相当ということでふたり乗りも想定されているようだ。
現状、外装などを見る限りコンセプト車然としているが、実現の可能性は?
開発エンジニアの後藤香織さん(EM1 e:の開発リーダーも務めた)と、デザイン担当の栗城大亮さんの2名に話をうかがった。
Honda 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部
電動開発部 二輪商品開発課 アシスタントチーフエンジニア
後藤香織さん
Honda モーターサイクル・パワープロダクツデザイン開発室
e-プロダクトデザインスタジオ アシスタントチーフエンジニア デザイナー
栗城大亮さん
2人乗り可能な原付二種相当の性能を確保
──シティユースを想定し、ワンアクションで出し入れ可能なバッテリー2個を搭載のSC e: Conceptですが、原付二種相当だという同車は、車体で何かベースとした車両はあるのでしょうか?
後藤さん●それは現時点ではお答えできないんですが、現在原付二種モデルを使っているユーザーさんの乗り換えを想定した車体サイズにしています。ただツーリングユースではなく、決まったコースの往復などをメインとする使い方で考えています。
──航続距離は、どれくらいを想定していますか?
後藤さん●EM1 e:は原付一種のため、30km/h走行で一人乗りの場合の満充電で53kmほど走行可能です。SC e: Conceptのほうは現時点では非公表ですが、原付二種相当となると60km/h走行できますし、二人乗りもするとなると、バッテリー2個搭載でも(EM1 e:は1個搭載)航続距離的にはやはりハンデがありますね。
──電源をEM1 e:と同じHonda Mobile Power Pack e:としたのは?
後藤さん●住宅環境的にプラグインタイプが便利な状況ばかりではないでしょうし。この方式のほうが今はベターだと考えています。私もEM 1e:を購入して使っていて、自宅まで往復13kmほど走るんですが、それで十分対応できます。なお、ホンダでは今回のジャパンモビリティショーで展示したものと同じようなバッテリー交換ステーションを開設の予定です。こういう電源ステーションは現状は法人向けの対応に限定していますが、2024年には個人向けにも対応していくということなので、多くのスポットが設置されることに期待しています。
被視認性も考えた、シンプルクリーンなデザイン
──車体のデザインや造形には、どんなねらいがありますか?
栗城さん●デザインコンセプトはシンプル・クリーンを掲げていて、それにプラスしてモビリティならではの動的なイメージも入れている感じです。動的というのは、動き出しそうなイメージを各部の造形などで表現しています。
──ライト周りのデザインも個性的です。
栗城さん●二輪車では灯火類のデザインは重要だと思っていて、現在の交通環境の中で埋もれてしまわないような、ある程度目立つ造形デザインじゃないといけないと思っています。はたから見て、走って来るのを気付いてもらえるデザインですが、左右に広げながらも無駄に大きくせず、かつコンパクトにというのは意識しています。SC e: Conceptは原付二種相当なので、PCXとかリードなどが当社の既存モデルですが、立ち位置がちょっと違うと思うので、それらにないイメージもデザインに盛り込みました。
──電動車ではマフラーありませんが、その点に関してデザイン上のメリット、デメリットはあるのでしょうか?
栗城さん●ホイール部を見せるというのは意識しますね。特に右側はよく見えるので、意識して表現しました。
──市販化に向けては?
栗城●発売は現状未定です。あくまで、市販化に向けて開発中の段階なので詳細は公表できませんが、今回のショーでのお客さんのご意見なども踏まえてベストな仕様を今後も探っていきます。
レポート●阪本一史/太田力也 写真●岡 拓/モーサイ編集部