アドベンチャーを超える悪路走破性! SCRAMBLER 1200 シリーズ
価格●未定 発売時期●3月中旬予定

●エンデューロコースも難なくこなす驚きの悪路走破性は、このクラスで唯一無二と言っていい(写真はスクランブラー1200 XE)。その気になれば映画「大脱走」のような大ジャンプだってできる(笑)
1960年代初頭に端を発するトライアンフのスクランブラーモデル群。それら荒野を縦横無尽に駆け抜けた“本物”の価値を現代に昇華したのが、スクランブラー1200シリーズだ。その実力をラリーレイドの第一人者、三橋 淳がチェックした。

●写真はスクランブラー1200 XE
スクランブラーの「精神」を継承
ポルトガル南部のファロという町で行われた試乗会は丘陵地帯のストリートのほか、クローズドのオフロードコースでも行われた。つまりそれだけオフの「走り」に自信があるということ。この手のバイクとしては異例のことではないだろうか。
もともとスクランブラーとはロードスポーツ車を改造し、アップハンドルやアップマフラー、スリムでフラットなシートなどを装備して未舗装路を走れるようにした過渡期のバイクのことだ。現在では、オフロードにおける絶対的な走行性能というより、そのレトロな「様式」をウリにしたバイクがほとんど。しかし、このスクランブラー1200は2本サスの採用など、往年のスタイルを踏襲しつつ、現役バリバリのハイパフォーマンスマシンだ。トライアンフの主張としては、スクランブラーはあらゆる道を走るアドベンチャーバイクの元祖であり、その「精神」を現代のマシンとして昇華させたのがスクランブラー1200、ということらしい。先に登場している「ストリート スクランブラー900」はスタイルをファッションとしても楽しむモデルであり、この両車のコンセプトは大きく異なっている。

●写真はスクランブラー1200 XE
実際、スクランブラー1200は既存のどのアドベンチャーモデルよりもオフロード性能の高いマシンだった。バランスのいいスリムな車体は数値以上に軽く感じられ、ロングストロークの前後サスペンションと、制御が秀逸なトラクションコントロール、ABSと相まって、フラットダートはもちろん、起伏のあるエンデューロコースですら存分に駆け回れる。特に前後250㎜というサスストロークや、XCよりさらに高度な電子制御を持つXEの走破性は完全にオフロードバイクの域だ。

●写真はスクランブラー1200 XE
一方、1200㏄の水冷バーチカルツインはパルス感が気持ちいい、やや古風な味付け。アフリカツインをはじめ、高性能なアドベンチャーモデルはビュンビュン回るエンジンが多いが、こちらは中低速トルクを重視した扱いやすい特性だ。近代的な足周りとのギャップがこのマシン独特の味となっている。
車体のジオメトリーは様々なシチュエーションに対応できるよう直進安定性に優れた設計で、純粋なオフロードモデルのようにクイックなハンドリングではない。特にフロントタイヤが遠いXEは前輪に荷重を乗せにくく、タイトなターンは苦手だ。
もしあなたが平均的な日本人体型で、オンロード走行における人車一体感を重視するタイプのライダーならコンパクトかつ低重心なXCをお薦めする。XEの方は身長182㎝の筆者が両足つま先立ちという足着き性も含め、オフロードに振り切った、乗り手を選ぶモデルだ。

●オンロードでは直進安定性の高いアドベンチャー的な乗り味。エンジン特性も相まって長距離をゆったりとしたリズムで走れる。フロントにショーワ製倒立フォーク、リヤにオーリンズ製ツインショックを採用する点は2モデルで共通ながら、写真のXEは前後とも250㎜ものホイールトラベル量を誇る(XCは同200㎜)。他にも慣性計測ユニット(IMU)や調整式フットコントロールの有無などが異なる

●シート高が840㎜に抑えられたスクランブラー1200 XC(XEは870㎜)。XE比でライディングモードのOFF-ROAD PROやハンドガードなどは省かれるが、落ち着いた色遣いと14万円以上安い価格は魅力大だ

●90馬力/11.2kgmを発揮する水冷1200㏄パラレルツインエンジンから2本出しサイレンサーへつながるアップマフラーは、まさにスクランブラーの象徴。各種の熱対策も施される

●メーター部には新世代のフルカラーTFTディスプレイを採用し、多彩な情報を見やすくライダーへ提供。スマホのアプリを活用するシンプルなナビ表示などにも対応している