ヒストリー

クルマもバイクも「ベンツ」が元祖だった 世界初&日本初のモーターサイクル誕生秘話

ガソリンエンジンのバイク第1号はダイムラー(現在のベンツ)

世界で最初にガソリンエンジンを搭載したバイクは、実は世界初のガソリンエンジンのクルマより、ほんの少し早く誕生しました。
時は1885年11月のドイツ。ゴッドリーブ・ダイムラーが発表した4ストローク(4サイクル)単気筒264ccエンジンを、木のフレームに搭載したバイク。それが世界で最初のバイクになります。
同月10日にはダイムラーの息子であるポールがドイツのカンシュタット~ウンテルタークハイム間(9.5km)を往復したという記録も残っています。

ダイムラーが作った世界初のバイク(写真はレプリカ)。前輪が後輪よりも大きいのは、当時の自転車と同じです。補助輪がふたつついているのも特徴と言えます。

そしてダイムラーに少し遅れながらもカール・ベンツは、同じく1885年の11月に4スト単気筒エンジンを載せたガソリン自動車を完成させました。前1輪、後2輪の3輪車です。世界初のバイクと自動車に共通しているのは、エンジンが4ストだったということです。
なぜかと言うと、ダイムラーの場合4ストエンジンの生みの親である、ドイツ人のニコラス・アウグスト・オットーの会社で工場長をしていた(1883年に独立)ためです。
また4ストエンジンの「吸入・圧縮・爆発・排気」の4工程は発明者であるオットーの名前を取り、「オットーサイクル」と呼ばれています。
一方ベンツは、当初2ストローク(2サイクル)エンジンを開発していたのですが、上手くいかず4ストに切り替えていたのです。

ダイムラーのバイクの三面透過図。性能は最高出力は0.5psで最高速12km/h。航続距離は26kmでした。

ダイムラーとベンツのそれぞれの会社はライバルでしたが、1926年に合併し、ダイムラー・ベンツ社になります。そして乗用車ブランドをメルセデス・ベンツとしたのです。
つまりバイクもクルマも生まれは“ベンツ”というわけで、オットー、ダイムラー、ベンツの3人が現在のモータリゼーションの創始者と言えますね。

ドイツに保管されているレプリカは実走可能。乗り心地はどんなものなのでしょう?

大阪で生まれた日本初バイク:NS号

国産初のバイクは1909年、大阪の島津楢蔵が22歳のときに製作したNS号(4スト400cc)でした。“自動自転車”と呼ばれていた同車は、タイヤ以外はすべて手作りで(タイヤは輸入品)、スパークプラグやキャブレターなどの精密部品も島津が自作したと言われています。またその後島津は、1912年に2スト250cc単気筒のNMC号(「日本モーターサイクル」から命名)を20台ほど製造、販売したそうです。

日本初のバイク、NS号。始動方式は押し掛け式ですが、ミッションやクラッチはなかったため走り出すまでが結構大変だったそうです。

また日本に初めてやってきたバイクは、世界初の量産車ともいわれるドイツのH&W号(ヒルデブラント・ウォルフミューラー)で、1896年に輸入されました。当時は欧州車を中心とした輸入車ばかりで、どれも非常に高価だったため庶民の乗り物にはなりませんでした。

日本に最初に上陸したドイツのH&W号。当時は皇居周辺で、デモ走行が行われたと言われています。

バイク普及のきっかけを作ったホンダA型

「バイク=高級品」という風潮が変わったのは第二次世界大戦後、先鞭を付けたのは1947年に登場したホンダA型。本田宗一郎が「庶民の足をさらに便利にしたい」という思いから製品化した、自転車に取り付ける補助エンジンです。
エンジンは、その後のホンダの代名詞になる4ストではなく2ストで、単気筒50㏄。燃料タンクや後輪駆動用のプーリーやベルトもキット化しました。

ホンダの初めての製品であるA型。あくまで補助エンジンなので、写真以外の自転車にも搭載されていました。

3人の若者が作ったアメリカ初のバイク:ハーレー・ダビッドソン

一方アメリカのバイク第1号は、ご存知ハーレー・ダビッドソンです。
1903年にビル・ハーレーと、アーサー/ウォルターのダビッドソン兄弟の若者3人が116cc単気筒エンジンを搭載した試作車を完成させました。その際に“トマトの空き缶をキャブレター(吸気装置)にした”という開発話は有名ですね。
その後試作車を発展させた405cc単気筒車(もちろんキャブレターは空き缶ではありません)を量産車として販売しました。
なおハーレーの代名詞であるVツインエンジンの市販車は、1909年にデビューしました。これは1908年のレーシングモデルから進化した物です。

ハーレー・ダビットソンの第1号車。エンジンとともにアメリカのハーレーミュージアムに展示されています。

ちょっと豆知識:バイクを「単車」と呼ぶ理由

年配の方はバイクのことを「単車」と言いますよね? これは単気筒エンジンだからとか、1人で乗るからではなくて、側車(サイドカー)がない「バイク単体だから」です。こうした呼び方をする理由は、戦後のバイクの使い方に起因しています。
当時の四輪車は非常に高価で、庶民は中々買うことができませんでした。そのため、自転車やバイクが荷物や人を運ぶ手段として使われており、そのための側車を取り付けるのが一般的でした。

現在は側車付きのバイクを見かけることは少なくなりましたが、ロシアのバイクメーカーウラルはサイドカーの付いたバイクを製造、販売しています。写真の車両は同社のGear Up(2020)。

その後ダイハツ・ミゼットに代表されるようなオート三輪ほか自動車の普及に伴い、バイクは運搬の手段から移動手段となり、側車付きのバイクは減って行きました。そして「側車を外したバイク単体」のことを「単車」と呼ぶようになったというわけです。
その名残として、レースの世界では今でもサイドカークラスを併催するときは、バイクのレースをソロクラスと呼んだりします。

レポート●石橋知也 編集●モーサイ編集部・上野
写真●ダイムラー・クライスラー/ホンダ/ハーレーダビッドソンジャパン/ウラルジャパン/八重洲出版

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