2017年10月25日のプレスデーに始まり、11月5日まで東京ビッグサイトで開催された第45回東京モーターショー。
会場のホンダブースでは、いつものショーのように4輪、2輪の未来を感じさせるコンセプトモデルや2017年当時の市販予定車(現在は販売中)、最新モデルが華やかに並ぶ一方、約60年にわたるスーパーカブの歴史、現在、未来を彩るカブワールドも展開されていた。
文/阪本一史
※本記事は2017年発行、ヤエスメディアブック「HONDA スーパーカブメモリアル」に掲載されていたものを再編集しています。
2017年はカブワールドだった!
モーターサイクルショーではなく、4輪も含めたモーターショーのホンダブースで、これほど2輪のスペースが大きいのは、久しぶりではないか(はるか昔のホンダは2輪の展示しかなかったのだが……)。
それもそのはず、前回の東京モーターショーが行われた2017年当時、ホンダの原点とも言えるカブが、ふたつの記念トピックに彩られていたからだ。
並べられたのが6台の歴代車(C100/CA100/C310/C50/CT110/50スーパーカスタム)と、3台の市販予定車(スーパーカブ50/110/クロスカブ110)、さらにはスーパーカブC125と同系エンジンを搭載するモンキー125という2台の参考出品車。
ほかのホンダ製2輪車の出展に目を転じると、ヒューマノイドロボット研究で生まれた制御技術を盛り込み、マシン自体がバランスを保つことができるライディングアシストe、DCT機構搭載のアフリカツインや最新のCBR1000RR・SP、カスタマイズコンセプトモデルのCB1100RSといった大物が多々見られる。
しかし、アニバーサリーで特設されたカブワールドのまわりは、それに劣らぬ注目ぶりだった。
フューエルインジェクションでの電子制御化が進み、厳しい排出ガス規制への対応が求められる時代とはいえ、いまだ操作にバイクとしての素朴な味わいを多々残すスーパーカブの、どこか懐かしい時代からあった存在感や、自分でも乗れそうなバイクという、2輪車に馴染みの薄い人々にも低い垣根が、衆目を集めるのだろう。
だれからも愛される町の人気者、カブの世界から、以降ではその歴史と今後の人気者になるかもしれないカブの新星をご紹介する。
1958年10月10日から、東京都文京区内の後楽園競輪場内で開催された第5回全日本自動車ショウでの、ホンダ出展場の様子。
OHCツインのC90/70系のほか、登場間もないスーパーカブC100を展示。
当時の記事によれば、C100数台が地上に置かれ、観覧者に自由にキックを踏ませていたようだ。
また出力が4.5hp/9500rpmで、世界最高の数値を発揮していると説明を聞き、「改めて車体の下に寝かされている小さなエンジンを覗き込み、どこにその威力があるのかと目を丸くしている人が多い」、とも書かれていた。
カブワールドエリアの一段高いところに置かれた初代C100。
’58年8月に発売開始となった同車開発期間は1年8カ月と、当時のホンダ車の中では長めで、その内容の濃さと意気込みが感じられるものだ。
新技術/機構が多用されたため、初期には細かな対策と改良が重ねられ、’59年6月には月産1万台を突破するものの(埼玉工場製)、本田社長の月産3万台の号令にはまだ応えられず、’60年4月の同車専用工場とも言うべき鈴鹿製作所の稼働開始で実現が可能となった。
CA100(’62)。
米国向けに発売され、アメリカにホンダの2輪車を根付かせたモデル。
’59年アメリカホンダモーターの設立後、ドリーム305や同250、ベンリイ125などが投入されたものの、当初の評価は芳しくなかった中、意外に好評だったのが、当初ホンダ50の名称でラインアップに加えられていたスーパーカブだった。
明るい紅白色をまとい、ふたり乗りシート、ウインカー非装備といった特徴を持つC100ベースの車体には、C100と同様の空冷OHV49㏄エンジンを搭載。
C310(’63)。
海外の現地法人としてベルギーで初めて生産された、欧州向けモデル。
欧州製2サイクルモペッドを意識して開発され、ポートカブ用エンジンをベースにペダルを付け、最高時速40㎞/hを超えないように2.2ps/7000rpmの性能が与えられた。
変速は左グリップ配置の手動3段。
欧州製2サイクルモペッドよりも車体が大きく重めなのがハンデだったほか、当時の2サイクルのように燃料へオイルを混合させてしまう現地ユーザー側のトラブルもあり、市場への浸透が難しかった模様。
50スーパーカスタム(’83)。
前年登場の50SDXから搭載のエコノパワーエンジンの性能をさらに高め、燃費性能で最高峰のリッター180㎞(30㎞/h定地走行テスト値)を達成したモデル。
エコノミードライブ付きの新ロータリー4速を採用し、中低速域での取り回し性を重視。
2017年11月より新発売された新型50/110も登壇。
その奥にある黄色のモデルが、市販予定車(2018年2月より発売中)で展示された新型クロスカブ。
あらゆる道への走破性がSTDに比べ高められたクロスカブはその趣味性の高さから多くの趣味人に愛されており、排気量も50/110の二本立てだ。
第45回東京モーターショーで参考出品の2台。
手前がスーパーカブC125、奥が同系エンジン搭載のモンキー125。ともにタイで開発され、発売はスーパーカブC125が2018年9月14日、モンキー125が2018年7月12日。
現在すでに発売され、両車とも街なかでも見かけることが多くなった。
直後に行われる第46回東京モーターショーでは、ハンターカブの後継車となるCT125の参考出展が行われることがすでに情報公開されている。
いったい詳細はどのようなものなるのか、ショー会場でのさらなる情報公開を期待したい。