ヒストリー

【愉悦のaround 50ps】峠小僧が憧れたバイクに乗ってみた(NSR250R編)

小排気量で絞り出した約50㎰の世界

’80年代初頭から始まる空前のバイクブームは、激烈なパワーウォーズを巻き起こした。
筑波(タイムアタック)、ゼロヨン、最高速……。
毎月更新される二輪誌テストの結果にナウなヤングは狂喜乱舞していたもの。そんな“出力狂時代”を象徴するマシン2台に今、試乗してみる。
文●小川恭範 写真●編集部

※本記事は別冊Motorcyclist2014年7月号に掲載されていたものを再編集しています。

 

“缶コーラ1本分”が見せた夢

1992 HONDA NSR250R 45ps

CBR250Rがマイナーチェンジを受け、最高出力は27㎰から29㎰へ!
クラス最高の31㎰を発揮するニンジャ250大人気!(現在は37psにアップ)
ヤマハのリーサルウエポンYZF-R25は、驚きの36㎰……!(現在は35psにダウン)

と、現代に生きる二輪雑誌編集部員としての筆者は、再び盛り上がりを見せてきた250スポーツの新情報へ接するたび、「いいね、いいねぇ~」と大いなる興味をそそられてはいる……ものの、心の奥底に潜むダークサイドな自分は、環境諸規制や時代の流れなんてそっちのけで「4ストで30㎰前後なんて、40年以上前には到達していたよなぁ~。2ストなんか30年前で、もうアラウンド50㎰の世界だったぞ!」と勝手なことをほざいてしまう。

ビッグバイクへあこがれつつも、乗るためには試験場での“限定解除”が必要だった時代(’75年~’96年8月)。
教習所で簡単に取得できる、自動二輪免許・中型限定があれば運転可能な400cc以下のバイクに人気が集まったのは、ごく自然な成りゆき。
そして狂乱のバイク……いや、あえて言うならレーサーレプリカブームが必然的にやってきた。

’80年8月登場の偉大なるマイルストーン、ヤマハRZ250からして、54㎜×54㎜のボア・ストロークを持つ水冷パラレルツインエンジン(35㎰)や、モノクロスリヤサス採用など市販レーサーTZとの共通項を強くアピール。
すると2年後、ホンダは世界GP500ccクラスに4サイクルで挑んでいた「NR」直系のV型エンジンであることをうたい文句に、VT250F(35㎰)を発表。
だが、やはり真打ちは’83年に姿を現したスズキRG250Γだろう。
市販車初となるアルミフレームに、250㏄クラスの自主規制値となった45㎰エンジンを搭載してライダーの度肝を抜いた。

以降、新しいこと、速いことが国内だけで年間数万台(!)単位の販売台数に直結することから、カワサキまで巻き込んだ熱き性能向上競争が展開されたことは、読者諸兄姉もご存じのとおり。
今では信じられないが、1年ごとのモデルチェンジは当たり前。
4サイクルエンジン搭載車も’85年のヤマハFZ250フェーザーから自主規制値へ到達。
ほどなくして4メーカーすべてが、単室容量たった62㏄少々の並列4気筒DOHC4バルブユニットをレッドゾーン1万9000rpm領域までブン回し、45㎰を獲得するという〈一般市販車〉をラインアップ……。

そんな細い缶ジュース1本分の排気量で、得られるパフォーマンスを徹底追求した軽二輪レーサーレプリカ。
数ある中で人気と実力を兼ね備えた車種を1台挙げるなら、ホンダNSR250Rが筆頭にくることは間違いない。

今回は、かつて別冊MC編集部に在籍していた人物が所有する、’92年型NSR250R(MC21)を駆ることができた。

●外観こそSTDだが、前後サスともSE/SP用減衰力調整機構付きユニットを採用(リヤスプリングはアイファクトリー製)。前述したブレーキと併せ、なかなか“通”なカスタムが施されていたこともあり、車体性能は万全。タイヤはピレリディアブロ・ロッソⅡ。……おそらくこの先、二度と現れないであろうアラウンド50㎰の軽二輪。これはもう、立派な“バイク遺産”だ。良コンディションの車両が1台でも多く後世に伝わることを願う

彼が連載していた車両そのもので、丹精込めたエンジンOHの成果か、コンディションは絶好調。
’12年に行ったパワーチェックでは、クランク軸出力が55.2㎰/1万1024rpm、後輪出力でも50.6㎰/同と、メーカー公称値45㎰/9500rpmを大きく上回っている。

キックの儀式3回で、ポンポロポンポンポンというリズミカルな音と、今や懐かしさすら感じる白煙がサイレンサーから吐き出され始めた。右手を軽くひねると弾かれたようにタコメーター指針が反応する。いいね!

じっくり車体各部やタイヤに熱を入れたあと、安全を確認して勇躍(ゆうやく)フルスロットル。
「パイィーーーン!」というカン高いチャンバー共鳴音とともに、まわりの景色がコマ送りにされていく!

●浮遊感とともに瞬間でとんでもない領域まで達するスピードを、ブレンボ製ラジアルマスターシリンダーに換装された前ブレーキが強力に減速。ハンドリングも軽快……ながら、本気で対峙するには高い集中力が不可欠だ

磨き上げられたPGM-Ⅲシステムが空燃比、点火時期、RCバルブ作動などを正確にコンピュータ制御し、250㏄2サイクルらしからぬ低回転域の扱いやすさをNSR250Rへ与えているとはいえ、8000rpmからのパワーバンドに入るや、二次曲線的に鋭く吹け上がるレーサー直系挟角90度Vツインユニット本来のパワフルさが前面へと押し出される。

試乗車はレッドゾーンを500rpm回り込む1万2500rpmまで常用可。
高回転を駆使すれば車両本体の軽さと相まって、視線の先へ瞬間移動するような加速感覚が味わえた。
これに比べてしまうと、4サイクル車の増速フィールはどこまでいっても“正比例”にすぎない……。

●スポンジベースに取り付けられた回転計と水温計が純レプリカの証(速度計の上にある時計は社外品)。その水温計のリングが傷ついているのは、後付けのマスターシリンダーが少し干渉しているから……ってオイオイ!

ハイパフォーマンスだけを純粋に追求できた時代の象徴は、20年以上経った今でも驚きに値する高性能を有していた。
降車前、もう二度とこのNSRのような2サイクルスーパーウエポンは生まれてこないということに改めて思い至ると、白煙が目にしみた。
 

1992 NSR250R(MC21) 主要諸元

●エンジン:水冷2サイクルV型2気筒クランクケースリードバルブ 総排気量:249㏄ 燃料供給方式:キャブレター(TA22)
●性能:最高出力:45㎰/9500rpm 最大トルク:3.7kgm/8500rpm
●変速機:6段リターン
●寸法・重量:全長1975 全幅655 全高1060 軸距1340 シート高770(各㎜) キャスター:23°15′ トレール:87㎜ タイヤサイズ:Ⓕ110/70R17 Ⓡ150/60R17 車両[乾燥]重量:151[132]㎏
●容量:燃料タンク 16ℓ オイル 2.0ℓ
●当時税抜価格:62万円

 

忘れがたき“スーパークオーター”たち

1984 SUZUKI RG250Γ

衝撃デビューの翌年に大規模なマイチェン!
スラント化された前後カウリング、吸気系にEACS追加、フレームはMR-ALBOX化、DECAキャリパーを装備……etc。
写真はフルカウルのHBカラー仕様。

当時価格:46万円
エンジン:水冷2サイクル2気筒
車重:148kg
最高出力:45ps/8,500rpm
最大トルク:3.8kgm/8,000rpm
最高速度:165km/h

 

1984 KAWASAKI KR250

数々の栄光に輝いたレーサーKR直系のタンデムツインを市販した野心作。
この初代から翌年には“S”化して低速トルクを増強。
ただ、’88年からはパラレルツインの「KR-1」が登場している。

当時価格:49万8000円
エンジン:水冷2サイクル2気筒
車重:157kg
最高出力:45ps/10,000rpm
最大トルク:3.7kgm/8,000rpm
最高速度:170km/h

 

1985 YAMAHA FZ250 PHAZER

250cc初直4の座こそスズキに譲ったものの、ジェネシス思想を具現化した前傾45度DOHC4バルブエンジンは45㎰を1万4500rpmで発生。
前後16インチ、斬新なスタイルも大評判となった。

当時価格:49万9000円
エンジン:水冷4サイクルDOHC4気筒
車重:156kg
最高出力:45ps/14,500rpm
最大トルク:2.5kgm/11,500rpm
最高速度:130km/h

 

1988 YAMAHA TDR250

初代TZR(1KT)の45㎰パラツインを鋼管ダブルクレードルフレームに搭載した爆速スクランブラー。
最低地上高を確保するため、エンジン前方でクロスしたアップタイプのチャンバーを採用する。

当時価格:47万9000円
エンジン:水冷2サイクル2気筒
車重:134kg(乾燥)
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.6kgm/8,500rpm

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モーサイ編集部

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