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※本記事は別冊Motorcyclist2008年1月号に掲載されていたものを再編集しています。
時代にともなった進化、そしてネイキッドの台頭
レプリカブーム後編のトップバッターは’85年11月発売のTZR250である。
RZ系とは異なる新設計パラツインを採用し、またプレス成型のアルミデルタボックスフレームも’86年型TZ譲りであり、レーサーとの並行開発を意味していた。
さらにクイックすぎた16インチから脱却、前輪17インチの採用もTZRのハンドリング向上に寄与し、以降はこれが常識となった。
TZRは速く乗りやすく軽量スリムコンパクトでスタイルもレーサーそのもの、それまでの2サイクル=ピーキーで扱いにくいという概念まで払拭(ふっしょく)するほどの完成度で売れに売れた。
だがホンダも黙っておらず、VツインのNSを進化させたNSR250Rを’86年10月に発売。
サーキット走行を前提とする割り切ったコンセプトによる絶対性能差でTZRを圧倒したのである。
NSRはTZRよりも市販レーサーに近く、もはやレーサーレプリカはレーサーそのものになりつつあった。
そして’88年、NSRはMC16型からMC18型へのフルモデルチェンジで飛躍的に進化を遂げ、スズキも満を持してRGV250Γを投入。
カワサキKR-1も含めて前輪17インチ+ボックス構造アルミフレーム車がそろい踏みとなったのである。
しかしその一方で、加熱するレプリカブームを懸念する動きも現れていた。
ローリング族や若年層のバイク事故死が社会問題となり、メーカーもアンチレプリカコンセプトのニューモデルを打ち出す……。
平成元年である’89年。
この年から2輪車に180㎞/h速度リミッターが義務づけとなり、業界全体がヘッドライトの昼間点灯を呼びかけ、過激マシンの最右翼だったNSRも意図的にピークパワーが削られていた。
依然としてレプリカ人気は高かったものの、峠はすでに越えていたように記憶する。
またこの年、ゼファーの大ヒットによりネイキッドカテゴリーに属するモデルが台頭。
’90年代に入るとレプリカブームは静かに衰退していったのである。
(髙野英治)
’86 YAMAHA TZR250
ボックス構造のアルミフレームに前後17インチホイールを備え、速さと乗りやすさを両立させたレプリカブームにおける珠玉の名作。
軽量コンパクトで、2ストながら女性ライダーの人気も集めた。
歴代TZRではベストバランスとする声も少なくない。
1986年4月25日発売
エンジン:水冷2サイクルV型2気筒
車重:142kg
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.5kgm/9,000rpm
当時価格:54万9000円
’87 HONDA NSR250R
目の字断面構造のアルミツインチューブフレームに水冷Vツインを搭載、前作NSに続いてRS250Rと基本設計を共有する手法を採用したNSRの初期型。
乗りやすさよりサーキット走行に主眼を置き、割り切ったコンセプトで実力ナンバーワンの座に駆け上がった。
1986年10月1日発売
エンジン:水冷2サイクルV型2気筒
車重:127kg
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.8kgm/8,000rpm
当時価格:57万9000円
’87 HONDA VFR750R(RC30)
レーサーレプリカの究極形が誕生
WGP500レプリカではないがTT-F1のリアルレプリカと言え、激化する当時のブームを象徴し、頂点に立つ1台。
アルミタンクにチタンコンロッド、FRP外装などの豪華アイテムをふんだんに採用し、クオリティの高さでは市販車の域を完全に超えていた。
148万円は市販車としては高額だが内容を考えれば破格のバーゲンプライスと言え、国内1000台限定は即完売となった。
これ以降「レプリカにやりすぎはない」と思わせたモデルだ。
1987年8月31日発売
エンジン:水冷4サイクルDOHC V型4気筒
車重:201kg
最高出力:77ps/9,500rpm
最大トルク:7.1kgm/7,000rpm
当時価格:148万円
’89 YAMAHA TZR250
前年にフルチェンジされたTZにならい、後方排気パラツインを搭載した第2世代TZRの型式名は3MA。
車体は高剛性追求の結果先代型より10㎏増量。
過渡特性はナーバスで、わずか2シーズンでVツインの新型にバトンタッチ。
’90年型は倒立フォークを採用。
1989年2月25日発売
エンジン:水冷2サイクル2気筒
車重:136kg(乾燥)
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.8kgm/8,000rpm
当時価格:61万9000円
’89 HONDA NSR250R
’88年型の改良版で、型式名は同じMC18型。
出力特性が大きく変更されスラントしたカウルやアップサイレンサーを採用、アルミスイングアームにもフレーム同様の五角断面形状が与えられていた。
写真は乾式クラッチとマグホイールを備えたSP仕様。
1989年2月10日発売
エンジン:水冷2サイクル2気筒
車重:131kg(乾燥)
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.8kgm/8,000rpm
当時価格:59万9000円
’90 HONDA NSR250R
’90年型はMC21型となり、エンジン・車体ともフルチェンジ。
チャンバー形状を優先させた湾曲スイングアームが特徴で、リヤホイールも17インチ化された。
パワーとハンドリングのバランスは歴代ナンバーワンとの呼び声も高い。
SP・SE仕様も設定された。
1990年2月13日発売
エンジン:水冷2サイクル V型2気筒
車重:132kg(乾燥)
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.7kgm/8,000rpm
当時価格:60万9000円
’90 SUZUKI RGV250Γ
初代のVJ21A型からVJ22A型となり、倒立フォークや右2本出しサイレンサーと湾曲スイングアームを備え、外装の形状も一新された。
SP仕様は乾式クラッチと前後調整式サスを備え、クロスミッションも採用。
ギヤレシオのみSTDと共通としたSP2もあった。
1990年1月31日発売
エンジン:水冷2サイクル V型2気筒
車重:139kg(乾燥)
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.9kgm/8,000rpm
当時価格:60万9000円
’91 YAMAHA TZR250R
後方排気パラツインの3MAから新たにV型2気筒に転換、3XV型となった。
倒立フォークに湾曲スイングアームを備え、乾燥重量は初代と同じ126㎏に戻った。
SP仕様や中間グレードのRSも設定され、最終型は’95年型SPRに一本化、’99年まで販売された。
1991年3月1日発売
エンジン:水冷2サイクル V型2気筒
車重:126kg(乾燥)
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.8kgm/8,000rpm
当時価格:62万9000円
’93 HONDA NSR250R
’93年11月に発売、自主規制により45→40psにパワーダウンするがPGMメモリーカードキーやプロアーム、新設計外装などで商品力を向上させたMC28型。
主力は中間グレードのSEで’99年まで販売されたが、マグホイールや調整式サスを備えたSPもあった。写真はSP仕様。
1993年11月10日発売
エンジン:水冷2サイクル V型2気筒
車重:134kg(乾燥)
最高出力:40ps/9,000rpm
最大トルク:3.3kgm/8,500rpm
当時価格:68万円
’96 SUZUKI RGV-Γ250SP
VJ23A型。
’95〜96年の全日本GP250タイトルを獲得した故沼田憲保選手が駆ったワークスXR95のレプリカで、エンジンは従来型と異なる水冷70度Vツイン。
SP仕様のみの設定ながらセルモーターを標準装備、最後発マシンだけに高い完成度を誇った。
1996年2月29日発売
エンジン:水冷2サイクル V型2気筒
車重:134kg(乾燥)
最高出力:40ps/9,500rpm
最大トルク:3.5kgm/8,000rpm
当時価格:77万7000円
4スト400でもレーサーレプリカが人気に…
’80年代に2スト250㏄とならんで白熱したのが4スト400㏄レプリカで、F3レースなどでは2ストより有利な面も少なくなかった。
CBR400RRは前作のCBR400Rをベースにエアロフォルムから一転、レプリカらしさを打ち出して人気を得た。
’89年発売のZXR400はツアラー的フォルムだったZX-4の改良版と言え、初めて倒立フォークを採用したモデル。
ほかにVFR、FZR、GSX-Rを交え4メーカー5ブランドがシノギを削っていた。
’88 HONDA CBR400RR
1988年11月19日発売
エンジン:水冷4サイクル DOHC4気筒
車重:164kg(乾燥)
最高出力:59ps/12,500rpm
最大トルク:4kgm/10,000rpm
当時価格:69万9000円
’89 KAWASAKI ZXR400
1989年3月1日発売
エンジン:水冷4サイクル DOHC4気筒
車重:162kg(乾燥)
最高出力:59ps/12,000rpm
最大トルク:4kgm/10,000rpm
当時価格:73万9000円
※掲載しているデータは、運輸省(現国土交通省)に新型自動車として届出がされた資料を基に、2輪車製造メーカー資料、自動車工業界資料、当社出版物などに記載された資料に基づいて制作したものです。また、各車の主要諸元で不明なもの、メーカー未発表データについては割愛しています。