94モデル(MC28)から採用された「カードキーシステム」
電気(電装関係)にまつわる秘密や伝説が多いのも、ホンダNSR250Rの面白さである。「ハチハチでは配線を1本抜けばリミッターカットできる」というのはその代表例だが、94モデル以降のMC28には「HRCカードを挿せば劇的にパワーアップする」という都市伝説がある。


しかし、このメモリーカードは当時のSP250レース用に作られたもので、内部のデータはその規定「直キャブ+チャンバー等」に沿ったものだ。さらに、3種類あるデータのうち、ふたつはAVガス(オクタン価の高いレース燃料。レシプロ航空機用)基準だ。当然ながら、通常の仕様のエンジンには効果のない無用の長物である。
MC28は純正チャンバーの形状で出力を40psに抑え、180km/hリミッターも非装備だから(最高速はギヤ比で抑制している)リミッターカット効果は得られないし、点火時期はウッドラフキーで進角させるとHRCカード同等の特性が得られるため、チャンバー交換程度ならそいれで十分。昨今のNSR事情(チューニングやパーツなど)を踏まえると、HRCカードが必要な場面はほとんどないと言えるだろう。


まとめ●モーサイ編集部 写真●八重洲出版
*当記事は八重洲出版『11万6000台以上を販売したレーサーレプリカの実像 NSR250Rその進化と軌跡』の記事を編集・再構成したものです。