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元警察官に聞いた真相 「犯人が管轄外まで逃走したら警察は追わない」はあり得るのか?

海外の映画やドラマなどで、逃走中の犯人が「あの橋を越えさえすればパトカーは追ってこれない!」といい、必死にクルマやバイクなどで逃走するシーンがありますよね。
そんなシーンを見た人の中には、日本の警察も都道府県別に組織構成されているので「県境を超えてしまったら犯人を追うことはできないのでは?」なんて思う人もいるかもしれません。

たしかにニュースなどを見てみると、犯人を追跡している最中に警察が一時的に捜査をやめるケースがあります。
捜査をやめる理由として「管轄問題」があるのか、犯人が管轄外まで逃げたら警察が追わないということが日本でもあり得るのか、元警察官・刑事の鷹橋 公宣さんに解説してもらいました。


逃走中の犯人が「管轄外まで行ったら逮捕できない」は間違い

まず、日本の警察組織は、国の行政機関である警察庁をトップに、各都道府県の警察が治安維持や犯罪捜査を受け持つ形となっています。
同じ制服を着ていても、東京都なら警視庁、埼玉県なら埼玉県警察というふうに、地域が違えば別組織の警察官です。

このような警察組織の仕組みだと、もし都内で事件を起こして警視庁のパトカーに追跡されていたとしても、東京都から埼玉県に入ったところで「警視庁の権限が及ばなくなり、逮捕できないのでは?」と考える人がいるかもしれません。

しかし、警察の活動にかかわる法令を見ても「管轄外では追跡・捜査・逮捕できない」といった決まりはないのです。

それどころか、警察法第61条には、管轄区域内の居住者や滞在者、関係者の生命・身体・財産の保護ならびに管轄区域における犯罪の鎮圧・捜査・逮捕などに関連して必要な限度において「管轄区域外にも権限を及ぼすことができる」と定められています。

2012年1月には、千葉県内の東京湾アクアラインでスピード違反(速度超過)をしたワゴン車が逃走したため、千葉県警察の覆面パトカーが追跡し、東京都大田区内で現行犯逮捕した事例があります。
上記のように、犯人を追跡している警察官が「管轄外だから追跡できない!」といって、あきらめることはありません。

「管轄外まで行けば警察に追われない」シーンはアメリカではある

冒頭で挙げた「管轄外まで行けば警察に追われない」というシーンは、海外……特にアメリカの映画・ドラマに目立つ描写です。

そんなアメリカでは、連邦制度(2つ以上の国、州で形成されている国家形態)というものが採用されています。
州・市・郡によって法律が異なるうえに、自治体が独自に警察を配置しているため、アメリカは日本のように「全国どこでも同じ法律の規制」というわけにはいきません。

また、日本においても「◯◯県では犯罪・違法にはならない」なんてことがあります。
たとえば、各都道府県が独自に定めている「迷惑防止条例」では、盗撮に関する規制内容が地方によって異なるため、まったく同じ行為があったとしても犯罪に該当する地域と、犯罪に該当しない地域というのが存在します。

しかし、盗撮行為が発覚した犯人が「犯罪に該当する地域」から「犯罪に該当しない地域」へ逃げても罪に問われることはないのかといえば、それも間違いです。

その理由は、犯罪・違法というのは「発生地」を基準としているからです。
発生地において、それが犯罪・違法に該当する場合、容疑者が犯罪・違法にならない地域に住んだり、逃げたりしていても、発生地を管轄する警察が捜査を担当するので、いずれ逮捕・検挙されることでしょう。

隣接する都道府県では協力体制が敷かれている

県境付近の地域は、自治体の枠組みが異なっていてもひとつの街を形成していることがあります。

  • 茨城・群馬・栃木・埼玉の県境付近の「北関東地域」
  • 岐阜・愛知・三重の県境付近の「西東海地域」
  • 京都・大阪・奈良の府県境付近の「京阪奈地域」

このような地域は、警察本部が置かれる中心地から離れているケースが多いため、警察は隣接する都道府県同士で協議し、協力体制を敷いているのです。

警察法第60条の2によると「管轄区域が隣接・近接する都道府県警察は、社会的・経済的一体性の程度や地理的状況などから判断して相互に権限を及ぼす必要があると認められた協会周辺の区域において、管轄区域外にも権限を及ぼすことが可能」と書かれています。

基本的には受信できないようになっているほかの都道府県の警察無線をリンクさせて、その地域から追跡の応援を呼ぶといった対応にも警察は慣れているので、もし管轄外に逃走しても警察から逃れることは難しいと考えるべきでしょう。

もし警察から逃げ切れても証拠は押さえられている

2021年5月には、島根県内で警察官からの追跡を受けていた女性が1時間にわたって逃走し、6件の衝突事故を起こした事例がありました。

上記のようなケースもあるので、近年の警察は無理に追跡するよりもナンバープレートなどで情報を確保する「採証活動」(証拠を採取すること)に力を入れています。カメラなどで撮影されたナンバープレートや車両の特徴から、その後の捜査で犯人を特定して逮捕するという流れです。

というのも、逃走中の犯人は「なんとしてでも逃げ切ろう」と考えてしまうので、直接パトカーなどで追ってしまうと危険な事故につながりかねませんし、周囲を巻き込んだ交通事故が起きればケガ人が出る可能性も考えられるからです。

なので、仮にその場でパトカーや白バイの追跡を振り切ったとしても、すでに証拠を押さえられていれば犯人は罪から逃れることはできません。
危険な事故を起こしてしまい、逃走したことで印象が悪くなり、罪が重たくなってしまうくらいなら、逃げるのは素直にやめたほうが利口だと私は思います。

レポート●鷹橋 公宣 編集●モーサイ編集部・小泉元暉

鷹橋公宣 たかはし きみのり
鷹橋公宣

元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。

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