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■タイトル写真:車体後部の美化と整備が進みました。これはバナナキャリパー加工前に仮組みした全景。
まずはバナナキャリパーの美化作業
前号の第8話終盤では、リヤブレーキのバナナキャリパーにかみ込んでいたキャリパーピストンを打撃しつつ分解したため、新品ピストンを調達しなくてはならない羽目に。余分な出費になってしまいましたが、新品のピストンとシール類、スライドピンやパッドをネット通販のお店に発注しておきました。
それから数日、表面の塗装やコーティングの壊滅したバナナキャリパーの美化に明け暮れることになりました。何しろ素材は表面の荒れでボコボコです。キャリパーステーはスチールですが、キャリパー本体は一応アルミなので削り過ぎてもよろしくない。
そのため、ポリッシャーで表面の古い塗膜の残骸を軽く剥がした後は、ひたすら手作業でバナナキャリパーの表面をはぎ落とし、大面積の部分はペーパーの目を少しでも揃えるようにヘアライン的に研いで、ボコボコ感を消していきました。裏面の方が重症だったので、そちらはポリッシャーに120番のペーパーで多少削ってならしてから手作業で進めました。







よく効くようにおまじない!? キャリパーの保持部を小加工
美しくなってきたところでサフを吹いておき、いったん黒で塗装した後、ホイール共々車体に仮留めして感じを見てみます。取付けの構造は、キャリパーの重さを前側のスライドピンの2点で保持してキャリパー下のスプリングでアシストしている感じのようで、スプリングの張りが結構強い印象。
スプリングには、キャリパー下側のラウンドした部分が乗っかっているだけなのですが、上へ押し付ける力がかなり強くて、「左右のキャリパーピストンが微量に動く作用を妨げてはいないだろうか?」という疑問が湧きました。
前オーナーの三平さんからも、純正のブレーキはあまり効かないという話を聞いていた事もあって、自己責任で改造を試みることにしました。


実施したのは、スプリング張力を少しだけ低減させることと、スプリングがキャリパーを押す部分を従来の曲面から極力平面にすること。スプリングの頭の樹脂部材が安定するようにキャリパーボディをならし、キャリパー後端のピストン側を削り落として軽量化も図ってみました。




バナナキャリパー後端の車体表側は内側から見ると丸い穴が空いているのですが、そこは特に役割のない不要部分の模様。そこで、ピストンに近い部分の肉厚を残してアール状に削り落とし、全体と同じく黒の塗装をしておきました。制動力では大した効果は望めないでしょうが、作動性が少しでも良くなればというおまじないでもあります。




リヤサスの取付け部も我流に小加工してみる

キャリパーの研磨や加工の一方、スイングアームも内側のしつこい汚れや錆を真鍮ワイヤーブラシで削ぎ落としました。すると、クローム表面のスイングアームはまあまあ綺麗になりました。
この作業の際、ふとリヤサスの取り付け部が目に入りました。スイングアームのサスの受け部分とリヤサス下側に、隙間がないんです。「あれ?」と思ってリヤサスを外してみると、スイングアームの受け部分にはリヤサスの当たっている痕跡が左右ともに残っていました。



サスが荷重を受けて沈むと、レイダウン角って少し変わると思うんですが、ここが当たっているという事は、荷重がかかってもサスが本来縮むべきところまで自然に沈んでくれていなかったのかもという疑惑が生まれました。そして、大柄なアメリカ人ではなく体重の軽い私が乗るとしたら、「余計にサスの入りが鈍くなるかも?」と考え、四角い断面のスイングアーム側サス受けの”角”を少し削ることにしました。


削った後はシルバーで補修塗りをしておき、サスを組み付けると、今度は隙間が見えるようになりました。今のハーレーモデルではこんな事はなく品質は良いと思うんですが、ショベルが生産されたAMF時代のハーレー(※)モデルは、当時から言われていたように仕上げが少々粗雑。以前もフレーム前部で、手を切りそうなバリのある箇所がありました。
※編集部注:1969年から1981年まで、アメリカの大手機械メーカーAMF(アメリカン・マシン・アンド・ファンダリー社)の傘下にあった期間のハーレーダビッドソンのこと。大量生産による品質低下と日本車メーカーの台頭で危機に瀕した、ハーレー歴史上の「不遇の時代」と言われています。







やっぱりこのショベルが生産されたAMF時代のハーレーは、”田宮基準”とはだいぶ製造精度の違う”外国の古いプラモ”みたいな気がします。今ではそうした仕上げの見直し処理もまた楽しいのですが(いつしか重度なM気質になったかも……)。
こうして作業を進めているうちに、バナナキャリパーのリペア部品が届き、ピストンシールとダストシールを取り付け、パッド周辺に適切な油分を薄く塗布して復元を終えたので、次回はそれに関連してリヤのマスターシリンダーのチェック&整備に移行していきます。重要保安部品ですので慎重に進めます。(つづく)






文と写真●小見哲彦
小見哲彦(こみ・てつひこ)
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーを経験してバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。2021年からは、防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を依頼されている。





































