バイクライフ

【元白バイ隊員が語る】お仕事で使う制服と防具は、意外と軽装備だった!?

現在の白バイ隊員用安全装備の要は、エアバッグ内蔵ベスト

現在白バイ隊員が支給される、ヒットエアー製の一体型エアバッグシステム・ハーネスタイプ。MLV-P型と呼ばれ、同タイプは一般でも入手可能。価格は4万9500円

白バイ隊員は、バイクに乗るときに、一体どんな装備をしているのか。交通違反車両を追尾したり、緊急走行をしたりと、常に危険と隣り合わせの場面が多いのが事実ですが、特別な装備をしているのか? 隊員個別で気を付けていることや装備があるのか? 興味のある方もいらっしゃるでしょう。今回は白バイ隊員の防具について解説していきたいと思います。

【1.一番の安全装備はコレ!】
白バイ隊員の一番の安全装備はエアバッグが内蔵されたベストです。全国の警察の白バイ隊員に配備されており、式典などのイベントを除き、活動時には常時着用しています。

白バイ隊員に支給されているのはヒットエアー(無限電光株式会社)やダイネーゼが開発・製造しているエアバッグが内蔵されたベストとなります。ベストタイプ以外にもジャケットタイプなどもあり、バイク好きの方なら一度はバイク用品店や雑誌やインターネット上で目にしたことがあるのではないでしょうか。

【2.白バイ隊員のエアバッグ装備は最近の話】
今や、白バイ隊員のほとんどが装着しているエアバッグですが、実はごく最近装備されたものとなります。私が白バイの新隊員として配属された当時(約10年前)はエアバッグの装備は支給されておらず、試験運用的に数名の隊員が着ているだけでした。エアバッグが配備されていない時代は、乗務服の中に胸部と背部を保護する薄型のプロテクターを装着しているのみでした。

エアバッグが支給される以前の胸と背部のプロテクター

しかし、エアバックがすべての隊員に配備されるようになるまで時間はかからず、一年足らずですべての隊員にエアバッグが行き届くようになりました。それだけエアバッグが、安全装備として信頼性があると組織的に判断されたのだと思います。

現在、白バイ隊に採用されているエアバックメーカーは前述した2社で、ヒットエアーとダイネーゼのものがあります。私が装着していたのはヒットエアーのエアバッグで、ハーネスにより物理的に作動するタイプのものでしたが、現在は警視庁など一部の県警ではダイネーゼ製でセンサーにより作動するワイヤレスタイプのハイテクなモデルも使われています。

【3.エアバッグの効果】
エアバッグが一気に配備されるようになった理由としては、落車や衝突などの事故時に、エアバッグがガスの力により瞬時に膨らむことにより、胸・背中・首・脊髄(せきずい)などの重要部位の衝撃を緩和する効果が非常に高いからです。

バイクに乗車している際は、ヘルメットによる頭部の保護はもちろんのこと、胸腹部の保護も非常に重要なものとなります。今まではプロテクターのみによる体の保護が主流でしたが、バイクで転倒した場合の衝撃や怪我を軽減することは出来ても保護能力には限界がありました。

強い衝撃になるほどプロテクターでは保護し切れなかったり、プロテクターにより動きが制限されたり、体が一回り大きくなって見た目も悪くなってしまう問題点もありました。

現在、サーキット競技におけるエアバッグの義務化の流れからも、公道、サーキットを問わずエアバッグの効果が非常に高いのがわかるでしょう。

【4.白バイ隊員ならではの、エアバッグの不便点】
ここまでエアバッグの利点について説明してきましたが、白バイで乗務していると、エアバッグを装着していることにより困ることが度々ありました。その一つが、乗車服のポケットから上手く物が取り出せないということです。

白バイ隊員も一人の警察官です。事件や事故があれば現場に臨場し処理をしなければなりませんし、交通取締りも行なっているので、メモを取ったり書類を作成するための印鑑や筆記用具等を使う場面が多々あります。

そんな事務用品を入れておくのに乗車服の胸ポケットが重宝するのですが、エアバッグを装着していると胸ポケットが塞がってしまい取り出す際によく手こずっていました。

また、バイクを頻繁に乗降車するため、エアバックを作動させるハーネスのアタッチメントを乗降車の度に抜き差しする作業が、煩わしくなってしまうこともありました。中にはバイクからの降車時にハーネスを外し忘れて勢い良く降車し、取締り現場でエアバッグを膨らましてしまった隊員もおりました。

ダイネーゼの最新ワイヤレス式エアバッグシステム「D-air」を搭載したスマートジャケットも、ヒットエアー製と同様に一部で白バイ用として採用されている。価格は14万9600円
ダイネーゼのD-airシステムを内蔵したベストの中身

■ダイネーゼのD−airシステムの中身。内蔵された計7個のセンサー(加速度センサー✕3、ジャイロセンサー✕3、GPS)で1秒間に1000回ライダーの動きをモニタリングし、特別なアルゴリズムによって事故を事前認識して、立体構造のエアバッグを高圧縮ガスで瞬時に膨張させる。なおこのシステム、MotoGPでは2007年から採用されているという。

意外かも!? 白バイ隊員はヒジ、ヒザにはプロテクターなど非装着

エアバッグを装着している以外は、案外軽装という白バイ隊員の装備。ヒジやヒザには特にプロテクターなどは非装着で、乗車服も意外と薄い素材だという

【1.エアバッグの装備以外は無装着】
意外かもしれませんが、取締りを行なっている白バイ隊員のほとんどは、エアバッグ以外の安全装備は装着していません。私が白バイ隊員として活動していたときには、肩・ヒジ・ヒザは全くプロテクターを装着していませんでした。

白バイ隊員の乗車服は上下とも薄い布で出来た普通の服と変わらない素材なので、一般のライダーの皆さんが着ているプロテクター入りのジャケットやパンツとは比べ物にならないほど、ペラペラなものとなってます。

白バイ乗務時に、プロテクター類を装着していない理由としては諸説ありますが、一番はバンパーが装着されていることにより、バンパー非装着のバイクに比べてヒザやヒジにダメージを負うリスクが少ないということ。

また、バイクに乗務する際以外にも、警察官としての業務時にプロテクターが動きの妨げになってしまうということ等が、プロテクターを装備しないことの理由とされてました(本当の理由は分かりませんが)。

【2.新隊員訓練時にお世話になったプロテクター】
とは言っても、新隊員時の白バイの乗務訓練では転倒が付きものです。一回でも転倒すると、ヒジやヒザにダメージを負ってしまうことも度々あります。そのため、特にオフロード訓練の際は、体の動きを邪魔しない程度の防具としてヒザ当てのみを装着していました。

ワンタッチで装着出来るヒザ・スネのプロテクターで、簡単な構造なのに加えてマジックテープ一本で装着が可能で、いざという時にオンロード・オフロード走行の際に何度もヒザやスネを守ってくれました。現在でもバイクの練習会などに参加するときは、このプロテクターに大変お世話になっています。

ここまで白バイ隊員の防具について解説してきましたが、エアバッグ以外はほぼ何もプロテクターをしていないということは意外だったのではないでしょうか。

ただし、訓練時やオフロードトレーニングの際は、写真のようなヒザ当てのプロテクターは必需品。簡単に装着でき、現在もバイクの練習会などで活用しているという

文●睦良田 俊彦  写真●モーサイ編集部、睦良田 俊彦


著者プロフィール

睦良田 俊彦(むらた・としひこ)1986年北海道生まれ
趣味:クルマ、バイク

歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。
警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。
県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuber「臨時駐車場チャンネル」として活動。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。

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