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【スーパーカブで楽しむツーリング】カブ下道紀行:さくさく走って下町散策

東京上野、歴史の街を巡る

日本の中心となって450余年、東京。
権力と文化を内包しながら発達してきたこの街は、クルマでは少々走りづらい。
そんな場所にこそ一寸法師のごとく忍び込めるのがスーパーカブだ。その歴史巡りにはどんな楽しみがあるのだろう。

report●伊藤拓也 photo●編集部

 

新しい時代の始まりに旧きを訪ねてみた

東京の都心部における一般道の交通環境は、クルマが主な交通手段の宮城出身である自分には耐えがたい。
やたら混んでいるか、やたらせせこましいことが多く、スムーズに走ることがなかなか難しいからだ。
そんな東京を走るのに最もふさわしいバイクは何だろう。個人的にはコンパクトで、加速が十分で、またがりやすく、威圧的でなく、操作が楽しいバイクがいい。
そう考えると、のどかな音とデザインでシフト操作も行えるスーパーカブが適役だ。どこを走っても楽しく、どこへ入り込んでも嫌な顔をされない気がする。

実はあまり東京を知らない自分がカブで東京・上野の散策に行こうと思ったのは、歴史や伝統あるスポットが多く、見応えがあると聞いたからだ。
日本初の公園である上野公園や、戦後に栄えた闇市を祖とした商店街のアメヤ横丁など、ちょっと見ても納得できる。

●アメヤ横丁


しかし、行ってみたいスポットは広いエリアに点在しており、徒歩で巡るには少々大変そうだ。
だから、カブなのだ。
平成生まれの自分が初の改元を体験したこともあって、過去の時代を色濃く残した場所を訪ねよう。

まずは三菱財閥三代目の岩崎久弥が建てた『旧岩崎邸』を目指して国道4号を走る。
予想どおり国道は詰まり気味だったが、クラッチレバーレスのカブでカチャカチャとシフト操作を楽しみながら、あっと言う間に到着だ。
ところが、旧岩崎邸の洋館は外壁が工事中で、その壮大な外観全てを見ることはかなわずやや拍子抜けしたが、カブでなら工事が終わった頃にまた来てもいい。

●イギリスの建築家ジョサイア・コンドルが設計した洋館。現代から見ても巨大な屋敷は、パーティーなどのための迎賓館として年に数回使われた 


扉や柱など全てが異様な大きさの建物内を明治の日本人になったつもりで歩き回ると、あまりのサイズの違いに恐れおののくことしばし。

 

この日は25℃という初夏並みの気温らしく妙に暑く……文豪・森鴎外の旧居に設けられた温泉付き施設『水月ホテル 鴎外荘』を、次の目的地に設定した自分を褒めたくなった。気持ち良く汗を流せる。

小道にやや迷いながら辿り着いた森鴎外の旧居は、旧岩崎邸とは対照的だ。
平成生まれの自分が心が落ち着く、小ぢんまりとした空間である。
〝これなら舞姫の執筆に身が入ったことだろうな〟と、勝手に想像したところで風呂に入る。

●森鴎外が舞姫を発表した1889-90年に妻の登志子と住んでいた家。平屋に小さな庭という庶民的な造りが、来訪者を和ませる。保存している水月ホテルの用意するプランによっては内部で食事も可能


東京の湯の特徴でもあるらしいとろみのある湯に浸かり、全身の血管が膨張するのを感じる。

●重炭酸ソーダ泉の温泉が古代檜漆浴槽と天然大理石浴槽の2種類が用意される。入浴料は1650円

ああ、次の目的地はどこだっけ……。そうだ、『谷中銀座』で買い食いでもしようと思っていたのだ。

時代は飛んで昭和20年。谷中銀座はその頃に自然発生した商店街だ。

現在まで連綿と続くこの場所は、店々のたたずまいこそ当時のままではないが、その人のにぎわいは昭和を想起させるような活気にあふれ、自然とこちらも笑顔になる。
ガヤガヤした道を練り歩き、焼き立てのホタテ貝に舌鼓を打つ。今日一番の喜びだ。

●商店街として賑わい続ける谷中銀座。肉屋のコロッケなどの食べ歩きグルメのお店が多く、今回は丸初福島商店の焼ホタテを食べた


花より団子とはこのことか。
 

街に溶け込むカブの姿は不変

こうして過去の時代を愛で、帰路につく。
あまり疲れていないのは、街に自分が溶け込んだからかもしれない。
大型バイクで行こうものなら立ち入ることに気が引ける人混みも、カブでなら通行する人々と同化し、その場所の風景に溶け込んでしまうようだ。
これは、〝いい遊び〟を知ってしまった。カブで東京を巡ってみるのは悪くないものだ。

●ストップ&ゴーの連続でも、カブであれば気怠さは感じない。また、自分は方向オンチゆえに目的地の逆に向かって走ったりもしたが、そもそもUターンが簡単で軌道修正は容易


 

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