レンタルバイクショップが貸し出している車両は基本的に現行車が多い。サービスを維持していくうえで、整備や部品供給のことを考えれば当然のことだろう。ただ世の中には、絶版旧車を貸してくれるお店も極希に存在している。愛知県豊田市にある「Route419」もそんなお店のひとつである。
「昔乗ってみたかったと思える懐かしいバイクや、面白みのあるバイクをラインナップしています」と話すのは代表を務める土井孝哲さん。

「Route419」の代表の土井孝哲さん。お父さんが始めた土井自動車で働きつつ、同店の敷地で「Route419」も運営している。
自身がバイク好きなこともあり、自動車整備やガソリンスタンド業の傍らバイクレンタルサービスを始めたのは2019年5月から。安心して遠出することができ、部品の供給もまだある(とは言え、近年は廃盤になった部品も増えてはいるが……)1990年代車を中心に「漢くさいバイク」を多数取りそろえている。

同店の車両はすべて土井さんが自らメンテナンスしている。写真の車両は最近土井さんが入手したGPZ900R。

手前からCB400スーパーフォア(HYPER VTEEC)、CBR400RR、GSX400インパルス。いずれも同店で貸しているレンタル車両。

展示車の裏手にある待合室。土井さんと奥様が協力してコンテナガレージを改装したもの。ヘルメットやウエアなどのレンタル品もある。
利用者は30代の方が多く、普通二輪免許(いわゆるかつての「中免」)で乗ることができ、それなりにパワーもあって扱いやすい400cc車の人気が高いとのこと。
で、今回は一番人気のカワサキ・ゼファーχ(400cc、1996年式)と、同店のレンタルバイクにおいて「最年長」のホンダ・VF750セイバー(750cc、1983年式)を実際に借りてみることにした。
カワサキ・ゼファーχ(1996年式)
「Z1の魅力の詰まった400ccを」という考えのもと開発されたネイキッドバイク、カワサキ・ゼファー。ネイキッドブームの先駆けになったと言われ、「空冷4気筒ネイキッドで一番バランスが取れている」と語る人も(※諸説あります)。
中古車市場でも今なお高い人気を誇っているゼファーだが、今回レンタルしたのは4バルブエンジンを搭載するゼファーχ。
実は筆者、ゼファーに触れるのは初めて。またがった第一印象は「軽い&小さい!」というもので、両足ともカカトまでベッタリな接地する足着き性のよさや、ニーグリップしやすいタンクのスリムさが好印象。車重は軽くハンドリングも素直なので、ひらひらと峠道をよく走る。エンジンも低回転から高回転までよどみなくスムーズに回ってくれるので、走っていて非常に気持ちよかった。
一方で、自分自身がゆったりした姿勢で乗るバイクばかり常用しているため、低めのハンドルとやや後ろに下がったステップは、個人的には少々窮屈な感覚もあったが、しばらく走っていれば気にならなくなっていった。
- 実に好調だった4バルブDOHCエンジン。整備の際に強化クラッチを導入している。
- 「音を楽しんで欲しい」という土井さんの思いから、WR’S製マフラーに換装しており、走行時には元気なエキゾーストサウンドを楽しめる。
前日の雨で濡れている路面があったり、木の葉があちこちに舞っていたこともあって、やや慎重に走ったため、土井さんがオススメしてくれた「7000回転~1万回転まで回したときの気持ちよさ」を味わえなかったのが少し心残り。これは暖かくなったころのお楽しみ、ということにしておこう。
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