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MotoGP ホンダ RC213V「最新2022仕様は、2021シーズン後半戦の最中にほぼ出来上がっていた!」

RC213V ホンダ HRC 2021

ホンダMotoGP「マルク・マルケス選手の不調が響いた2021年シーズン」

2020年シーズン序盤にエースライダーのマルク・マルケスが右上腕骨を折り、その後は欠場が続いたことにより、ホンダはMotoGPでかつてない低迷を記録してしまった。そして2021年、マルケスは9ヵ月ぶりに復帰して最終的に3勝をあげることに成功したものの、以前のようなパフォーマンスを発揮するにはまだ少し時間が必要かと思わせるものだった。

強行復帰を図ったものの再骨折、さらに偽関節の発症──マルケスの腕が深刻な状態だったことは周知の事実であり、完治したにせよ物理的な強度や筋力が完全に戻るのかといった懸念もあったはずだ。さらに2021年11月にはトレーニング中の転倒で頭を打ち視野狭窄を起こすなど(既に復調)、一時はライダーとして非常に際どい状態にあったこともまた事実だ。

2021年のマルク・マルケス選手は第8戦ドイツGPで初勝利、第15戦アメリカズGPで2勝目、続く第16戦エミリア=ロマーニャGPでも勝利し、通算3勝という戦績だった。写真は第8戦ドイツGPで表彰台に上がったときのもの。

RC213Vは2021年のシーズン前半と後半で車体が大幅に変わっていた

厳しい戦いの最中、ホンダは2021年シーズン後半に車体関係を全面新設計としたRC213V(2022年向けプロトタイプ)を投入している。RC213Vは2012年の登場以来、2016年にエンジン、2019年にフレームを大きく変えているが、この2021年後半モデルではそれらを上回るレベルの変更を行なっている。

そもそもシーズン前半の2021年モデルでは、吸排気の改良、コーナー立ち上がりの車体姿勢を制御する車高調整機能の採用や、空力性能の向上が施されていた。しかし、最近では異例とも言えるシーズン途中のニューマシン投入を決断したのだ。その背景には2021年にエースライダーのマルケスが復帰したものの、序盤は不調だったことがあるだろう。

復帰後のマルケスは、2021年モデルについてリヤのグリップ不足を中心にとした問題を指摘しており、より扱いやすいマシンを求めていた。これが、根本的なマシンの状態に対する指摘なのか、マルケスの体力不足を補う意味での要求なのかは今のところ分からない。
これに対してホンダは、リヤのグリップ向上(いかにタイヤを効率的に使うかはMotoGPマシンの恒久的な課題である)、扱いやすさ、体力の温存を課題に車体を新設計したのである。

2021年モデルのホンダ RC213V(マルク・マルケス車)。

何しろマルケス不在の2020年は、ホンダが1979年にロードレース世界選手権に復帰し、1982年に勝利を獲得して以降では「初めて未勝利」となったシーズンであり、このことが他のライダーに比べてマルケスの能力が圧倒的に飛び抜けていることと、RC213Vの抱える問題点を改めて浮き彫りにしたというわけである。
実際、怪我の影響が残った2021年の前半戦の戦いは厳しい状況だった。以前のマルケスならその能力で何とかできたかもしれないが、稀代の天才ライダーも怪我の影響や29歳という年齢を考えると、より扱いやすく速いマシンが望ましくなるのは至極当然のことだろう。

2021年のシーズン後半に行なわれたテストでは「2022年向けプロトタイプの持つ違いは大きく、自分がホンダへ来て以来の変化だと思う。新型では間違いなくリヤのグリップが改善している」とマルケスはコメントしている。これがシーズン終盤にマルケスが復調を見せ2連勝したことに結び着いているのなら、早速その成果が現れたと言えるだろう。

こうして、2020年のマルケスの欠場、2021年前半まで続いたマルケスと他のホンダ勢の不調は、図らずもマシンを大きく変えるチャンスとなったのだ──好調の波が続いている間は現状維持を念頭にリスクをとることはしないので、例え課題点が認識できていてもマシンを大きく変えるようなことはしないのだ。

今回のイレギュラーともいえるRC213Vの変更は、ちょうど1980年代後半から1990年代初頭にかけてNSR500が大きく変遷していったように、エースライダーの不在や不調がきっかけになってマシンの方向性を大きく変えるものかもしれない。そうなると結果次第では、マシン開発における新しいエポックになる可能性もあるのかという期待すら感じてしまうのだ。
2022年モデルのRC213Vはこの2021年後半プロトタイプをベースとして、さらに進化・熟成させるとHRCは言っているから、その成果がどんな結果をもたらすのか、そしてマルケスとホンダの完全復活はあるのか、大いに注目したい。


「ホンダ RC213V」2021年モデル

HRCの開発陣によると、動力面ナンバーワンをテーマとした2020年仕様をベースに、「安定性、旋回性、開けやすさ」を高めつつ、正常進化を狙ったのが当初の2021年仕様。
エンジンの変更ができないため、車体面の改良に注力し骨格や空力は全く別物に(ただしエンジンも給排気、制御の煮詰めなどは行われている)。車高調整デバイスは2020年から取り組んでおり、特に2021年はエンジンを変えられないため、ウイリー限界を高めて性能を最大限引き出す必要があったという。
2020年の正常進化版では限界があると認識し、激変を行った「2021年シーズン後半仕様」だが、外観からは「前半仕様とほとんど違いはわからない」そうだ。


2022年の公式テストにおけるマルク・マルケス選手のコメント

2022年2月5〜6日にマレーシアのセパンサーキットで行われた2022シーズン最初の公式テスト、その翌週2月11〜13日にインドネシアのマンダリカインターナショナルストリートサーキットの公式テストで HRCによるとニューマシンについてマルク・マルケス選手は次のようなコメントを語っている。

■セパンの公式テスト
セパンの2日間のテストにはとても満足していますが、さすがに疲れました!体力的に少し厳しい状況でしたが、とてもポジティブです。これからのシーズンを楽しむためにいまは苦しいですががんばります。今回は、プッシュするとスピードが上がりました。いくつか大きなことにトライしながら、今年のマシンをたくさん学んでいます。このマシンには明らかにポテンシャルがあります。今日はマシンを調整したあと、フロントのフィーリングをさらに理解することができました。ポルとアレックスがロングランで速かったので、勇気づけられました。雨の中、数周走りましたが、フィーリングはよかったです。

https://honda.racing/ja/motogp/post/motogp-2022-official-test-2

■マンダリカインターナショナルストリートサーキットの公式テスト
1日目(17位)
「新しいサーキットなのでいつも通りのメニューを消化して過ごしました。路面は最初汚かったのですが、徐々によくなっていきました。いいラインを見つけるのは難しくありませんでした。なぜなら黒いラバーがすぐに見えるようになったからです。セクター1と4が好きです。興味深いサーキットなので、レースが楽しみです。今日はたくさん周回しました。これが唯一路面を綺麗にする方法だからです。そしてそれが役に立ちました。ラインはかなりよくなりました。明日はもっと前進できると思います。そうすればもっと安定するでしょう。今日はマシンに特別なものを感じ始めました。明日が楽しみです」

2日目(2位)
「昨日話したように、マシンのフィーリングをつかみ始めています。今日も一歩前進することができました。今日は2番手で終えることができましたが、ポジションとタイムアタックは問題ではありません。重要なことはリズムと、いいラップタイムをどう出すか、にあります。今日の最後の走行では違うことにトライし、前進できました。いろいろなことにトライし、新しいマシンでいい方法を見つけるのはうれしいです。今回のテストは今年のマシンを僕のスタイルに合わせることができました。明日もまた重要な日です」

3日目(14位)
「今日はライディングを本当に楽しみました。みんなと同じようにテストが開始されたときは疲れていましたが、楽しく走ることができました。これは最高の仕事の進め方です。今日は肩に少し痛みがあり、タイムアタックには集中しませんでした。タイムアタックはかなりのパワーを使うからです。レースペースとセットアップ、そしてマシンのフィーリングに引き続き取り組みました。マレーシアのときと比べて大きな違いがあります。新しいマシンで大きく前進することができました。毎周フィーリングがよくなっていきました。HRCとRepsol Honda Teamはすばらしい仕事をしてくれました。シーズンが始まるのが楽しみです。あと数週間トレーニングを続けたら、レースが始まります!」

https://honda.racing/ja/motogp/post/motogp-2022-official-test-3
セパン公式テストで2022年モデルのRC213Vをテストするマルク・マルケス選手。

レポート●関谷守正/上野茂岐(キャプションほか) 写真●ホンダ

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