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未来の国宝にホンダのカブが選ばれる?
「国宝ってどんなもの?」そう聞かれたら土器や刀剣、あるいは絵画などを連想する人が多いでしょう。では、150年後の未来の国宝とは、はたしてどんなものでしょうか?
東京国立博物館(以下、東博)では現在、『150年後の国宝展』と称した展覧会を開催しています。そのラインアップはポテトチップス、ゴジラ、ハローキティなど私たちが日常で親しんでいるものばかり。「現代では当たり前でも150年後には歴史を語る大事な文化遺産になっているかもしれない」というコンセプトです。
そんな未来の国宝候補が集まる展覧会を訪れたところ、なんとホンダのスーパーカブC100が展示されていました。バイク好きにもそうでない人にも知名度抜群の「カブ」。昭和に生まれ、平成、令和と走り続ける名機が日本の至宝になる時代がいつか訪れるのかもしれません。
スーパーカブC100とは?
ホンダが誇る超ロングセラー「スーパーカブ」シリーズ。その初代機として登場したのがスーパーカブC100です。1958年に誕生したC100は、実は東京タワーと同い年で2023年に誕生65周年を迎えます。
耐久性と燃費に優れたC100は、誰でも気軽に乗れる扱いやすさから世界中で爆発的なヒットを果たします。ブーム当時は月産6万台、年間30万台以上の量産体勢をとらなければ世間の需要に応えられなかった、といえばその凄まじさが伝わるでしょうか。
その後もスーパーカブはカブCM90やスーパーカブC50などの後継機を世に送りだし、2017年にはシリーズ全世界生産累計1億台を突破しました。スーパーカブこそがホンダがワールドクラスの大企業にのし上がるきっかけであり、C100はその始まりなのです。
「150年後も走り続けるだろう」未来の国宝兼現役を宣言
150年後の国宝展は、昨年12月まで開催された『国宝 東京国立博物館のすべて』の連動企画です。個人部門と企業部門でそれぞれ「これこそ150年後の国宝!」といえるものを募集した公募型展覧会であり、出展協力に参加したホンダが提供したのがスーパーカブC100です。
実際に展覧会を訪れたところ、C100の展示スペースは展覧会の後半に設けられていました。部屋の中央に鎮座するC100は展示用ライトを反射して輝き「自分こそ国宝にふさわしい」と主張しているかのよう。生産終了して久しいC100の新品同様の姿を近距離で拝める貴重な機会だったといえます。360度どの角度からも観察できますので、訪れた際はぜひじっくり眺めてみてください。
展覧会なら解説キャプションも見逃せません。C100のキャプションはスーパーカブがいかに世界中に浸透したかを簡潔に述べており、こちらも必読。キャプションは次の一文で締めくくられていました。
「日本で生まれたスーパーカブは150年後も現在の姿で世界の道を元気に走り続けているだろう」(150年後の国宝展スーパーカブキャプションより引用)
多くの人を乗せて走るために生まれたスーパーカブは、国宝になっても走り続けるのでしょうか。150年後には、国宝にまたがって道路を走るのが当たり前の時代が訪れるかもしれませんね。
150年後の国宝候補をその目で見よう
『150年後の国宝展』は、2023年1月29日(日)まで東博にて観覧料金無料(総合文化展観覧券か開催中の特別展観覧券が別途必要)で開催中です。「本当にスーパーカブがいつか国宝になるのか?」その答えを私たちは確認できそうにありませんが、未来を想像するのは自由です。この機会に未来に想いを馳せながら、過去の名機を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
レポート/写真●ハチミツ 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実