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今、250ccクラスが再注目されている。扱いやすさ、高いコスパで入門バイクとして最適なのはもちろん、大型に乗っていたベテラン勢も250ccに回帰する人も多いとか。中でも人気なのが、ヤマハの250ccロードスポーツの2台。今回はビギナー&ベテランの声を聞きつつ、その魅力を再発見する!

軽さこそが最大の武器!?
このコロナ禍で、3密を回避できる乗り物としてバイクが見直され、全国軽自動車協会連合会が発表したバイク(125cc超)の2020年度新車販売台数は、前年度比14.9%増を記録した。これをけん引しているのが125cc超250cc以下の軽二輪クラス。前年度比26.5%増をマークして、250cc超の小型二輪クラスを13年ぶりに販売台数で上回った。
軽二輪クラスの主役となっているのは、言うまでもなく排気量枠いっぱいの250cc。クラスの中で選べる車種が圧倒的に多く、車検取得の必要がなくてランニングコストを低めに抑えやすいなど軽二輪ならではのメリットは、もちろん全て享受できる。
そんな250ccクラスで人気を誇るのが、ヤマハのYZF-R25とMT−25。この2台を支持する年齢層は、20代からリターン組を含む中間層を経てシニアまで、年齢性別を問わず非常に幅広い。そこで今回は、バイクライフのビギナー代表として岩瀬皓旭(こうき)、そろそろ“大”が付くベテランの域に達する石井秀実が、それぞれの目線でこの2台を分析する。

本誌スタッフ、56歳。現在はリッターオーバーの大型バイクに乗っているが、最近体力の衰えが顕著すぎて、もう少し軽いバイクもいいかも……なんて考えが頭をよぎっているとか

現在27歳の役者志望。頑張って大型二輪免許を取得したものの、自分のバイクを購入するには至っておらず、家にあるマシンを借用しているとか。サーキット走行にも興味あり
軽快なハンドリングだから市街地の移動も気軽さあり

「とにかく、ファーストコンタクトからいきなり乗りやすい!」
こう驚くのは岩瀬。大型二輪免許を所持して、親の1200ccを借りて乗ることもあるが、自分のバイクを所有した経験はなく、バイクの運転にそれほど慣れているわけではない。
「まず、何より安心するのがこの軽さ。僕は身長171cmで、この世代の男性としてはまさに平均ですが、それでも足がべったり着くので立ちゴケしてしまいそうな不安が一切ありません。車体が軽いから、爪先しか着かないような小柄な女性でも、きっと問題なく支えられると思います」
一方でベテラン代表の石井も、この軽さに気持ちがぐらつく。
「正直なところ、大型から250ccへの乗り替えには抵抗もあります。でも、体力的に重たいバイクがキツくなってきたのも事実。例えば自宅の駐車場に愛車があっても、引っ張り出すのがで乗らない……なんてことになるなら、気軽さのある250ccクラスのYZF-RかMTを所有しているほうが、結局のところ乗る機会が増えて豊かなバイクライフが続くと思うんですよねぇ……」
Point 01:車体が軽いと、気分も軽い!
バイクの世界では「軽さは正義!」という言葉があるとかないとか……。それはともかく、YZF-R25とMT-25は250ccならではの軽量ボディで、これが押し引きやUターン、停車時の車体保持からスポーティライディングまで、あらゆるシーンで扱いやすさに寄与する。結果的に、バイクという乗り物に対して気軽さが生まれ、もっと乗ろうという気になる。どんどん乗るからビギナーはすぐうまくなるし、ベテランも新たなバイクライフの楽しみを見つけやすいのだ。
Uターンや取り回しも怖くない

ワインディングも十分楽しい!

ライディングポジション&足着き性




車体後半部は両車でほぼ共通化されていて、どちらも両足の裏がべったり着いて、さらに膝が軽く曲がるほど足着き性に優れる。YZF-R25はセパレートハンドルを採用し、上半身がやや前傾するが、その角度はキツすぎない。MT-25はバーハンドルで、YZFよりはアップライトだが、弱前傾姿勢でスポーティにも操れる。
※モデルは身長171cm/体重61kg
操る楽しさの基本あり!
とはいえ、二人とも“軽さ”と“気軽さ”だけでこの2台にときめいているわけではない。
「僕の中で、YZF-R25のようなスーパースポーツこそが、バイクらしいバイクの姿。250ccなのに超本格的なルックスで、もうそれだけで欲しい!」と岩瀬が250ccでここまでやるか……というくらい現在のトレンドとヤマハの独自性があって、これならダウンサイジングしても堂々と乗れます」と石井も感動する。
Point02:大排気量車に見劣りしないヤマハの秀逸デザイン
ヤマハというのは、プロダクトデザインに関して古くからこだわり続け、国内外で数々のアワードも受賞してきたブランド。手ごろな250㏄クラスだからといって、デザインの手を抜くなんてことは絶対にない。YZF-R25は19年型、MT-25は20年型でマイナーチェンジが施され、現行の大型クラスやレーサーとイメージの調和も図られているが、MT-25なんて、フロントフェイスの先進性では兄貴分のMT-09やMT-07よりもこちらの方が一歩リードしているくらいなのだ。
MT-25:個性あふれる“ファイター顔”



YZF-R25:R1/M1譲りの機能美



そして極めつけは、“コスパ”の良さと“汎用性”の高さだ。
「社会人としての現役を引退したら、当然ながら収入は減るでしょうから、車検がなくて低燃費な250ccは魅力的」と現実的な石井。対して若い岩瀬は、「まだ役者としての仕事は少なく、貯金も使いたくない状況ですが、それでも少し頑張れば届きそう」と、初の愛車購入を夢見る。そして動力性能と、それがもたらす汎用性については両者の意見がぴったり合う。
「正直、もっとのんびりしたバイクだと想像していたのですが、じつは俊敏でした。絶対的なパワーや加速は当然ながら大型クラスに劣りますが、その代わり軽量コンパクトでコーナリングは自在。エンジンも、回転域に応じて盛り上がるイメージだから、シーンに合わせて必要なパワーを取り出せます。バイクに乗せられているんじゃなくて、操る感覚を味わいながら、ツーリングから日常の移動まで幅広く使えそう。高速道路だって余裕だから、ロングツーリングの相棒にも良さそうです!」
Point03:優れたコストパフォーマンスとシーンを選ばない汎用性の高さ
車検が不要なのに加えて、前ブレーキはシングルディスク、タイヤはバイアスなので、どちらも交換時のパーツ代は安め。WMTCモード値の燃料消費率は27.2km/Lで、しかもレギュラーガソリン仕様だから、1日300km走っても燃料代は理論値で1500円程度だ。この優れたコストパフォーマンスながら、軽さを生かして市街地や峠道を機敏に走れて、高速道路でも十分に快適で、ソロからロングまでいろんなツーリングに対応できるのがうれしい!
ロングツーリングだって問題なし!

倒立フォークで武装!

「車検がないのは大きいですよ」

Price & Color
YZF-R25 | MT-25 | |
変速機 | 6段リターン | ← |
エンジン形式 | 水冷4ストローク並列2気筒 | ← |
バルブ方式 | DOHC4バルブ | ← |
総排気量(cc) | 249 | ← |
ボア×ストローク(mm) | 60.0×44.1 | ← |
圧縮比 | 11.6 | ← |
最高出力(kW<ps>/rpm) | 26<35>/12,000 | ← |
最大トルク (Nm<kgf・m>/rpm) | 23<2.3>/10,000 | ← |
全長×全幅×全高(mm) | 2,090×730×1,140 | 2,090×755×1,170 |
ホイールベース(mm) | 1,380 | ← |
シート高(mm) | 780 | ← |
タイヤサイズ(前) | 110/70-17 54S | ← |
タイヤサイズ(後) | 140/70-17 66S | ← |
燃料タンク容量(L) | 14 | ← |
WMTCモード燃費(km/L) | 27.2 | ← |
車両重量(kg) | 170 | 169 |
価格 | 65万4500円 | 62万1500円 |
2021年カラーも登場!
MT-25

(左下)ディープパープリッシュブルーメタリックC/(右下)マットダークグレーメタリック8
YZF-R25

(左下)マットダークグレーメタリック8/(右下)ディープパープリッシュブルーメタリックC
車検はあるが、パワーもある!
320ccもラインアップ

YZF-R25とMT-25には、ほぼ共通の車体で水冷並列2気筒エンジンの排気量が249→320ccに拡大されたYZF-R3とMT-03という“双子の兄貴”が存在する。こちらは、同じ車重のまま最高出力が7馬力、最大トルクが0.7kgf・mアップしているのが魅力。タンデムや長距離巡航ではより余裕も生まれるが、車検や税金などでランニングコストは上がる。
まとめ●田宮 徹 photo●真弓悟史