「トランポ」ってどんなクルマ?
「トランスポーター」とは運送者や運搬装置という意味の英語だが、クルマ業界、バイク業界ではそれを略して「トランポ」と呼ぶクルマがある。何のことかというと、ナンバーがない車両(レーシングマシンやキッズバイク)を専用コースに運ぶためのクルマであったり、趣味のバイクを遊び場まで運んでいくためのクルマのことだ。
アメリカ、特に西海岸あたりではピックアップトラックにバイクを積んでいる姿を非常に多く見かけるのだけど、日本の場合はハイエースやキャラバンなどのバンタイプ(1ナンバー車 or 4ナンバー車)のワンボックスに積載するのが趣味の世界では一般的だ。
もちろん、ワゴンタイプのワンボックス(3ナンバー車 or 5ナンバー車)に積んでもいいし、軽トラックでも、はたまたトレーラーにバイクを積んでそれを牽引しても構わない。
要はバイクが積める、もしくは積めるようにしたクルマであれば、すべて「トランポ」になるのだ。
2018年にデビューしたホンダの軽自動車「Nバン」はフラットに畳めるシートや、バイクをベルトで固定するときに活用できるフックが最初から付いていたりして、最初からバイクを積むことが考慮されている。
オートサロン2020に展示されたトランポ
日本のトランポの代名詞とさえいえるトヨタのハイエースは、もともとは働くクルマ=商用車だったが、最近はキャンピングカーへのカスタマイズなど、趣味をもっと楽しむためのクルマとしても人気だ。
自転車の運搬、釣り、ペットを共にした長距離旅行など、遊び方・使い方により適した改造を請け負ってくれる専門ショップもたくさんある。
日本一のカスタムカーイベントとしておなじみの東京オートサロンでも「トランポ」は定番の展示になっている(数は少ないけれど)。
熊本市にある「FUNトラクション」が東京オートサロン2020に出展していたハイエースは、新商品のコンテナベッドやテーブルが備え付けられるともに、実際カワサキのモトクロッサーKX85-Ⅱが搭載されていたが、なんと、バイクを積んだまま寝られる仕様である。
注目はクォーターガラス上に追加された「アイデアプレート」と名付けられた部品だ。等間隔で穴があいていて、バイクを固定するタイダウンベルトのフックがどこにでも掛けられるようになっている。
もちろん、ハンガーを掛けたりなど、左右間に棒を渡らせてロッドホルダーを付けるなど、アイデア次第で様々な使い方も可能だ。
ホンダ車の純正アクセサリーを販売するホンダアクセスがオートサロンに出展していた「カチャットワゴン」もバイクが積めるクルマだ。
その名のとおり、バイクのほかに自転車、車いすなどなんでもカチャッと載せられるように仕立て上げられたカスタマイズカーである。
ホンダお家芸のセンタータンクレイアウトを活かした室内は完全なフラットな床面になっていて、福祉車両に使われているスロープを装備。タイダウンベルト用のフックも取り付けられている。「乗り物好き親子三世代をつなぐ、使って楽しい次世代のユニバーサル車両」がこのクルマのコンセプトとのこと。
もう1台オートサロンで面白い「トランポ」があった。埼玉自動車大学校が出展していた「S-ROCK」である。
埼玉自動車大学校は、自動車整備科のほかにカスタムボディ科やモータースポーツ科などがあって、技術力のある学生たちがいることでも有名な学校だ。
この「S-ROCK」もすごい手が込んでいる。ホンダの軽スポーツカーS660のボデイに、スズキ・ジムニーのシャシーを組み合わせた“オフロードスポーツカー”というコンセプトモデル(!!)。駆動方式がMRからFRになったことで、リヤにはトランクスペースを新設し、とてもゴツいバンパーも追加している。
車体は3インチリフトアップして大径タイヤを履かせているが、その武骨なイメージをさらに強調するがごとくヒッチキャリアを追加。オフロード仕様にカスタマイズされたスーパーカブが搭載されているのだ。
レポート●飯田康博 写真●飯田康博/ホンダ まとめ●上野茂岐