複数回に分けてクルマやバイクのブレーキを踏むポンピングブレーキ。
タイヤがロックした瞬間にブレーキを緩め、グリップが回復したら再度ブレーキを踏み込むことで摩擦のロスを減らす、制動距離を抑えるための運転技術ですね。
しかし、この運転技術が重要だったのはABS(アンチロックブレーキシステム)が普及する前のこと。
今ではブレーキを踏んで車輪がロックした際、同様のことをABSが自動的に、より高精度にやってくれます。むしろABS搭載車の場合は、ポンピングブレーキをすることによりかえって制動距離が伸びてしまいます。
もちろん、トラックなどでは荷崩れ防止に役立つので一概には言えませんが、ポンピングブレーキはもはや前時代的な技術と言っても過言ではないのかもしれません。
教習所でポンピングブレーキは教えているの?

渋滞の最後尾に付いた際に後続車両へ知らせる手段としては、予告ブレーキは有用。ハザードスイッチと併用するのも効果的。
ここで気になるのが、なかなか使用する機会のない技術であるポンピングブレーキのなんたるかを、教習所で教えているのか? という点。
そのことについて、全国の教習所をまとめる、全日本指定自動車教習所協会連合会に聞いてみると……
「特にポンピングブレーキについて説明することはありません。教習生さんへABSの機能について説明する際、付随してタイヤと路面の関係性や断続ブレーキの説明をすることがある程度です」
とのことでした。
たしかに現在のクルマはABSが搭載されているので、その機能を理解していればポンピングブレーキの説明は不要と言えるでしょう。
とはいえ、制動距離を短縮するポンピングブレーキと似たような技術として、前方が渋滞している際に後方へ注意喚起するため複数回にわけてブレーキをかける『予告ブレーキ』としての効果は現在でも有用です。
制動距離短縮はABSに任せるとして、危険を事前に周知する予告ブレーキは要所要所で使用するのが最適と言えるでしょう。

渋滞はいつ起こるかわからないので、電光掲示板なども安全を確保しつつきちんとチェックしよう。ただし、掲示内容を見ていて前方のクルマに追突……なんてことにならないよう注意!
バイクでは未だ現役の技術?
と、ここまで書いたことの大半は、“クルマ”に関してのことですが、もちろんバイクについても同じことが言えます。
むしろハザードスイッチの搭載義務がないバイクだからこそ、「渋滞の後方周知のため」にポンピングブレーキを使用している人が多いのではないでしょうか。
渋滞の最後尾など、場合によっては予告ブレーキを積極的に使用したほうが自身の安全を確保できるというケースもありますので、状況に合わせて活用するといいでしょう。

ハザードスイッチが装着されていない二輪車は、後続に危険を知らせる予告ブレーキが非常に有効だ。
本来の「制動距離短縮」という意味合いでは死語となっていますが、安全のために予告ブレーキとしての意味合いで使われ続けているポンピングブレーキ。
ですが人によっては「うざい」「邪魔」などの物騒な言葉とともに、SNSで話題にしていることもあります。無闇に使えば近年話題にのぼる「煽らせ運転」と後続車両に勘違いされてしまい、ともすれば事件に発展しかねません。
注意喚起としてのポンピングブレーキは、路面や渋滞など周囲の状況を加味し、使い所にはくれぐれも注意したいですね。