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【試乗速報】スズキ Vストローム1050XT(日本仕様) パワーアップしたエンジンを高速・ワインディング・市街地でチェック

Vストローム1050

Vストローム1050の大きな魅力「パワフルかつなめらかなVツインエンジン」

Vストローム1050はとにかくエンジンフィーリングがいい。TL1000以来の大排気量Vツインは、いよいよスズキの傑作エンジンになったと言ってもいいだろう。

従来型Vストローム1000から最大トルク発生回転数を4000回転から6000回転と大きく引き上げ(発生トルク自体はほぼ同じ)、最高出力も発生回転数を8000回転から8500回転にし出力を7馬力アップしているのだが、明らかに従来型よりも伸びのあるパワー感とコントロール性を実現している。

Vストローム1050XT。「XT」は工具不要で11段階に調整できるスクリーン、ナックルガード、センタースタンドなどを装備する上級グレード。ホイールはスポークホイールとなる

まず、総じて低回転から中回転域は、軽快な鼓動感があって快適だ。乗り始めに従来型よりも少し細った低速フィーリングを感じるかもしれないが、それが悪いわけではまったくない。
もちろん、ライダーの好みの違いもあるだろうが、文字通り過不足のない、Vツインらしい柔軟でスムーズな感じで、街中などでのルーズなコントロールも許容する粘りやフレキシブルさを持っている。

そこからスロットルを開けて行くと、スムーズさはそのままにどんどん力良さを増して行く。まず、開けはじめから4000回転くらいまで、そして5000回転〜6000回転のあたりでさらにパワーが上乗せされるようなイメージだ。そのころには、鼓動感として感じていたVツインのばらけた感じの回転がひとつの太いパワーとしてまとまって、スピードはひたすら直線的に上昇して行く。

Vストローム1050XT

二次曲線的なシャープさでもなく、フラット過ぎる抑揚を効かせたものでもなく、野太い排気音を伴ってひたすらパワフルに伸びて行く──その力強さはVツインならではで、スロットルを開ける行為に何とも言えない気持ち良さを伴っている。
それがパワーピークを越えた9000回転くらいまで続くのだ。そこでは従来型Vストローム1000とは別物の、力強く爽快な吹け上がりとパワーを感じさせる。つまり明らかに1050は速くなっているのだ。

しかも、力強いフィーリングでありながら、そこには人間の感性に合った扱いやすさがあるのである。低速で低いギヤポジションのままラフなスロットル操作を行えば、もちろん車体は大きくピッチングするだろうが、そこそこのスピードからはどのような開け方をしても安定感のある加速を見せるし、全開でエンジンを回し上げて行っても破綻を予感させるようなことはない。
これは、新たに採用した電子制御スロットル(ライドバイワイヤ)が、エンジンパワーを絶妙にコントロールしているからだろう。実のところ7馬力のパワーアップよりも、この電子制御スロットルに始まる、一連の制御が実現した出力特性やコントロール性がVストローム1050の最大の魅力である。

Vストローム1050 エンジン

排気量は従来型Vストローム1000から変わらないものの、最高出力106馬力、最大トルク10.1kgmを発揮する1036ccVツインエンジン

しかも、S.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)によって、100馬力を超えるエンジンパワーを持ちながら、それを危なげなく使うことの出来る親和性を実現しているのだ。そもそも、今回のエンジンの大幅改良は、排ガス規制のクリアが目的で、その結果として高回転型へ移行したのだが、そこにスズキの持つVツインのノウハウをすべて注ぎ込んだそうだ。これは大成功と言ってもいいだろう。

ちなみに、A、B、Cとある3段階の出力モードはピークの絶対値は同じで、そこに至るまでの出力カーブが変わる……つまり加速感や到達時間が変わるわけだが、エンジンに扱いやすさがあるので通常なら“フルパワーモード”のAモードでも問題ない。のんびりクルーズするならBモードでもいい(Cが最も穏やかな特性となる)。

それこそ全開にすれば猛牛のように突っ走れるAモードでも、OFFを含めれば4段階のトラクションコントロールを軽く効かせてやれば、コーナー立ち上がりで恐怖することもそうそうないだろう。しかも、これらの操作性はすこぶる良く(メータ―パネルのダイアログが非常に分かりやすく、操作も単純だ)、これも美点のひとつになりうるはずだ。

Vストローム1050 メーター

回転計右下には、ライディングモード、トラクションコントロール、ABSの選択モードが分かりやすく表示される

車体はVストローム1000時代をベースとしているが、安定感重視に

車体は基本構成を従来型同様としているが、Vストローム1050では乗り心地や対外乱性を向上させるためにサスペンションセッティングが少しソフト傾向にリセッティングし、タイヤも直進安定性を向上させた物に変わっている。
また、車重は247kg(XT)となり従来型より14kg増加したせいもあるのか、総じてそのハンドリングは安定指向を強めているように感じさせる。例えば前輪が21インチのホンダアフリカツイン、あるいは車重が優に250kgを超えるBMW1250GSなどは、走り出してしまえば軽快に感じるほどのハンドリングだが、Vストローム1050の場合は重くはないが落ち着いた感じである。

Vストローム1050XT。実用装備が充実するのみならず、「XT」はIMU(慣性計測装置)が6軸となり、ABSの制御や使える電子制御機構がグレードアップする

それが軽率な挙動を抑制しているのが利点であり、ネガティブに言うと荷重のかかっている状態で車体を機敏に動かすには相応の意志が必要になるし、コーナーによっては少々アンダーステアっぽく感じる場合もあるといったところ。
ただ、ブレーキはスーパースポーツ並みに良く効くので、フルブレーキングではこの車体の性格が非常に頼もしい。おまけに、上級グレードの「XT」では荷物の積載やタンデムをも考慮したブレーキ制御が採用されているので、大きな気分で快適に長距離を走るのなら、Vストローム1050という選択肢はありだろう。

Vストローム1050XT

Vストローム1050XT:足着き性、ライディングポジション

上体が直立したニュートラルなライディングポジション。ハンドルは遠からず近からず。シート高は850mmと大型アドベンチャーモデルでは低いレベル。XTではシート高を850mm870mm2段階に調整可能(アダプターを付け替える)。写真は標準の850mm

身長170cmのライダーだと写真のように両足つま先立ちとなるが、燃料タンク後端からシート前端の連なり部分が絞り込まれているので、またがると想像以上に安心感やフィット感がある。写真のシート高は標準の850mm

スズキVストローム1050XT諸元

【エンジン・性能】
種類:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ 総排気量:1037cc 最高出力:78kW<106ps>/8500rpm 最大トルク:99Nm<10.1kgm>/6000rpm 燃料タンク容量:20L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】
全長:2265 全幅:940 全高:1465 ホイールベース:1555 シート高850(各mm) 車両重量:247kg タイヤサイズ:F110/80R19 R150/70R17
【実測燃費】
20.1km/L(燃料はハイオク指定)
【価格】
151万8000円(税込)

試乗レポート●関谷守正 写真●柴田直行(走行写真・ライディングポジション)/山内潤也/スズキ 編集●上野茂岐

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