1290スーパーデュークR:歴代モデルがビーストと呼ばれ続けるスポーツネイキッド
KTM1290スーパーデュークRは、ビースト=野獣というニックネームとは裏腹に、抜群に完成度の高いスポーツネイキッドモデルであった。それ以前の990スーパーデュークRが、「スーパー」と付くほどじゃじゃ馬マシンであったから余計にそう感じた……わけではなく、「1290」になってからKTMのロード向けモデルが大きな転換期を迎えた、と感じたからだ(「1290スーパーデュークR」としては、2013年モデルで初代がデビュー)。
キーポイントは、ライディングポジションの適正化、そしてエンジンの特性にあり、特にアクセル開け始めのスムーズさと低回転域でのギクシャク感が低減された。それに加え、低荷重時におけるサスペンションの設定変更などを行い、乗りやすさの面で大きなステップアップを遂げたのである。
その後、2017年モデルで大幅熟成のモデルチェンジが行われたが、最新モデルである2020年モデルの1290スーパーデュークRではさらに大きなステップアップを実現した。デザイン面は従来型(2017〜2019年モデル)から大きく変わっていないが、実はかなりのパートが新設計されているのだ。
1301cc「LC8エンジン」の強烈なパワーとトルク!
午前中がサーキットでのテスト。会場のポルティマオは欧州屈指の難コース。そこを10分のインターバルで20分×6本と、うれしいようなつらいような設定だった。
まずは強烈なトルクに、脳みそがいきなりパンチを食らわせられた。エンジンのパワフルさは相変わらずであり、ストレートエンドではメーター読み275km/hオーバーを記録。1301ccもあるツインエンジンがこんなに軽々と回るのも驚異的であるが、通常2速を選択しがちなコーナーを余裕で3速を使って回っていくフレキシブルさも魅力だ。
そして、エンジン搭載位置の適正化と共に軽量化が功を奏していて、ハンドリングの軽快さや運動性も明らかに高まっている。フレームは従来比で3倍もの剛性を持つという。よりカッチリした無駄のない動きで、狙ったラインをトレースしていく。リヤサスペンションはリンク式へと変更され、しなやかさとフィードバック性が高まった。
ツーリングも余裕でこなせる1290スーパーデュークR
もちろん、このようなハイスピードコースでは剛性アップによる硬さを感じるようなこともなく、スーパースポーツ的なエッセンスを注入してスポーツ性をアップグレードしているのだと思われた。しかし、一般公道の走行ではそれがどう出るか?という懸念もあったのだが、ワインディングを走らせてみると神経質さのあるフィードバックは全く感じられなかったのだ。
むしろフレンドリーな印象で、柔軟な車体や電子制御系のアップデートなどで、トータルバランスはさらに高まっていた。ビースト=野獣というニックネームやスペックからは、その優しさは想像できない。まるで映画の怪物シュレックのようなマシンであったのだ。
新型1290スーパーデュークRのフェイバリット&リクエスト
フェイバリット:1300㏄とは思えないスムーズさと、分厚いが扱いやすいトルクを持ち、それでいて軽快に高回転域まで回るエンジンがいい。トラクションコントロールやABSの電子制御の完成度と、剛性を上げつつもフレンドリーな車体がうまく組み合わさり、サーキットでの熱い走りと公道でのフレンドリーさが素晴らしい。何より楽しいマシン作りが徹底されている。
リクエスト:以前のスーパースポーツモデルRC8Rと比べても車体剛性は高いとのことで、スーパーデュークRをベースとしたカウル付きのスポーツモデルも見てみたい。OEMタイヤのブリヂストン製S22は公道からサーキットまで十分なグリップ性能とオールラウンド性を持つが、もう1ランクグリップ力の高いタイヤでも良かったかもしれない。また。シフトストロークが大きめでタッチが少し粗いのは改善を望みたい。
試乗レポート●鈴木大五郎 写真●KTM 編集●上野茂岐
KTM 1290スーパーデュークR 諸元
【エンジン・性能】種類:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:108×71mm 圧縮比:13.5 総排気量:1,301cc 最高出力:132kW<180ps>/9500rpm 最大トルク:140Nm<14.2kgfm>/8000rpm 燃料タンク容量:16L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1497 シート高:835(各mm) 車両重量:198kg タイヤサイズ:前120/70ZR17 後200/55ZR17 ※数値は欧州仕様
【価格】217万9000円