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【トライアンフ スラクストン400/トラッカー400海外試乗】400ccの枠を超えた”本物”の走りと美学

スペイン・マラガで掴んだ確信――400シリーズ最新2モデルのエンジンアップデート

トライアンフが仕掛けるミドルクラス戦略の第2幕が、ついに幕を開けた。2024年に「スピード400」「スクランブラー400 X」でスタートした400ccモダンクラシックシリーズに、「Thruxton 400(スラクストン400)」と「Tracker 400(トラッカー400)」が新たに加わり、計4モデル体制が整った。

スラクストン400(左)とトラッカー400(右)

今回はスペイン・マラガで開催された国際試乗会に参加。「スクランブラー400X」オーナーでもある筆者が、最新2モデルを実走で確かめた。

まず押さえておきたいのが、スラクストン400とトラッカー400が単なる”スタイル違い”ではないという点だ。スピード400とスクランブラー400Xが搭載する「TRシリーズ」エンジンは最高出力40psだったが、新たな2モデルでは42psへと引き上げられている。数字だけ見ると「たった2ps」と思うかもしれないが、変更の本質はもっと深い。レブリミットの引き上げと高回転域での出力特性の見直しにより、エンジンのキャラクター自体が刷新されているのだ。最高出力は従来比で約5%向上、9000rpm(従来は8000rpm)でピークとなっている。

スラクストン400
トラッカー400

スクランブラー400Xに約2年乗り込んできた筆者は、最初「2psの差を体感できるだろうか」と半信半疑だった。だが試乗開始から数分で、その疑念は完全に消えた。

カフェレーサーの哲学を400ccで体現するスラクストン400

丸型LEDヘッドライト、伸びやかなフロントフェアリング、バレットタイプのシートカウル。スラクストン400は、どこを切り取っても「カフェレーサー」としか言いようのないシルエットで仕上がっている。セパレートハンドル、後退気味にセットされたフットペグ、ピレリ製ディアブロ・ロッソ・クワトロというタイヤの選択――細部のひとつひとつが、「速く走ること」を純粋に追求した結果として積み上げられている印象だ。

スラクストン400:ファントムブラック/アルミニウムシルバー

フロントフォークはブラックアルマイト仕上げ、ホイールも新デザインを採用。旧来のトライアンフらしさを守りながら、現代的な統一感を実現している。シート高は795mm。ライディングポジションはスピード400に比べ、クリップオンハンドルが40mm狭く246mm低く設定され、リヤフットペグは86mm後方・27mm上方に配置。より積極的な前傾姿勢が求められる。

今回、試乗コースは市街地からワインディングまで多岐にわたった。街中では、シングルエンジンらしいパルス感と扱いやすさはスクランブラー400Xと変わらない。しかし郊外に出てスロットルを開けた瞬間、エンジンはまったく別の顔を見せる。高回転に向かって一気に伸びていく加速感は爽快そのもので、400ccクラスの常識を軽く超えてくる。

セパハンスタイルのバイクは、ライダーのスキルによっては攻めるほど腕が疲れてくることも多い。だがスラクストン400にはそれがなかった。車体の素直な挙動とパワーデリバリーの自然さが相まって、ライダーに無駄な緊張を強いない。「自分のスキルが上がったのでは」と錯覚するほどの乗りやすさだ。海外メンバーからも「想像以上にスポーティだった」という声が上がっていた。

スラクストン400:カーニバルレッド/アルミニウムシルバー
スラクストン400:メタリックレーシングイエロー/アルミニウムシルバー
スラクストン400:パールメタリックホワイト/ストームグレー
スラクストン400、トラッカー400ともに「TRシリーズ」エンジンが進化し、最高出力42psを9000rpmで発揮。レブリミットの引き上げと高回転域での性能強化で、最大出力も従来比5%向上
スラクストン400:新採用されたクリップオンハンドルはスピード400に比べて40mm狭く、246mm低く設定され、リヤフットペグは86mm後方、27mm上方の配置。シート高は795mm
スラクストン400:コックピットはアナログスピードメーターとLCDタコメーターを組み合わせた仕様に変更はなく、USB-C充電ポートももちろん装備
スラクストン400:片側1本出しのマフラーは、スピード400と同様の形状を採用
スラクストン400:43mm径倒立タイプのフォークは135mmストローク(トラッカー400は140mm)。前後ブレーキはバイブレ製キャリパーを装備
スラクストン400:後輪は右側がドライブチェーン駆動でブレーキは左側に配置。リヤのモノショックサスペンションのホイールトラベルは130mmで、トラッカー400と共通
スラクストン400:前後一体型のシートはトラッカー400と異なる形状と表皮を採用
スラクストン400:取外し可能なリヤシートカウルは、同車専用形状。グラブバーは2モデル共通採用の装備で、荷物積載時などにも便利

フラットトラック由来の洒脱さと、意外なほどの懐の深さを持つトラッカー400

試乗会の会場となったホテルの中庭に象徴的に展示されていたのが、レーシングイエローのトラッカー400。ワイドでフラットなハンドルバー、スマートなタンクシルエット、サイドのゼッケンプレート――アメリカンフラットトラックのDNAを率直に受け継いだデザインは、存在感がある。

トラッカー400:ファントムブラック

タイヤはピレリ製MT60RSで、オンロード主体ながらラフな路面にも対応。フラットトラック由来の力強さをビジュアルだけでなく走りでも体現している。シート高は805mmで、スクランブラー400X(835mm)より30mm低い。ライディングポジションはやや前傾で、肘を外に張るワイルドなスタイル。最初こそ戸惑いを感じたが、慣れるまでに時間はかからなかった。

トラッカー400:アルミニウムシルバー
トラッカー400:レーシングイエロー

走り出せば、スラクストン400と同じエンジンを積んでいながら、フィーリングは意外なほど穏やか。車体が軽量なこともあって軽快さが際立ち、ワインディングでは周囲の景色を眺める余裕すらある。アクティブすぎず、かといってつまらなくもない――適度な刺激と乗りやすさのバランスが絶妙だ。海外メンバーからは「街中もワインディングもリラックスして乗れる」と好評だった。

トラッカー400:400の文字が入ったフライスクリーンをヘッドライト上に装備し、ハンドルは広めのフラットバータイプ
トラッカー400:スラクストンとも共通のメーターユニットは、針式の速度計と液晶部に各種情報とデジタル回転計を組み合わせる
トラッカー400:マフラー形状は片側2本出しで、スクランブラーXと同様のタイプを採用
トラッカー400:前側にタックロールの入った一体型シート
トラッカー400:スラクストンと同様に取外し可能なリヤシートカウルを装備するが、トラッカースタイルにマッチする専用形状を採用

4モデルで何が違う?――400シリーズ全体像を整理する

400ccモデルのキャラクター比較

スラクストン400とトラッカー400はエンジンの出力特性が強化されており、同じ「TRシリーズ」でも走りの味付けは明確に異なる。4モデルそれぞれに個性と意図があり、「とりあえず似たようなバイクを並べた」という印象はまったくない。

なお4モデル共通の装備として、ライド・バイ・ワイヤ・スロットル、切替式トラクションコントロール、トルクアシストクラッチ、ABS、USB-C充電ポートを標準装備。コックピットはアナログスピードメーターとLCDタコメーターの組み合わせで、クラシカルな見た目と現代の利便性を両立させている。

では、今回紹介の2台はどんなライダーにフィットするだろうか。

オシャレでありながら、走りを純粋に楽しみたいライダーにはスラクストン400だろう。カフェレーサーのビジュアルに憧れを持ちながらも、「でも乗れるかな」と躊躇していた人にこそ試してほしい。思ったよりずっと乗りやすく、エンジンの爽快感がライディングをどんどん楽しくしてくれる。週末のワインディングを主戦場にしたいライダーにおすすめしたい。

スラクストン400:カーニバルレッド/アルミニウムシルバー
スラクストン400のライディングポジション。またがりライダーは、今回一緒に海外試乗に参加したインフルエンサーのAnriさん(instagram@anritocamp)。身長は167cm

そして、街乗りとツーリングの両立を求めるライダーにはトラッカー400。通勤や日常使いから、週末の中距離ツーリングまで幅広く対応できる。フラットトラックのスタイルが好きだが、あまり構えずリラックスして乗りたい、という人にぴったりだ。足着きの不安が少ない点も、幅広いライダーへの間口を広げている。

トラッカー400:アルミニウムシルバー
トラッカー400のライディングポジション。またがりライダーは、スラクストン400と同じく身長167cmのインフルエンサーのAnriさん

ちなみに、スラクストン400の日本での販売価格は84万9900円〜、トラッカー400は80万9900円〜となっているが、80万円台というプライスタグで、これだけの仕上がりのバイクを手に入れられるという事実は、改めて驚くべきことだ。

同クラスの国産車と比較しても、デザインの完成度・装備内容・ブランド力のどれをとっても引けを取らない。トライアンフというブランド、「スラクストン」という歴史ある名称、そして実際の走りのクオリティを考えると、コストパフォーマンスは相当に高い。

スピード400とスクランブラー400Xは発売から2年で世界累計15万台を売り上げた。その成功を受けて戦略的に追加投入されたスラクストン400とトラッカー400は、ラインナップに幅と深みをもたらす存在となるが、日本でも、この4兄弟を街中で見かける機会が一気に増えそうだ。

スラクストン400主要諸元

■エンジン 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク89×64mm 排気量398cc 圧縮比12 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力30.9kW(42ps)/9000rpm 最大トルク37.5Nm(3.8kgm)/7500rpm 燃費27.7km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.830 2速1.930 3速1.420 4速1.140 5速0.960 6速0.840 一次減速比2.839 二次減速比3.360
■寸法・重量 全長─ 全幅775 全高1110 軸距1376 シート高795(各mm) キャスター24.5° トレール101.5mm  タイヤF110/70R17  R150/60R17 車両重量176kg
■容量 燃料タンク13L エンジンオイル2.25L
■車体色 ファントムブラック/アルミニウムシルバー、パールメタリックホワイト/ストームグレー、カーニバルレッド/アルミニウムシルバー、メタリックレーシングイエロー/アルミニウムシルバー
■価格 84万9900(黒×銀)86万2900円(他3色)

トラッカー400主要諸元

■エンジン 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク89×64mm 排気量398cc 圧縮比12 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力30.9kW(42ps)/9000rpm 最大トルク37.5Nm(3.8kgm)/7500rpm 燃費27.7km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.830 2速1.930 3速1.420 4速1.140 5速0.960 6速0.840 一次減速比2.839 二次減速比3.360
■寸法・重量 全長─ 全幅857 全高1050 軸距1371 シート高805(各mm) キャスター24.4° トレール107.6mm  タイヤF110/70R17  R150/60R17 車両重量173kg
■容量 燃料タンク13L エンジンオイル2.25L
■車体色 ファントムブラック、レーシングイエロー、アルミニウムシルバー
■価格 80万9900円(黒)、82万2900円(他2色)

【文:ムラタナオコ(エディター/ライター)】
40歳で普通二輪&大型二輪の免許を取得。バイクに乗り始めて6ヶ月後にはインド・ヒマラヤツーリングも経験。2024年4月より、当時日本に上陸したばかりのトライアンフ スクランブラー400Xが愛車。

写真●トライアンフモーターサイクルズ

CONTACT

トライアンフモーターサイクルズジャパン
http://www.triumphmotorcycles.jp/

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