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あの人気VツインADVの中華版!?【QJモーター SVT650X】海外試乗記

あなたはQJモーターというバイクメーカーを知っているだろうか? また、2025年の日本バイクオブザイヤーにおいてQJモーターのSRV250が外国車部門で最優秀金賞を受賞したことはご存知だろうか? イギリス人モーターサイクルジャーナリストで、マン島TT参戦などレース経験も豊富なアダム・チャイルド氏が、日本未発売のQJモーター最新アドベンチャーモデルを紹介する。

多角的に競争力を主張

中国・浙江省に本社を置くQJモーターは、イギリスやヨーロッパではあまり一般的に知られていないバイクメーカーだ。しかし、ヨーロッパのライダーならば誰もが知っているベネリとモルビデリという象徴的なブランドの、現在における所有者でもある。そしてQJモーターはグローバルな買収を展開していく一方で自社ブランドのバイクの開発も進めており、性能だけでなく装備や造りにおいてもヨーロッパや日本のメーカーとの差を縮め、価格面では優位性を発揮している。

ベネリは1911年にイタリアのペーザロで誕生、1950年にロードレース世界選手権(WGP)の250ccクラスで王座を獲得するなどの活躍を見せたメーカー。2005年からQJモーターの傘下に入っている。モルビデリも同様にWGPチャンピオン獲得メーカーで、2024年にQJモーターグループの1ブランドとなった。なお、QJモーターはハーレーダビッドソンのX350およびX500の製造も担当している。

QJモーターが欧州市場に投入した、Vツインエンジンを搭載する新型アドベンチャーモデルのSVT650とSVT650Xは、スズキの人気モデルであるVストローム650とVストローム650XTに対抗するモデルだ。SVT650は鋳造アルミホイールを採用したベースモデルで、SVT650Xはそのハイスペックバージョンとしてワイヤースポークホイールなどを装備している。イギリスでの車両価格はそれぞれ5699ポンド(約120万円)と5999ポンド(約127万円)で、Vストローム650およびVストローム650XTの現地価格を下回る設定だ。

QJモーター SVT650X。SVT650の上級仕様にあたる。

人によってはこの価格設定を見て首を振り、こう指摘するかもしれない。“どこかで見たようなデザイン”と“攻めた値付け”の組み合わせは中国メーカーの得意な手法であり、良質なバイクが相場をこれほど大幅に下回る価格で存在するなんて相も変わらず都合が良すぎると。しかし一方で、QJモーターのような勢いのある中国メーカーは現在、ある分野に関しては一流メーカーにほぼ追いついており、しかもそれは安価を実現する体制を保ったまま達成されたのだという主張もある。さて、どちらの見方が現実に近いのだろうか? 一日かけてSVT650Xの実走テストを行い、その答えを探った。

果たしてSVT650Xの実力は……?

フレンドリーでどっしりした乗り味

SVT650Xは、QJモーター独自開発とされる排気量645ccのVツインエンジンを搭載している。しかし、ボア81mm、ストローク62.6mmという仕様はスズキVストローム650XTに搭載されているVツインエンジンと同じで、明らかにその設計を基にしていると思われる。なお、SVT650XはVストローム650XTよりも最高出力が高く(SVT650Xの76馬力/9000回転に対し、Vストローム650XTは71馬力/8800回転)、最大トルクもSVT650Xが上回っている(SVT650Xの6.6kgf・m/8000回転に対し、Vストローム650XTは6.3kgf・m/6500回転)。

註:スペックはイギリス仕様のもの。以下同じ。

SVT650Xに搭載されるVツインエンジンは排ガス規制のユーロ5+をクリアしている。

シャシーについては、SVT650Xはアルミフレームを採用するVストローム650XTとは異なり、スチールフレームを採用している。倒立式フロントフォークはプリロードと伸側減衰力の、リヤサスペンションはプリロードの調整が可能だ。ホイールは前19インチ、後ろ17インチのワイヤースポークタイプで、タイヤはメッツラー ツアランスが装着されている。ブレーキはABS付きで、フロント側はブレンボ製のラジアルマウント対向4ポットキャリパーと320mm径ブレーキディスクを装備。燃料タンク容量はツーリングに適した20Lで、これはVストローム650XTと同じ数値だ。

フロントはサンスター製のディスクをダブルで装備。フロントフォークはマルゾッキ製だ。デュアルチャンネルABSはボッシュ製。
リヤブレーキはブレンボ製1ポットキャリパーとサンスター製240mm径ディスクの組み合わせ。リヤサスペンションはモノショックタイプでフロントフォークと同じくマルゾッキ製。

さて、スズキの650ccVツインエンジンは四半世紀近くにわたりさまざまな形でミドルクラスカテゴリーを牽引してきた。SV650系とVストローム650系はヨーロッパでは2025年で生産終了となるが、これらは実用性と信頼性、エントリーモデルに備わるべき楽しさの模範となる存在だった。それを踏襲するように、QJモーターもSVT650Xをユーザーフレンドリーで寛容な乗り味に仕上げてきた。SVT650Xにライディングモード変更機能がないことは、購入を検討しているライダーにとっては善し悪しだと思うが、1時間もマニュアルに首っ引きになる必要なく、ただバイクに飛び乗ってスロットルを開けるだけでいいという単純さは実に爽快である。

SVT650Xで走行開始!

実際に走らせてみると、SVT650Xのエンジンは高回転域では目立つ雑味があるものの、中回転域では力強い加速とVツインらしい滑らかなトルクフィーリングが発揮される。市街地ではVストロームに負けないくらい生き生きと、かつきびきびと走り、より心地良く、親しみやすくも感じられた。開けた道では、76馬力のエンジンが快適な巡航速度である80mph(約129km/h)までスピードを押し上げてくれる。6速では約6000回転でこの速度に到達し、やや振動が気になるが不快ではない。

最高速度は120mph(約193km/h)ほどと思われる。ただ、ハイスピード領域におけるSVT650Xのパフォーマンスは、日本ブランドのライバルと比べるとやや俊敏さに欠け、鈍い側面がある。その一因はSVT650Xの車両重量が236kgと、BMW R1300GSのベース仕様車よりわずか1kg軽いだけで、Vストローム650XTより約23kgも重い点にある。高速道路で微妙にスローペースな車両を追い越すために加速する際は、より入念な計画が必要だ。さらに、リヤシートに同乗者を乗せ、パニアケースを旅行用の荷物で満杯にすれば、パワーウエイトレシオにおける不利はより顕著になる。

SVT650Xはハードタイプのトップケース&左右サイドケースを標準装備している。

この236kgという数値はおそらく、SVT650Xに標準装備されているハードケースとケース取付用ブラケットの重量は含んでいないと思われる。Vストローム650XTは頑丈で堅牢な印象だが、SVT650Xほど重くは感じられない。SVT650Xの車体に関する良い点としては、快適なシートが挙げられる。バイクの「上に」乗るというより「中に」乗り込む感覚だ。サイドスタンドを上げて動き出せば、ハイスピードで走っているとき以外ではそれほど車重は気にならない。実際、低速走行やまたがったまま足をついて後退する動作も比較的容易にこなせた。

このような安価なバイクではサスペンションがコスト削減のしわ寄せを受けていそうなものだが、SVT650Xの乗り心地は素直で落ち着いたものだ。未舗装路や砂利道での性能を試す機会はなかったが、ひどく荒れたアスファルト路面でも、速度抑制用の隆起がある道路でも、穴だらけの裏路地でも、足さばきを乱すことなく乗り切った。安定性も抜群で、どれだけ私がバイクの落ち着きを乱そうとしても揺るがない。ブレンボ製ブレーキは強力な制動力を発揮し、ABSも過度に介入することはない。

SVT650Xのコーナリング性能を試すアダム。

SVT650Xからにじみ出る、必要十分な性能を厳格に追及する姿勢は好感を持てるが、限界を感じる部分もある。余分と思える車両の重さがステアリングや高回転域におけるエンジン性能を鈍らせているし、シャシーに関しては向き替えのスピードがやや遅く感じる。サスペンションは少しプレッシャーをかける走りをした際には、コントロールを失うことはないものの、車体を支える動きに突っ張り感が出てくる。

要するに、SVT650Xのハンドリングと乗り心地はおおむね良好だが、車両が重たいことによってVストローム650XTのように機敏に走るための俊敏性は抑えられている。ただし、完全に機敏さが失われているわけではない。試乗車両はハードタイプのトップケースとサイドケースを装着した状態であったことは改めて記しておきたい。これらを外して身軽になったSVT650Xならば、ライダーの操作に対してより良い反応を見せることは確かだ。

SVT650Xはツーリング向けのパーツを多数標準装備している。

今回は短距離の試乗だったが、この中国製バイクでロングツーリングをこなすことになってもためらいは皆無だと言える。20Lという大容量の燃料タンクと低燃費のエンジンは、240マイル(約386km)以上の航続距離をたたき出す。燃費計は装備されていないが、55~65mpg(約23.4~27.6km/L)は十分に達成可能である。前述のとおり、ライディングポジションは小柄なライダーでも低速域で安定感を得られるもので、シート高はさほど高くなく座り心地も良い。シート後部も十分な広さがある。サスペンションは路面からの衝撃をほぼ全て吸収してくれるし、2段階の高さ調整が可能なスクリーンの防風性も高い。ハンドガードも装備し、さらにVストローム650XTには標準装備されていないグリップヒーターとシートヒーターも採用されている。 実際、標準装備の充実度はSVT650Xの価格からは考えられないほどだ。大型の7インチメーターパネルはスマートフォンと連携可能で、充電用のUSBポートも搭載。さらに、外気温計やアラート機能付きタイヤ空気圧計を備えており、実用的なだけでなく目を楽しませてくれる。灯火類は全てLED。3つのハードケースが標準装備されていることを含め、不足点はほとんどない。欠けているのは、何かと便利なセンタースタンドや、タンデム時や荷物積載時に役立つリヤサスペンションのリモートプリロードアジャスターくらいだろう。

豪華装備と価格に魅力を感じるか

消費者の信頼を築くのは簡単ではない。QJモーターが生み出したこのミドルアドベンチャーモデルが日本の同等モデルより優れた選択肢だとライダーたちに納得させるには、本当に多大な努力が必要だろう。それを達成することは、ディーラーによる整備・サポート体制や、長期的な信頼性を築くことに先立つものだ。 

ともあれ、私は試乗を通じて以下のことを把握した。SVT650Xのパフォーマンスは良好だ。通勤や週末のツーリング、日曜午後の気楽なライドで優れた働きを見せてくれる。特に刺激的というわけではないが、A地点からB地点への移動を快適に、楽しみながら行える。見た目もその役割にふさわしい。

SVT650Xはミドルアドベンチャー市場でどのような立場を築いていくのだろうか?

ミドルアドベンチャーモデルとしては重量が重すぎるため、ペースを上げたいときにエンジンとシャシーの性能が鈍ってしまうのは残念だ。しかし、以下の2つの魅力を考慮すれば、ベンチマークとなるVストローム650XTに負けていないだろう。

ひとつは、標準装備の豪華さだ。実用的な装備の充実度では、SVT650Xは旧式となったVストローム650XTを完全に凌駕している。例えばシートヒーターは、この価格帯のバイクでは珍しい贅沢品だ。ブレンボのブレーキシステムやメッツラーのタイヤといった信頼性に優れる高品質コンポーネントの採用も、さらにバイクのレベルを引き上げている。

もうひとつは、やはり価格設定だ。実のところ、SVT650XはVストローム650XTが終売する直前で登場したバイクだが、比較対象が消えても魅力的な価格であることに変わりはない。また、ツーリング向けの装備をほぼフル装備していて、さらに一部のスペックが強化されているVストローム650XTに相当するバイクを安価で手に入れられるというのは、無視できない事実なのである。

QJモーター SVT650X 諸元

エンジン種類:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ
ボア×ストローク:81.0×62.5mm
総排気量:645cm3
最高出力:56kW<76.1ps>/9,000rpm
最大トルク:65Nm<6.6kgf・m>/8,000rpm
燃料タンク容量:20L
WMTCモード燃費:――
変速機:6段リターン
全長×全幅×全高:2,270×950×1,405mm
ホイールベース:1,505mm
シート高:835mm
車両重量:236kg
タイヤサイズ:(F)110/80R19 (R)150/70R17
カラー:ブラック×イエロー、レッド×シルバー、グレー×グリーン
日本未発売

report:Adam Child  photo:Sim Mainey/岡 拓

LINK

QJモータージャパン https://qjmotor.co.jp/

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