ライダーアシストの電子制御機構で、手強さのハードルを低くした新型DR-Zシリーズ

DR-Z4Sでの1日約250kmほどのツーリング試乗記を前回紹介したが、そこから実感したのは電子制御技術によって、(シート高は相応に高いにしても)「400ccオンオフモデルに乗ることのハードルはけっこう低くなったなぁ」というもの。
DR-Z4Sは、先代のDRZ-400Sを踏襲している部分はあるものの、3つのパワーモード、3つのトラクションコントロール(オフも可能)、そしてABSブレーキ(4Sは後輪オフ、前後輪オフも可能)を司るS.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)が採用されることで、走ることをかなりサポートしてくれていると実感したからだ。
これが、先代のDRZ-400Sとの大きな違いでもあり、乗り手側が感じる手強さのハードルをかなり低くしている。2000年に登場し、2008年まで国内販売されたDR-Z400Sはキャブレター仕様であり、無論パワーモードをはじめ前述の制御機構は非搭載だから、この印象は間違っていないだろう。
ちなみに、今ツーリング試乗でのDR-Z4Sの平均燃費は32.9km/L。一般道の移動が増えれば30km/L台は割るだろうが、燃焼効率の向上も新型DR-Zの特筆すべき部分だ。今回と走行ルートは異なるものの、筆者は2000年の別冊モーターサイクリスト誌(当時)で登場仕立てのDR-Z400Sでツーリング試乗をしており、参考までに記すと、道中2回の給油での平均燃費は19.1km/Lと記している。なので、スズキはDR-Z4Sでの燃焼効率の向上でもかなり頑張ったのだと思う。
では、前回紹介したツーリングインプレッションに続き、DR-Z4Sの各部の印象を紹介。


DR-Z4S:試乗後の各部インプレッション
【ライディングポジション】

DR-Z4S:身長173cm/体重76kg(股下は約80cm)での乗車姿勢。カタログでのシート高は890mm(標準はローシート装着)。片足接地では足裏半分が着くから車体保持には問題ないものの、両足を下ろした場合は、力の入る程度のつま先接地となる。

DR-Z4SM:今回は試乗紹介しなかったスーパーモトモデル、DR-Z4SM(ミッドシートを標準装着)の乗車姿勢。シート高は890mmで4Sと同数値となっているが、シート形状にもよるのか、SMのほうが両足の浮き具合は4Sよりも1~2cm程度少なく、比較すると足着き性はよくなっている。
【エンジン&各モード設定】

■基本は先代のDRZ-400系を踏襲した水冷398cc単気筒だが、吸気側=チタンバルブ、排気側=ナトリウム封入中空バルブとデュアルスパークプラグの採用のほか、カムプロフィール、ピストン、クランクケース、インジェクターなど多岐にわたり変更。FI化され(先代はキャブレターだった)、ライドバイワイヤの電子制御スロットルを介したS.I.R.S.(スズキドライブモードセレクター)での3つのドライブモード選択、2モード(+オフ)とG(グラベル)モードを設定したトラクションコントロールなど最新の機構も装備。

■走行シーンや路面状況、好みのライディングに合わせて、出力特性の異なる3つのモードを選択可能なSDMS(スズキ・ドライブモード・セレクター)。最高出力は変わらず、出力フィールの違いを特に低・中速域で顕著に体感できるように設定。モードA(アクティブ)は、スロットルを開けたときのレスポンスが最も鋭く、刺激的な加速。良好な路面でのアグレッシブな走りを楽しむのに最適。モードB(ベーシック)は自然なスロットルレスポンスで、素直なパワーデリバリーが特徴。幅広いライディングと路面状況にフィットする設定。モードC(コンフォート)は、ソフトなスロットルレスポンスの穏やかなトルク特性。濡れた路面や滑りやすい路面でのライディングに適しているというものの、個人的には出力を絞っている印象に若干違和感を覚えた。

■前後輪の速度センサー、スロットルポジションセンサー、クランクポジションセンサー、ギヤポジションセンサーの情報により、リヤタイヤのホイールスピンを検出した際、速やかにエンジン出力をコントロール。1・2・G(グラベル)・OFFの4つのモードから選択可能で、モード1は乾いた舗装路面向けで、モード2は濡れた舗装路面向け。DR-Z4SとDR-Z4SMは、同じ路面での走行を想定したセッティングだが、サスペンションやタイヤの違いに合わせた専用チューニングをしている模様。なおシステムの介入が最も少ないGモードは、未舗装路でも駆動力を長めに保持し、高い走破性と安定した旋回性をサポート。ライダーが滑りやすい路面などのオフロード走行でも不安なく楽しめることに焦点を置いて設定。
【シャシー&ディメンション】

■タンクレール部をツインスパー形状としたスチールパイプ製セミダブルクレードル式メインフレームと、アルミ製シートレール、アルミスイングアームのシャシー。剛性、強度、しなやかさの高次元でのバランスでねらった構成。
【ハンドル周り】

■オンロードからオフ走行まで、違和感なく自然にコントロールできるハンドルポジション。中央に、コンパクトな液晶メーターを配置。
【液晶メーター】

■回転計を持たないシンプルな構成ながら、見やすい液晶ディスプレイ。中央に速度、その下に切り替え式でオド/瞬間燃費/トリップA&B/A&B時の平均燃費/電圧を表示。表示上部は、左にギヤ段数、中央に燃料残量、右に時刻、右側上の枠内はパワーモード、下枠内にトラクションコントロールのモードを表示。液晶枠外の左下ボタンは、ABS作動&キャンセル、右下は表示リセットボタン。
燃料残量の警告は2段階で、GSスタンドマークの点滅で残量約2.1L、バーグラフ1目盛りの点滅で残量約0.8Lとなり、親切で把握しやすい設定が特徴だ。
表示枠外の左端はウインカー/エンジン警告/マスターウォーニング/ABS機能警告、右端はニュートラル/ABS警告/TC警告/ハイビーム警告の配置。
【左右スイッチ周り】

■左グリップの操作系は、前側からヘッドライトディマー&パッシング/グレー部が上下セレクトレバー、その中央の黒ボタンがモードスイッチ、その下にウインカー/ホーンという配置。

■右側の操作系は上の大きな赤ボタンがセル&キルスイッチ、下がハザードボタン。
【ヘルメットホルダー】

■左スイッチボックスの内側に配置されるのが、キーロック付きのヘルメットホルダー。地味な部分ながら、あれば便利な装備。
【オイル給油口】

■燃料タンク前側にあるエンジンオイル注入口キャップ。ドライサンプ式エンジンのため、フレーム前部のこの部分がオイルタンクとなり、キャップ裏にレベルゲージが装備される。
【燃料タンク】

■8.7L容量の燃料タンク。400ccクラスとしては良好な燃費(今回の試乗では32.9km/L)により、警告灯点灯後も200km過ぎまで走行可能だと確認できたものの、ツーリングメインで使用するならば、個人的には10Lほどの容量は欲しいと感じた(先代のDR-Zは10Lだった)。
【フロントホイール】

■21インチの前輪。ブレーキはニッシン製片押し2ポットキャリパーに270mm径シングルディスクの組合せで、操作性制動力とも良好な作動性を確保。DR-Z4S用のABS機構は、スズキ市販車初の前後ABSオフモードを装備。KYB製倒立フロントフォークは伸圧減衰力調整機構付きで280mmのストローク。
【リヤホイール】

■18インチの後輪にセットされるブレーキは240mmディスク片押し1ポットキャリパーの組合せで、コントロールしやすい制動力を確保。ホイールトラベル296mmのリヤサスペンションはプリロード、伸圧調整機構付き。なお、前後タイヤはオン/オフでのバランスのよいグリップ性のIRC製GP-410。
【ドライブチェーン】

■オフロードモデルらしく、ハードなライディングでのチェーンの暴れにも対応すべく、スイングアーム上側と下側にチェーンガード&ガイドを装備。しかし、個人的には加速時のチェーンの踊る音の発生が気になった。暴れ自体を抑えるのは無理だろうが、自分がもしオーナーとなったら、チェーンラインに硬質樹脂ないし硬質ゴム製など何らかのガイド的なものをさらに付加して、音を抑制したいという印象を持った。
【シフトペダル】

■試乗車は走行350km程度だったため、作動は少し堅めだったものの、ストロークは短く節度は良好だったチェンジペダル。脱着可能なラバー付きステップも、オンオフ両用に対応した良心的な仕様。
【4Sに標準装着のローシート】

■取り回し時のハードルが高くなりすぎないように、日本仕様で標準装備となるのはローシート。1日150kmほどの走行で尻の痛みを感じることはなく、前後の自由度も比較的高めで好印象だった。
【テール周り】

■リヤシートからテールカウルにかけてはフラットで荷物も積載しやすい印象ながら、この状態で荷掛けコードを引っ掛けられる箇所はほぼない。積載を求めるならば純正アクセサリーを含む、キャリヤの装着が必要。テール左横にある円筒型の部分は工具入れではなく、燃料の大気開放を抑制するキャニスターだ。
【工具&収納スペース】

■左側サイドカバー部には、キーロック付きの工具収納兼書類スペースがあるが、浅いスペースで厚みのあるものは収納不可。
DR-Z4S/DR-Z4SM主要諸元
※< >はDR-Z4SM
■エンジン 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク90×62.6mm 排気量398cc 圧縮比11.1 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力28kW(38ps)/8000rpm 最大トルク37Nm(3.8kgm)/6500rpm 燃費27.7<28.8>km/L(WMTCモード値)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.285 2速1.733 3速1.375 4速1.090 5速0.863 一次減速比2.960 二次減速比2.866<2.733>
■寸法・重量 全長2270<2195> 全幅885 全高1230<1190> 軸距1465 シート高890(各mm) キャスター26°30′ トレール95mm タイヤF80/100-21 M/C 51P<120/70R17 M/C 58H> R120/80-18 62P<140/70R17 M/C 66H> 車両重量151<154>kg
■容量 燃料タンク8.7L エンジンオイル1.9L
■車体色 チャンピオンイエローNo.2/ソリッドスペシャルホワイトNo.2、ソリッドアイアングレー<スカイグレー、ソリッドスペシャルホワイトNo.2>
■価格 119万9000円

レポート●モーサイ編集部・阪本一史 写真●モーサイ編集部、スズキ
スズキ
TEL0120-402-253(お客様相談室)
https://www1.suzuki.co.jp/motor/





































