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スズキの原付電動モペッド「e-po」開発者インタビュー「アシストされるのではなく、モーターに人力を足す」という逆転(!?)の発想

生粋のエンジン屋だからたどり着いた原付の最適解

パナソニック電動アシスト自転車のコアユニットを利用して、スズキが原付一種の電動モペッド「e-PO(イーポ)」を絶賛開発中だ。現時点では公道走行調査を進めている段階ではあるが、先日プロトタイプに試乗してみた印象では、いつ量産されてもおかしくなく、また価格次第では十分な商品性がある仕上がりになっていた。

排ガス規制やカーボンニュートラルといったモビリティに対する環境ニーズが高まっている中で、スズキは「e-PO」をなぜ生み出したのか。そして原付一種の規格で開発している背景は? どのようなユーザーを想定しているのか?

そうした疑問を「e-PO」のチーフエンジニアである福井大介さん(二輪事業本部二輪営業・商品部)にガッツリぶつけてみた。果たして、原付一種とした電動モペッドにニーズはあるのだろうか。

e-Po スズキ パナソニック
実際に原付一種の登録を行い、公道走行調査を行っているスズキ「e-PO」。サイズ感は小径ホイールの折りたたみ式自転車そのもので、全長1531mm、全幅550mm、全高990mm。車重は約23kg
e-Po スズキ モーター パナソニック
モーター(ドライブユニット)はパナソニックサイクルテック製の電動アシスト自転車用。ただしアシスト走行時のアシスト力を強化するなど制御は変更されている。定格出力は0.25kW
e-Po スズキ バッテリー パナソニック
バッテリーもパナソニックサイクルテック製の電動アシスト自転車用を使用。容量25.2V-16Ah、重量約2.5kg。約5時間で満充電となる

──まずは福井さんのプロフィールから教えてください。

スズキ株式会社 二輪事業本部 二輪営業・商品部 チーフエンジニアの福井大介さん

福井●2005年にスズキへ入社し、2024年チーフエンジニアになる前は、エンジンの燃焼効率を主に研究していました。また、子どもを電動アシスト自転車に乗せて、保育園に預けてから出社するといった日々も送っています。つまり、リアルな電動アシスト自転車ユーザーのひとりでもあります。

──電動アシスト自転車の利便性を体感されているにも関わらず、あえて「e-PO」を原付一種の電動モペッドとして開発した理由はなんでしょうか。

福井●いま現在、原付一種というカテゴリーは変革期の真っ最中にあるといえます。その中で、カーボンニュートラルの実現というテーマと原付一種に求められるコスト感を考えたときに、電動モペッドはひとつの解になると考えました。

──原付一種のEVバイクといえば電動スクーターが主流ですが、それらはコスト面でのユーザー負担が大きくなってしまうということでしょうか。

福井●そうです、エンジン車の原付一種と同じ価格帯でカーボンニュートラルの原付一種相当モビリティを生み出す必要があると考えました。たしかに電動アシスト自転車や、昨年生まれた特定小型原付といったカテゴリーもありますが、原付一種から乗り換えるのであれば、法定速度30km/hを出せないと満足いかないでしょうから。

e-Po スズキ
クローズドコースで「e-PO」に試乗した筆者。モーター走行だけでも原付の法定上限速度30km/hにスッと達し、そこから足で漕いでいくとメーター読みで40km/hに乗せることができた

──現時点、公道走行調査用のプロトタイプということで価格や販売の可否については公表されていませんが、もし売るとなれば手頃な価格で原付一種の走りができるゼロエミッションモビリティを目指したというわけですね。

福井●ご存知のように電動モビリティではバッテリーが大きなコスト要因となります。最小限のバッテリーで原付一種の走りを実現、さらに実用的な航続性能を満たすためにはどうすればいいのか……と考えた結論が「モーターを人力でアシストすればいい」というものでした。

「e-PO」はスロットルをひねることでモーターだけで走る電動モードもありますが、ペダルを漕ぐことで電力と人力を合わせて走ることもできます。さらにいえば、人力だけでも走ることができます。

──モーターと人力のハイブリッドパワートレインということですね。それは電動アシスト自転車とはどのように違うのでしょうか。

福井●電動アシスト自転車は、ペダルを漕ぐ力をモーターが補助するというスタンスだと考えますが、「e-PO」のパワーユニットではモーターを人力でアシストするというアプローチなのが大きな違いです。

先程お伝えしたように私は長年、燃焼効率の研究をしてきました。そこで鍛えた「最大限に効率的なパワーユニットを生み出す」という視点から思いついたのが、小さなバッテリーであっても、モーター(電力)にペダル(人力)を併用することで原付一種としてのパフォーマンスを実現できるというものだったのです。

──電動モーターを人がアシストするというのは新しい発想ですね。折りたたみ式のフレームを採用したというのは、どのような理由でしょうか。

福井●モペッドというスタイルを活かすには駐車のしやすさが重要であろうと考えます。また、「e-PO」の開発を進める上で想定したユーザー像を都市部のビジネスマンとしたのですが、都市部では駐輪場が少ないという課題もあります。折りたたみ式であれば自宅に持ち帰って玄関にしまっておくなど、セキュリティ面でのアドバンテージもあるといえます。

折りたたんだ状態の「e-PO」(この写真の車両はジャパンモビリティショー出品時のコンセプトモデル)

──軽自動車のラゲッジスペースに収まるデモ展示も拝見しましたが、レジャーを含めて6輪生活というのは楽しそうで夢が広がります。実際に試乗しても、原付一種として楽しめる電動モビリティになっていることが確認できました。市販はいつ頃になるでしょうか。

福井●公表しているように「e-PO」ではパナソニックサイクルテック製のドライブユニットや交換型バッテリーを使っています。つまり量産するには両社の話し合いで次のフェイズに進むことが必要になります。とはいえ、プロトタイプで終わらせるつもりはありません。公道走行調査などで明らかになった課題をクリアしつつ、新しい原付一種の乗り物としてお届けできるよう、進めていきますので、ご期待ください。

折りたたんだ「e-PO」をスズキの軽自動車・スペーシアに積み込んだ図。ガソリン漏れなどを心配する必要がないEVなので、(固定さえできれば)横倒しにして積むことだってできる

スズキ e-PO主要諸元(公道走行テスト車)

【モーター・性能】
種類:直流ブラシレスモーター 定格出力:0.25kW 変速機:外装7段

【バッテリー】
種類:リチウムイオンバッテリー(パナソニックサイクルテック製NKY594B02) 容量:25.2V-16Ah 重量:約2.5kg

【寸法・重量】
全長:1531 全幅:550 全高:990 ホイールベース:1044 シート高:780〜955 最低地上高:173(各mm) 車両重量:23kg タイヤサイズ:フロント18-2.125  リヤ20-2.125

e-Po スズキ パナソニック

レポート●山本晋也 写真●北村誠一郎/スズキ 編集●上野茂岐

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