雑ネタ

相手車両にぶつけた自覚がない場合は「当て逃げ」にならない? 弁護士さんに聞いてみた

2021年11月、木下富美子元都議会議員が選挙期間中に無免許運転で当て逃げ事故を起こした不祥事が大きく報道されました。この当て逃げ事故によって、木下富美子元都議は最終的に辞職することとなりましたが、記者会見の際に木下富美子元都議は「私としては当て逃げという認識はなかった」と答えていました。

「当て逃げ」とは車両同士の接触などで物損事故を起こしたにも関わらず、警察に報告することなくそのまま走り去ってしまう行為を指します。
しかし、相手車両にぶつけた事実に気付かず、あとで自分のクルマに傷が付いていることを知って罪悪感から警察にその経緯を話した……もしくはドライブレコーダーなどによる証拠で相手から指摘された……そんな場合、運転者は「当て逃げ」となるのでしょうか?

百歩譲ってすり傷のような接触があっても、ぶつけた衝撃も弱いでしょうし「気付かなかった」という言い分であれば無罪になる可能性もある気がします。
そこで刑事事件や交通事故に詳しい坂口 靖弁護士に話を伺いました。


当て逃げは相手の車両やナンバーを特定することが大切

──まず基本的に、当て逃げ被害に遭った場合、相手に修理費用などを請求することはできるのでしょうか?

相手の過失によって生じた物損被害であれば、当然加害者である相手に対し修理費用等の損害賠償請求はできます。
しかし、いわゆる当て逃げの場合、相手がどこの誰だかわからないという理由もあって泣き寝入りせざるを得ないケースが非常に多いです。
したがって、当て逃げ事故においても相手の車両やナンバーなどを特定することが極めて重要です。

ただし、当て逃げ被害にあったとしてもその事故の責任は100%当て逃げをした側の責任になるわけではありません。あくまで過失割合は一般的な交通事故同様に状況に応じて決められるので、その点は注意が必要です。

相手車両にぶつけた自覚がないまま走り去った場合はどうなる?

──もし相手車両にぶつけた自覚がないまま走り去ったあと、ドラレコなどで当てた事実が発覚する。もしくは加害者自らが罪を自白した場合は「当て逃げ」ということになるのでしょうか?

まず、当て逃げというのは道路交通法における「報告義務違反」(道路交通法72条、119条10号)という犯罪が成立する可能性(3月以下の懲役または5万円以下の罰金)があります。

ですが「衝突した事実に気付かなかった」というケースであれば「報告義務の前提となる事故の発生を認識していなかった」ことになりますので、この犯罪は成立しません。
とはいえ「なぜ気付けなかったのか」など具体的な内容については当事者同士では分かりませんので、その場合は警察による捜査対象となり、事情聴取等を受ける可能性は否定できません。

ただし、車両やナンバーを特定し相手も当たった事実を認めているのであれば、証拠がなくても修理費用を請求することは出来ます。
しかし、過失割合について争いが生じたり、そもそも相手を特定する必要があることから証拠がないと損害賠償金を受け取ることがほとんど難しいでしょう。

──もし当て逃げ被害にあったとき、相手に修理費用を請求するためにも具体的にどのような行動・対策を取ればいいのでしょうか?

先ほど言ったように当て逃げ事故の場合、最も重要なことは当て逃げをした人物の特徴、車両のナンバーなどを特定する点にあります。
したがって、事前にできる対策としては証拠確保の観点から「ドライブレコーダーを取り付ける」ことは極めて重要です。

仮にドライブレコーダーを取り付けていない場合であっても、近くにいる運転手等に「ドライブレコーダーを搭載していないか確認する」という特定方法もあります。
特にトラックやタクシー等の営業車においては、ドライブレコーダーを搭載していることも多いので、勇気をもって近くにいるドライバーに確認してみるのも良いかもしれません。

駐車場やコンビニなどで起きた事故のケースでは、駐車場の管理者に防犯カメラの確認を頼んでみることも考えられます。
しかし、駐車場や商業施設等の防犯カメラ映像は一般の方に対しては開示しないケースが多いため、その映像を削除せずに「データの保管をしておくように依頼すること」もひとつの手段です。

そのほかには、警察に被害届を提出しておくことも大切です。これは相手が刑事処罰を回避したい考えから交渉等においても有利に働く可能性が高まりますし、自分の車両にぶつけた人が特定できなかった場合でも、警察が犯人を特定してくれる可能性も十分あり得るからです。

最後に、任意保険の弁護士特約にも加入しておくこともオススメします。なぜなら少額の損害賠償請求事案の場合、相手が任意の賠償に応じないときに弁護士に頼むと依頼費用が損害賠償金よりも上回ってしまい、泣き寝入りとなってしまうことも想定されるからです。
そのため、任意保険の弁護士特約に入っていれば弁護士に依頼する費用をある程度確保することができるでしょう。

監修●坂口 靖 まとめ●モーサイ編集部・小泉元暉

プロフィール

■坂口 靖(さかぐち やすし)

大学卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」などのラジオ番組制作業務に従事。28歳のとき弁護士を目指し、3年の期間を経て旧司法試験に合格。
1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当する。
以後、弁護士としてさまざまな刑事事件に携わり、YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」でも活動中。

事務所名:佐野総合法律事務所

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