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バイクの「騒音規制の上限値」はクルマと比べて緩い
四輪車にハイブリッドなどの電動化トレンドが訪れて久しい。そうした影響もあるのか、バイクに乗っていると「二輪はうるさいね」と指摘されることも多いような気がする。はたしてバイクは本当に四輪の自動車よりうるさいのだろうか。
古いモデルの話をしだすと切りがなく、また今後どんどん厳しくなる騒音規制の話をしてもナンセンスだろう。というわけで、いま売っているモデルの走行騒音規制値を簡単にまとめてみると次のようになる。
●二輪
クラス1(PMR※25以下):73dB
クラス2(PMR25〜50以下):74dB
クラス3(PMR50以上):77dB
※PMR=最高出力(kW)/(車両重量〈kg〉+75kg)×1000
クラス1~2は小排気量クラスなので、いわゆる世間で「バイク」と認識されるのはクラス3といえる。つまり、バイクがうるさいという印象につながる市街地加速騒音規制は77dBという風に考えることができる。
一方、四輪ではどうなっているのだろうか。乗用車についていうと最高出力と車両重量によって、いくつかのクラスにわけられるが、その騒音規制値は70~74dBとなっている。
3dBの違いというと、音圧でいうと感覚的には2倍弱くらいの違いとなるので、たしかに規制値の違いによってバイクのほうがうるさいと一般に感じるのは理解できる。

バイクとクルマでは、使っている回転数の領域が異なる
このあたりの規制の緩さというのは、バイクのボディサイズや構造から四輪よりもサイレンサーを大きくすることが難しいというのもあるだろう。また小排気量になるほど高回転を使わざるを得ないという事情も考慮されているはずだ。
実際、125ccクラスの小排気量バイクでいうと、最高出力の発生回転が9000rpmあたりだとして、レブリミット付近まで日常的にエンジンを回すことが多い。しかし、四輪ではローパワーな軽自動車であっても加速のたびにレッドゾーンまで回すなんてことはほとんどない。
そして排気量にかかわらず、バイクというのは高いエンジン回転域を使う傾向にある。実際、同じような排気量のバイクと四輪を比べてみると、そうした違いは明らかに感じられる。
軽自動車の有名所といえばホンダN-BOXだろう。660ccの自然吸気エンジンにCVTを組み合わせたN-BOXは、100km/h巡行を3000rpm程度でこなしてしまう。スペックでいうと58ps/7300rpmなので、かなり余裕をもったギア比になっている。
一方、同じホンダで650ccエンジンのスポーツモデルであるCBR650Rの100km/h巡行は6速でも5000rpm近い。
最高出力95ps/12000rpmというのはバイクとしてみるとおとなしめだが、四輪と比べると圧倒的に高回転エンジンである。1速でもレブリミット近くまで回せば80km/hほどに達するし、5速で100km/h巡行しようと思うと6000rpmあたりまで回す必要がある。
当然、街中を走るときでもN-BOXと同じような排気量であっても、CBR650Rは高回転域まで回すことになる。エンジン回転数が高ければ、排気音量も大きくなるため「バイクはうるさい」という印象を生むことになるのだ。


バイクはエンジンや駆動系がむき出しなのも、消音性能の面で不利
さらにいえば、バイクはエンジンや駆動系(チェーン)がむき出しになっているため、排気音以外のメカニカルノイズもダイレクトに周囲に届きがちだ。
騒音というほどではないが、マニュアルトランスミッションの四輪車で1速に入れたときの音が聞こえてくることはないが、バイクであればローに入れたときのガチャという音は信号待ちの歩行者にまで届くことだろう。
このようにノイズの発生源をほとんどカバーしていないことは、バイクがうるさいという一般のイメージに大いに影響しているはずだ。

排気音やメカニカルノイズの「音質」や「周波数」の違いも影響
さらに高回転までエンジンを回すということは、排気音やメカニカルノイズが高周波よりになりやすい。周波数が高いほど耳につく傾向にあるため、それもバイクがうるさいというイメージにつながっているといえる。
さらに、あくまで筆者の印象であるが、四輪のドライバーよりも、バイクに乗るライダーのほうがアグレッシブな発進加速をしている人が多いように感じる。
CVTが主流の日本車と、まだまだMTが中心のバイクという違いもあるのだろうが、四輪ではクリープ現象を利用しつつてスーッと加速しているのに対して、バイクは回転をあげてスパッと加速しているのが目立つ。
鋭い加速は、高回転でのクラッチミートとニアリーイコールであり、うるささに直結する。すべてのライダーがそうしているとは言わないが、一部であっても急加速するライダーが目立っていると、バイク全般が「うるさい乗り物」と認識されてしまうのは仕方がないのかもしれない。
レポート●山本晋也 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実