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元警察官が体験を交え「よくある言い訳・言い逃れ」7つを紹介
交通違反をして取り締まりを受けると「あぁ、チクショウ!」と悔しい気分になるものです。警察官に声をかけられると、やっぱり言い訳や文句のひとつもしたくなるでしょう。状況次第ですが、そこでしっかり効果的な説明や反論ができれば「今日のところはもういいから、次から気を付けて」と指導で済まされる可能性もあります。
取り締まりに不服があれば声を大にして主張するべきですが、以下に挙げる「よくある言い訳・言い逃れのセリフ」は残念ながらほぼ通用しません。実際の交通取り締まりの場面でよく遭遇していた言い訳・言い逃れのセリフを紹介します。
「オレだけじゃなくて違反者すべて止めろよ」型……よくあるセリフその1
違反を見つけて停止してもらい、窓を開けてもらって違反の説明をしていると「じゃあ、あの車も、あっ、あの車も!同じ違反してるじゃんかッ、オレだけじゃなくてあっちも切符を切れよ!」と言う方はかなり多いんです。
たしかに、そんな状況だと「自分だけ違反処理されて不公平だ」と感じるはずなので気持ちはわかるんですが、それでも自分が違反したことには変わりはないですよね。
「そうですね、取り締まりを強化します!」なんて返されるだけで終わります。
「今日はたまたま」型……よくあるセリフその2
シートベルトの取り締まりでよく遭遇していたのが「いつもはちゃんと着けてるんだけど、今日はたまたま忘れちゃったんです」というもの。
本当にいつもはしっかり守っていたのか、はたまたウソなのかはわからないわけですが、まさにシートベルトを装着し忘れたときに事故に遭えば大変なことになります。自分が気を付けていても、後続車から追突されてしまえばシートベルトなしだとフロントガラスに頭をぶつけて大ケガをしてしまうでしょう。
取り締まりにしても、事故にしても「なぜこのタイミングで……」という運の悪さが重なるものだと覚えておいてください。
「はじめて通る道だった」型……よくあるセリフその3
一時停止や一方通行の取り締まりに多いのが「今日はじめて通る道だったから規制がわからなかった」というセリフです。
たしかに、通り慣れていない道路は規制がわかりにくいものなので、知らないうちに違反を犯してしまうケースも少なくありません。しかし、はじめて通るドライバーでも規制がわかるように日本全国で同じ標識・標示を使っているのだから、そんな言い訳をしてもムダです。
ここで覚えておきたいのが、実際に標識や標示が見えなかった、あるいは見えにくかったとき。たとえば、街路樹が生い茂っていて標識が隠れていたとか、標示が薄くなって見えにくかったといったケースでは、違反が取り消される可能性があります。
少しでも時間が経ってしまうと状況が変わってしまい、「当時はどうなっていたの?」となってしまうので、その場で標識・標示が見えにくいという状況をスマホで撮影しておきましょう。
「ちょっとくらい大目にみてよ」型……よくあるセリフその4
いろいろな違反で遭遇するのが「ちょっとくらいいいじゃんか、大目にみてよ」という言い訳です。
たとえばシートベルト未装着の違反なら「ついさっき出発したばっかで、まだ100mくらいしか走ってないし!」とか、一時停止なら「ピタっと止まらなかったけど、徐行したしまわりにクルマも人もいなかったから危なくないじゃん!」なんてセリフが典型でしょう。
警察には交通取り締まりをする際、道路交通法などの法律をベースに「ここまでは大目にみるけど、ここからは違反として処理します」という基準があります。警察官に停止を求められて切符処理されているということは、つまり「基準を超えている」という意味なので、大目にみてはくれません。
「警察も悪いことしてるじゃん」型……よくあるセリフその5
おとなしく切符処理を受けるとしても、せっかくの機会だしイヤミのひとつも言ってやろうと思うのも理解できます。非常に多いのが「警察だって盗撮とか痴漢とかでよく捕まってるじゃん、交通違反くらい大した悪いことじゃないでしょ?」というセリフ。
たしかに、盗撮・痴漢・窃盗などなど、犯罪を取り締まる側が罪を犯しているなんてとんでもない不祥事だから、強く批判されるのは当然です。
でも、それと交通取り締まりは別の問題ですよね。
「一部の不良警察官のせいでボクたちも困ってるんです」なんてはにかみながらスラスラと切符処理されてしまいます。
「オレを誰だと思っているんだ」型……よくあるセリフその6
非常にやりづらいのが「オレを誰だと思っているんだ」というセリフです。
本当に誰なのかわからないときは「失礼ですがどなたなのか存じ上げないので、免許証を見せてもらっていいですか?」と冷静に返すしかありません。
実際にあったのは地方議員・地域の有名企業の社長・プロのスポーツ選手などですが、一度は顔をみたことがあっても取り締まりの現場では「誰だっけ?」って思い出せないものです。
もちろん、たとえ有名人でもそんなことを理由に「ご苦労さまです!止めてしまって失礼しました!」なんてことにはなりません。
「警察幹部に知り合いがいる」型……よくあるセリフその7
取り締まりを受けたときの言い訳・言い逃れでもっともダメなセリフが「警察幹部に知り合いがいるんだけど」型です。
実際に私が経験したのは初老の女性。
「ワタシ、元〇〇警察署の署長だった△△の家内なんですけど!主人に頼んであなたなんかクビにしてもらうわよ!」
もちろん、ご婦人にそんな権限はないし、そんな言い逃れは通用しません。
ほかにも「ウチの親族に警察官がいるんですけど」とか「友だちが警察官なんだけど」などのパターンがありますが「あぁ、あの人の関係者なんですね!」と笑いながら切符を切られます。
もちろん、元刑事のワタシでも容赦なく処理されるでしょう……。
「はいはい、いくら欲しいの?」型……番外編
実際の現場で遭遇して驚いたのが「はいはい、いくら欲しいの?」と袖の下(つまりワイロ)を渡そうとした人です。
詳しい情報は伏せますが、違反者はとある近隣国からの留学生でした。違反をみつけて停止させたところ、「はぁ……」と深くため息。すぐに「はいはい」とすべてを理解したような顔で財布を取り出し、「で、いくら欲しいの?」とお札を数枚取り出しました。
反則金をその場で納付するのだと勘違いしている人も多いんですが、この人の場合は「あなたたちも大変だよね、これで美味しいものでも食べてよ」なんて片言の日本語で話してたから、明らかに勘違いじゃないんですよね。
当然、そんなものは受け取れないですし、その人は一時停止の違反に加えて無車検・無保険だったので、切符処理では済まない事態になりました。
警察官は言い訳・言い逃れに慣れている
交通取り締まりに従事している警察官は、言い訳・言い逃れをする人に慣れています。
もちろん、違反をしていないのに「違反だ」と停止させられた、標識や標示が見えにくかったなどの状況があれば遠慮なく抗戦しても構いません。でも「ごね得」は許してくれないから、違反が事実なら切符処理されます。
文句を言っても見逃してくれないなら、さっさと切符を書いてもらって早々に解放してもらったほうがスマートですよね。
レポート●鷹橋 公宣 写真●モーサイ編集部
元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。