コラム

「スピード違反を助長する論はナンセンス」スピードメーターに法定速度以上の目盛りがある理由

アナログスピードメーターは感覚的に速度を把握しやすい

どんなにシンプルなメーターのバイクやクルマであっても、絶対に必要なのがスピードメーター(速度計)です。最近では多機能かつ多彩な表現のできる液晶ディスプレイタイプも増えてきていますが、相変わらず速度の書かれた文字盤を針が動くタイプも根強く使われています。

針が動く、指針式メーターの利点は針の角度で大まかな数値を把握できること。極論するとデジタルで60と80を見間違えることはあっても、指針式であれば60と80の位置は異なりますから、そうした見間違えは起きづらいといえます。

スピードメーターの上限(スケール)というのは、こうした見やすさを考慮して決められている部分もあります。

液晶メーターの採用が進み、スピードをデジタル表記するモデルが増えています。写真はホンダCBR250RRのメーター。
ホンダ NT1100に採用されているTFTフルカラー液晶など、走行モードによって表示する情報が変わるものや、タッチパネルで操作できるものなど、より進化したメーターも多く見られるようになりました。
デジタル化が進む一方、アナログ表示のスピードメーターも根強く残っています。写真はカワサキ W800。

常用速度がメーターの真ん中にあったほうが見やすい

たとえば、排気量50cc以下の原付バイクではほとんどのモデルでスピードメーターの上限が60km/hになっています。法律上、公道で出せる最高速は30km/hですから、それ以上の目盛りを切っておく意味がないと思ってしまうかもしれませんが、メーターの中ほどがターゲット速度になっているほうが見やすいのです。

もし表示できる上限も30km/hの文字盤にすると、法定速度上限の30km/h程度で走行している際に針の位置が端に偏って見えづらくなります。また、推奨できる話ではありませんが、スピードオーバーをしたとしても、30km/h以上はメーターに表示されなくなるため、超過しているのが5km/hなのか10km/hなのか、はたまた30km/hなのかもわかりません。

基本的に高速道路や自動車専用道路を走れない原付二種は、公道では60km/hが上限速度となりますが、それでも100km/hを超えるメーターとなっているのは同様の理由です。

公道走行を前提とした400ccクラスのバイクにおいて、スピードメーターの上限が180km/hとなっているのも同じような理由といえるでしょう。

四輪でいえば、日本車では180km/hの上限となっていることがスタンダードといえます。ちなみに、ほとんどの軽自動車は140km/hとなっていますがターボ仕様はともかくNAエンジンの軽自動車では、クルマの実力(性能上の最高速)とスピードメーターの上限がほぼリンクしているという見方もできます。

原付(50cc以下)のスピードメーターは60km/hまで表示できる仕様になっていることが多いです。写真はホンダ ジョルノ。
四輪の日本車に関しては、180km/hまで表示できるモデルが多くなっています。
軽自動車の場合は、140km/hまで表示できる車両が多くなっています。

300km/h超えのメーター上限は「ステイタス」!?

一方で、グローバルモデルでは二輪・四輪を問わず300km/hを超えるようなスピードメーターを持つモデルもあります。実用的な意味はほとんどないといえますが、300km/hまでスピードメーターが刻んであるということがブランドにつながるからというのが、その理由でしょう。

メーター上限によってパフォーマンスへ期待を集めるというのは、1970年代のスーパーカー・ブームの頃から不変の手法といえます。二輪でいえば、メガスポーツ系は、そうした伝統に則っていることを求められるカテゴリーといえるでしょう。

1999年に登場したスズキ GSX1300R ハヤブサのメーター。340km/hまで表示することができます。写真は1999年『モーターサイクリスト4月号』「ハヤブサ全方位テスト」のもの。

スピードメーターの上限=そのバイクの最高速とは言えない

基本的にはイメージとしてのフルスケールメーターですから、スピードメーターが320km/hまで刻まれているからといって、その速度が確実に出るとメーカーが保証しているわけではありません。逆に、リッタークラスのスーパースポーツでは、メーター自体は299km/hまでしか表示できないのに実測では300km/hを超えるモデルも珍しくありません。

そもそもレーダーやGPSでの計測値を比べると、スピードメーターの表示はかなりズレています。それも実際より高めに表示するようになっています。これはオーバースピードによる危険運転を防ぐという意味もあります。

そもそもタイヤに回転によって速度を計測している場合、新品タイヤの外径で適切な速度表示なるように設計していると、タイヤが摩耗して外径が小さくなると実際よりも高い速度を表示するようになります。

法定速度は不変ではない

2022年6月現在日本国内の公道でもっとも速度上限が高いのは、新東名高速道路一部区間の120km/hとなっています。

さて、このようにスピードメーターの話をしていると、必ずといっていいほど「法律で認められていない速度まで表示するのは、スピード違反を助長しているのでは」という指摘が出てきます。

しかし、先に述べたようにスピードメーターの表示上限=法定速度上限としてしまうと、メーターの針はそれ以上動かないのに車両のスピードだけは上がっているという現象が起こり、実際にはその車両が何km/hで走っているのか分からなくなります。これではスピードメーターが計器としての意味を持たなくなってしまいます。
仮に法定速度以上で絶対に車両を走れないようにするのであれば、リミッターを車両につけるのが先でしょう。スピードメーターの表示上限とは話が変わってきます。

また、法定速度というのは不変ではありません。

実際、高速道路での最高速が120km/hとされている区間は増えていますが、ちょっと前までは全国的に100km/hがリミットでした。また、かつてはバイクの高速道路における上限速度は80km/hでしたが、2000年に100km/hに変更されています。
もし、日本国内での最高速が100km/hだった時代に、それに合わせてスピードメーターの表示上限を決めていたら、このような法改正に対応できません。生産時の法規制とスピードメーターのスケールをリンクさせることは、民主主義の法治国家においてはナンセンスといえるのです。

レポート●山本晋也 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

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