バイクライフ

日本最高峰の市販車ベースレース!「JSB1000」のマシンってどうなっているの?

Japanのスーパーバイクだから「JSB」

日本のロードレースの最高峰に君臨するカテゴリーが「JSB1000」。そもそもこのJSB1000ってナニ?というお話です。

JSBの「J」は、Japan(Japanese)の頭文字、SBはスーパーバイクの略で、日本のスーパーバイクという意味。スーパーバイクの最高峰は、ご存知「スーパーバイク世界選手権」で、WSBKやSBKと略されることが多いけれど、JSB1000はその日本国内版というわけです。

日本以外の国でも、たとえば高橋 巧選手や水野 涼選手が出場しているイギリスのスーパーバイク(ブリティッシュスーパーバイク=BSB)や、浦本修充選手が出場しているスペインのスーパーバイク(エスパーニャスーパーバイク=ESB)など、その国に合わせたマシンレギュレーションで独自開催されています。

JSB1000に出場するヤマハファクトリーレーシングチーム・中須賀 克行選手のYZF-R1。
「普通に売っているYZF-R1」。こうして比較すると市販車がベースになっているのが良く分かります。

マシンの詳しいレギュレーションを列挙・解説していくと一冊の本が完成してしまうので、ここではかいつまんでの紹介。
スーパーバイクマシンは、一般に市販されるバイクを、レース仕様に昇華させたマシン。フレームの変更は認められず、外観シルエットも市販状態を維持するのが基本となります。

2022年、新型BMW M1000RRでJSB1000に出場する関口太郎選手は、納車されたエンジンの慣らしを高速道路でこなしたという話もあるほど。

中須賀 克行選手のYZF-R1(ヤマハファクトリーレーシングチーム)。ヘッドライトの部分をよ〜く見てください。実は本物じゃなくて……ヘッドライトそっくりのイラスト。
濱原颯道選手のCBR1000RR-Rファイアブレード(ホンダドリームRT桜井ホンダ)。鈴鹿8耐では本物のヘッドライトを装着しますが、全日本ロードレース JSB1000はお昼のレースのみ。ですが、ヘッドライトを描くことで市販車のイメージを盛り込んでいます。
JSB1000に出場する関口太郎選手(サンメイチームタロウプラスワン)のBMW M1000RR。一度ナンバーを取得して公道で慣らし運転の後で、レース仕様に変更。スーパーバイクならではのエピソード。

レーシングマシンだからって「何でもアリ」ではない

外観から分かる部分での違いで言うと、フロントフォークやスイングアームの変更はOKですが、スイングアームに関する規則記述では「カーボンファイバーまたはケブラー材質の使用は、車両公認時に装着されている場合を除いて許可されない」。

たとえばMotoGPマシンは、レースを戦うためにゼロ段階から設計されていて、ライダーの要望で新しいパーツを作って装着することができるので、カーボンファイバーのスイングアームも問題なく使用できますが、スーパーバイクでは、それを装着した一般市販バイクのリリースを待つしかないということになります。

極論だけれど、マシンの戦闘力を高めるための開発能力が必要なのがMotoGPライダーで、マシンの特性に合わせてライディングを突き詰めていくのがスーパーバイクライダーとも言えます。

サスペンション、ブレーキシステム(ABS無し)、ホイールはレース用に変更。ファクトリーチームは高価なスペシャルパーツを使用することも。
JSB1000はレース用のスリックタイヤを使用。タイヤを覆うのはタイヤウォーマー(高機能な電気毛布的なもの)。ホイール全体を高温にするのですが、その温度管理は厳密。スターティンググリッドへ持って行くときは、ヤマハ製の発電機でスタート直前まで温めます。

ヨシムラスズキライドウィンの渡辺一樹選手のマシンを見ると、クラッチ側に短いレバーが追加されていますが、これはリヤのブレーキレバー。
旋回でのキッカケ出しや後輪の制御などにリアブレーキを使うが、フルバンク中だとフットブレーキは使いにくい……それを補うリヤブレーキレバーなのですが、1992年のオランダGPで大クラッシュし、右足首の稼働が悪くなったミック・ドゥーハン選手のNSR500に取り付けられたサム(親指)ブレーキが起源です。

渡辺一樹選手のGSX-R1000R(ヨシムラスズキライドウィン)。左手側にはクラッチレバーとリヤブレーキを操作できるレバーと、2本のレバーがあります。市販車と違うスイッチはピットレーンの速度制限やトラクションコントロールのモード変更用。

また、フロントのブレーキキャリパーは、ディスクが抜けると左右に開くようになっています。これはタイヤ交換を容易にするためで、前後のタイヤ交換を5秒前後で終わらせる鈴鹿8耐では必須となるシステム。

鈴鹿8耐に向けた最終調整ともなるスポーツランドSUGO戦

さて、JSB1000マシンは、来たる鈴鹿8耐のベースマシンでもあります。
だからJSB1000を戦いながら鈴鹿8耐用にマシンを仕上げていくのがセオリー。特に鈴鹿8耐前の最後の全日本ロードレースとなるスポーツランドSUGO(6月4日〜5日)は、マシンの最終的な方向性を決めるための重要な一戦となります。
そしてSUGOでの戦いを終えると、各チームは一気に鈴鹿8耐モードに突入していくのです。

市販車のフロントホイール脱着は作業が多く時間がかかってしまいます。そこでJSB1000用マシンでは、ホイールをガイド(赤と緑の部分)にセットすると、ブレーキローターがキャリパーに収まり、後はアクスルと入れるだけ……という仕組みとなっています。
リヤはアクスルナットがレース用スインアーム内に残るタイプ。これで前後タイヤ交換が約5秒で終了。

レポート●佐久間光政 写真●柴田直行/ヤマハ 編集●上野茂岐

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