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■タイトル写真:優勝候補の有力ライダー、ピーター・ヒックマン選手の練習走行。同選手は、スーパーバイクTTとスーパーストックTTでBMW M1000RRを走らせる。
世界一過酷で危険なレースといわれるマン島TT(Isle Of Man Tourist Trophy=IOMTT)が今年も開幕した。まずは「マン島TTとはどんなレースなのか」と初日の速報をお伝えしよう。
マン島TTとはどんなレース?
マン島TTは1907年に始まったレースで、1周およそ60km、200を超えるコーナーを駆け抜ける公道レースだ。日本ではバイクレースというと閉鎖空間であるサーキットで行われるが、マン島TTは世界的にもまだサーキットという施設が存在しない時代に始まり、現在まで続いているレースだ。1970年代までは世界グランプリ(WGP)に組み込まれていたが、あまりにも危険なためにチャンピオンシップから外され、それからは単独開催のレースとして行われている。
公道レースは日本では馴染みがないが、イギリスをはじめとするヨーロッパではメジャーなレースだ。現地ではサーキットで行うレースを「トラックレース」、公道で行うレースを「ロードレース」と呼ぶ。
単独開催のレースといっても、参戦するレーシングマシンはFIM(国際モーターサイクリズム連盟=二輪モータースポーツを統括する国際団体)のレギュレーションに沿ったもので、スタートできるマシンは市販車がベースだ。
開催されるレースカテゴリーは5クラス
「スーパーバイクTT」は、1000cc4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツがメインで、現在はBMW M1000RRとホンダ CBR1000RR-Rが多く参戦している。改造範囲はスーパーバイク世界選手権と同じ内容で、いわばWSBKのマシンが公道を300km/hを超える最高速度で走っている。
「スーパーストックTT」は、やはり1000cc4気筒エンジン搭載車がメインだが、こちらは改造範囲が狭く、ほぼ市販状態(ストック)のマシンが出場できる。

「スーパースポーツTT」は、かつて600cc4気筒エンジン車がメインだったが、近年レギュレーションの変更によって参戦できるバイクの種類が増えた。2025年はドゥカティ パニガーレV2が優勝。ほかにもトライアンフ ストリートトリプル765RS、MVアグスタ F3 800、スズキ GSX-R750、さらにヤマハ YZF-R9も参戦でき、さながら異種格闘技のような様相だ。

「スポーツバイクTT」は、昨年まで「スーパーツインTT」と呼ばれていたクラスで、今年から改称された。メインは650ccの2気筒エンジン車だが、ヤマハ MT-07(YZF-R7)、スズキ GSX-8R、アプリリア RS660、さらに中国の新進気鋭メーカーCFモトの675SR-Rも参戦する。
これら2輪クラスのほかに「サイドカーTT」も開催される。こちらはF2と呼ばれるカテゴリーのサイドカーが参戦可能で、600cc4気筒エンジンを搭載したニーラー(レーシングサイドカー)がメインだ。バイクと比べて重い車体を加速させるため、2輪車よりも高回転域を多用するので、かなり遠方からでも甲高いエキゾーストノートが聞こえる。

2週間の長丁場を戦うマン島TT
マン島TTのレースウィークは2週間もある。はじめの1週間は練習走行と予選走行、次の1週間は決勝レースが行われる。島のメインとなる生活道路を閉鎖するため、走行日程と時間は厳密に決められている。今年は5月25日から29日までが練習と予選、5月30日から6月6日までで決勝レースが行われる。
レースウィーク初日となった5月25日は、午前に練習、午後から予選走行が予定されていた。午前10時に道路が封鎖され、10時30分から練習走行が始まった。まずはニューカマー(マン島TT初参戦のライダー)が、フライングマーシャル(コース上をバイクで走行するマーシャル)の先導で走行。続いてスーパースポーツとスポーツバイク、サイドカーと進み、スーパーバイクの順で練習走行を終えるはずだったが、ここで事故が発生。走行は赤旗中断となった。

主催者発表によれば、ライダーが観戦客を巻き込む事故が発生し、ライダー1名、観戦客8名が救急搬送された。翌日の発表ではすでにライダーを含む6名が退院したという。現場近くで観戦していた人の話では、事故はコース中盤のパーラメントスクエアと呼ばれる右へ直角に曲がるタイトコーナーの次にある緩い左コーナーで、走行中のバイクがハイサイドを起こしてコントロール不能になったという。
この赤旗で走行はおよそ3時間にわたって中断。主催者はレースの安全を向上するため原因と対策を講じるべく、この日の走行を中止し、観戦エリアを縮小する旨を発表した。

なお、マン島TTには日本から山中正之選手が参戦している。マン島TTの登竜門といわれる「マンクスGP」の2回出場を含めると、今年でマン島のレースに挑んで10回目を迎える。昨年まではカワサキER-6fをベースとしたマシンで「スーパーツインTT」に参戦してきたが、今年はイタリアのフレームビルダーであるパトン(Paton)のS1-Rにスイッチ。エンジンのベースこそER-6fでボア×ストロークは同じだが、S1-Rは生粋のレーシングマシン。もちろんホモロゲーションとして市販されているが、日本には未導入だ。
10回目にしてS1-Rを走らせた山中選手は、「エンジンも車体もぜんぜん違います。パワーはあるしハンドリングは軽いし、スピードも出る。でも乗りやすいバイクと感じました」とその印象を語った。

目標は完走。2週間のレースを無事に終えることは並大抵ではなく、それだけでもファンから称賛されることだ。マン島TTの完走者は、誰もがヒーローである。そのほかにもラップタイムの短縮や昨年よりも優れた順位を残す、自分が納得できる走りを実現することなど、レーシングライダーなら誰もが掲げる目標はあるはずだが、まずはS1-Rに慣れて、自分の課題に取り組める準備を整えたい、と続けた。
これから2週間、注目のレースや山中選手の動向など、現地からレポートするのでお楽しみに!

レポート&フォト●山下 剛


































