■狩野さんのイーハトーブ改。鉄部品にクロームをほとんど使わず、アルミを磨いた部品とステンレス材の加工品を使用。これはバイアルス?でも何か違うような?と不思議に思う方がいるかもしれない。
鏡面仕上げのアルミパーツとツヤのある塗装がおごられたトライアル車って?
バイクいじり好きの筆者・小見が、日頃から修理や改造でお世話になっている溶接会社が東京都葛飾区堀切にある。発電所の基礎ボルトや産業機器用のゴツい溶接から、二輪レーサー用のアルミフレームの修理や競技用自転車の改造まで、様々な用途や個人ユーザーの要望にも応えてくれる(有)狩野溶接工業である。
代表は狩野敏也さん。昔はRZやVTR1000でストリートをかなり走り込んだ時期もあったそうだが、トライアル車で山菜取りをするトレッキングも大好きという、昔から両刀使いなバイク乗りであった。
この“元”イーハトーブは当初、山菜取りや氏のお気に入りの那須方面をトレッキングするときに愛用していた車両だったのだが、あることを発端に徐々に手直しを図られ、今や原型が何か分からないほど変貌を遂げた。ぜひ、ご覧いただきたい。
そもそも改造のきっかけは筆者が作ってしまったのだろうか!? 埼玉県寄居町のドリーム商會さんに依頼したZZR600(私のバイク)の純正色再現タンク塗装、この仕上がりを見て狩野さんもイーハトーブを昔から好きだったバイアルスの色にしたい!と奮起。ドリーム商會の小島社長に直接依頼に出向くことになった訳だ。
出来上がったバイアルスカラーのタンクは見事な仕上がりで、映り込む直線の蛍光灯等もピシッとストレートに反射するほど美しかった。塗装のプロの作品に、削りと溶接のプロが惚れ込んだ。
こうなるともともと程度の悪くなかったイーハトーブだったが、気になる部分については近代化が始まった。狩野さん自身が空き時間に小物やキャリアを溶接で作り、エンジンに関しては不調箇所の見直しを経て最終的にTLR200のエンジンに換装。登録も軽二輪登録をきちんと実施したという熱の入りようである。
電気系統のスイッチ変更やエンジンの載せ換えには、同社で通称電気屋さんと呼ばれている同社スタッフの藤枝氏が、過去の職歴による技術を発揮したようだ。

■手直しの序盤にタンク塗装に強い希望を受け、私も狩野社長とドリーム商會へ。

■元のタンクがこのイーハトーブの純正塗装のタンクだった。狩野さんと小島社長、おふたりともマスクをしているので、コロナ渦の時期だったのが思い出される。

■塗装の名手であり、様々なバイクにも造詣の深いドリーム商會の小島社長。

■タンクが出来上がったころの仕上がりのメモ写真。フロントフェンダーは手直しする前から前オーナーがイタリア製らしいアルミフェンダーに換えてあったとのこと。

■プロテクター装着のバーは外してある通常スタイルのオフロードタイプのハンドル。ナビにも使うのでスマホホルダーがハンドルセンターにセットされる。

■新緑の木陰でこの色を見ると和むんだよなぁと、狩野さんお気に入りのグリーン。

■斜め後方から見ると塗り分けの段差が非常に少ないことと面の美しさがよく分かる。

■スマホホルダーがここにあるとメインキー操作の邪魔にならないのかと思うが、どうだろう。

■キーとスマホの干渉は、キーがここに位置するため問題は無し。小型のメーターが付く。

■ウインカーとライトのハイロー切り替えを含むスイッチは、近代風のホンダ純正へ。

■フォークのボトムケースはバフで光沢を持たせ、フェンダーは磨き過ぎない程度に抑えて微妙な差を楽しんでいる模様。アンダーブラケットに小さなウインカー。

■左右のサイドカバーは狩野さんお手製のアルミ製。微妙な凹凸を敢えて残して古いイタリア車っぽさを出した。筆者の推測だが狩野さんが本気で磨き込んで仕上げたら凹凸がほとんど無くなってしまうのは確かだろう。

■左サイドカバーは、開けると電装の点検ができるようにネジ留めされている。

■小型のMFバッテリーに換装して軽量化。ほぼメンテナンスフリーにしてある。

■125ccから200ccにエンジンを換装したので、陸運事務所で登録変更、白ナンバーになっている。ナンバーブラケットにミニステーを増設、小さなウインカーが付く。
使い勝手のよいキャリアや予備燃料ボトルホルダー、車載工具箱などを自作
キック始動の際にはステップを折り畳むのだが、家屋用ドアキャッチをフレーム側に取り付け、ステップを持ち上げるとワンタッチで固定されるようになっている。解放も、軽く戻る。普通のバイクには見られない心憎い工夫だ。
また、山菜取りで大漁?が得られたときや、土産物屋など出先で買い物をした際に使いたいのがクーラーバッグや樹脂製トランク。これを載せるため普段用のスリムなキャリアには4箇所にナットが溶接されており、より大きな拡張キャリアを追加できるようになっている。
その面精度は多数の溶接箇所があるにも関わらず、ピシッと平面が出ていて、トランクの底面はグラつかずにキャリアに取り付けられるようになっている。
工具箱も小型の四角いミリタリー調を自作し、必要最小限ながら有効な工具を中に入れてある。また、山間部で燃料切れの心配がないように予備の燃料ボトルホルダーをステンレス材で作り、トライアル車の少ないタンク容量によるガス欠の心配を減らすように工夫がなされている。
サイドカバーはアルミ板の板金加工で製作。アルミフェンダーに手製のアルミエンジンガードも製作。エンジンガード以外はツヤツヤにバフ仕上げしてしまった結果、泥汚れやアルミフェンダーへの石跳ねがどうにも気になるようになった狩野さんは「もう林道行かな~い!」とまで言うようになった。
それで、最近は軽度なトレッキングで充分満足しているとのこと。
試乗してみるとTLR200のエンジンに換装された動力系は元々のイーハトーブ125のエンジンと比べトルクに余裕がある。ギヤレシオも少し高めにされ、市街地走行が楽になっている。シートは若干クッションを増量。標準的オフロードハンドルはトライアル車のストレート気味なハンドルよりも街なかでは違和感が少ないように感じられた。足着き性は抜群だし、乗車姿勢は上体が直立して見通しが良い。
エルシノアなどのクラシック寄りのオフロードバイクをきれいに保存したい向きの志向に近いバイクになったと言えるかもしれない。渋く磨き上げられたストリートトライアラー。とても面白い試みと思われた。

■板材を四角く加工しヒンジ類も取り付けて小型の工具ボックスを製作。過去の山菜採りやトライアルの故障で便利に使えた結束バンドが顔を出している。

■燃料タンクに繋ぐホースには贅沢にも削り出しのネジ込み部分を装着。納まりの良いセットが構築されて工具ボックスにピッタリ収まっている。

■たった1Lでも予備燃料があれば、燃費の良いシングルなら里山の上から帰って来られるという発想で、このタンクとホルダーを製作。筆者のKLX125もほぼ同様の仕様。

■珍しい台湾製のキャブレター。現在のTLR200エンジンはこのキャブでちょうどいい感じで走れているようだ。

■エンジン右側付近を見る。125から200に載せ替えた際に、ヘッドを固定するステーは寸法を修正して作り直したそうだ。元のエンジンは黒塗装。

■エンジン部左側。クランクケースとダイナモ側のカバーで艶の差を極端にしていない。

■厚みのあるアルミ板を曲げ、エンジンマウントのボルトと共締めにして装着された手製のエンジンガード。エンジン真下にクッションが入り緩衝材となる。

■キック始動前に右のステップを足先でひょいと斜め後をに上げる。

■ステップ後部に増設された金具がフレームに付けられたドアキャッチにはまり、ステップは程よい感じでこの位置で固定される。

■手直しの初期にすぐ製作されたリヤキャリア。スリムでシートとの繋がりが良い。後ろに行くほどテーパー的に細くなっている。ステンレス製。

■元のスリムキャリアにボルト4点でしっかり取り付け可能な拡大キャリア。この面積を持ちながら歪みがとても少なく定盤に乗せても4点接地する。

■荷物を背中に寄せたいときには、樹脂製トランクを前寄りに積めばよい。

■やや小型のクーラーボックスを携帯することがあるので、その場合はトランクは後ろにずらして結束。それでもこれだけ余裕ができる。

■狩野溶接工業代表の狩野敏也さん。現在このイーハトーブ改とVストローム650を所有。山菜の知識は深く、渓流釣りも得意。
レポート&撮影●小見哲彦
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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<取材協力>
○有限会社 狩野溶接工業
https://kano-w.com/
○ドリーム商會
http://www.dream-shoukai.info/





































