東京モーターサイクルショーのヤマハブースにて確認
2025年3月28日から3月30日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「東京モーターサイクルショー」には、3日間で118,812人の来場者が訪れ、本年のバイクシーズンの幕開けにふさわしい盛り上がりになった。
筆者は、初期型YZF-R1と2017年式MT-07の2台を所有する、筋金入りのヤマハファン。東京モーターサイクルショーでも、入場後即、ヤマハブースに直行し、ニューモデルを中心に気になる車体をチェックしてきた。
その中で、ひとつ気がついたことがある。
それは、「今年ヤマハが発売する車種は、かなり足着き性に配慮しているものが多いのではないか」ということだ。

「これから乗りたい」若者に向けた車体は足着き性への配慮が顕著! 大柄車体にもローダウン仕様の設定がある
2000年代以降、ヤマハが発売するバイクは、スーパースポーツカテゴリーを中心にかなり腰高なものが多く、身長160cm以下のライダーにとっては足着きが厳しいものが多かった印象がある。だが、今年のモデルでは、「ノーマル状態で足着き性にかなり考慮されている」もの、そして「純正ローダウン仕様がある」ものが目立っていた。順番に紹介していこう。
「YZF-R25/R3」─シート高が同じでもこれまで以上の足着き性に!
今年のヤマハブースで特筆すべき足着き性のよさを誇っていたのがこちら。
3月に発表されたばかりの2025年モデルYZF-R25/R3だ。
ヤマハの中でも「これからバイクに乗っていく」若手世代をターゲットに据えたモデルになっているようで、会場に展示されたのも、2種類の偏光色を組み合わせたインパクトのあるカラー「マットイエローイッシュホワイトパール1」。じつは、このカラー自体が10代~20代の若年層のビギナーライダーに向けて開発された新色だ。
YZF-R25/R3は、2015年の登場以降、シート高はずっと780mm。
腰高なものが多いヤマハのスーパースポーツモデルの中では突出してシート高が低く、良好な足着き性に定評があった。2025年モデルでは、シート幅を左右最大6mm狭くし、サイドカバーを片側だけでも13mmスリム化したことで、シート高は同じなのに、これまで以上に足着き性が良くなっている。
身長157cmの筆者がまたがり、両足を同時におろして、かかとがわずかに浮く程度の足着き性。正直、自分の身長で、両足着きでここまで足が着く車体はこれまで出会ったことがない(クルーザーを除く)。足着きを稼げる片足着きではなく、両足をおろしたままでも、一方のかかとを少し浮かせばもう一方の足全体がべったりつくほど足着き性が良いので、まったく不安を感じなかった。
「これはヤマハ、本気でビギナー層や小柄ライダーにコミットしてきた!」
と実感した。
「カッコいいカウルつきのスーパースポーツに乗りたい、でも足が着かないのは不安」
というビギナーが身近にいたら、YZF-R25/R3を薦めておけばまず間違いないのでは、と思わされた。展示ブースでも、特に若者がこの車体の周囲に集まっていた、小柄ライダーにとっては期待の一台だ。


「YZF-R9」─乗りたいならば検討できる足着き性
YZFシリーズの展示コーナーでひときわ注目を集めていたYZF-R9(参考出品)。
専用デルタボックスフレームにMT-09と同系統の並列3気筒890ccエンジンを搭載し、日本での発売日発表が待たれる完全新規のスーパースポーツも、東京モーターサイクルショーに登場。またがり可とあって、多くの来場者が待機列をつくっていた。
こちら、YZF-R9のシート高は830mm。
身長157cmの筆者がまたがると、片足着きで母指球(親指の根元すぐ下にあるふくらみ部分)までは接地。「これなら乗れる」レベルの足着き性だった。
ちなみに、YZFシリーズではR1が855mm、R7が835mm。そのどちらと比べても足着き性はいい。下位モデルのR7で、筆者は「片足爪先着き」に限りなく近い足着きだったので、R9の方が足着き性が良いことには驚かされた。
小柄ライダーにとって「足着きの心配がなく安心」とまでは言えないが、「乗りたい!」と考えているなら検討する余地のある足着き性が実現されている。

「XSR125 Low」─オフィシャル足着き改善仕様としての登場!
「125ccモデルに足着き性を論じる必要があるか?」
という意見が出そうだが、ちょっと待っていただきたい。
XSR125のシート高は810mm。
数値だけ見れば、筆者程度の身長でも不安なく乗れそうなスペックなのだが、シート幅が広く、サイドカバーの張り出しが大きいため、車体の見た目はコンパクトなのに、またがってみると予想以上に足が着かない。身長157cmの筆者では、片足着きでも母指球が着くか着かないか程度で、正直「乗るのに躊躇する」レベルなのだ。
この足着き性の悪さが仇になり、小柄ライダーが購入に至らなかったケースも多かったようで、2025年モデルには、オフィシャル足着き改善仕様の「アクセサリーパッケージ XSR125 Low」が登場。
車体にローシート&ローダウンリンクを組み込むことで、ノーマルよりも約30mm足着き性を改善している。
こちらの写真は身長157cmの筆者がLowにまたがったところ。母指球までしっかり接地し、安心して乗れるレベルの足着きになった。
なお、当モデルに採用されたローシート、ローダウンリンクとも車種専用設計、かつ、価格はノーマル車より22,000円高いだけで、しかもローダウンパーツの取り付け工賃は価格の中に含まれているので、相当お得という点でも評価が高い。
個性的な見た目に惹かれてXSR125に乗りたかった小柄な方は、もう足着き性を理由に諦めなくていい。

「Tenere700 Low」─Lowなら3cmダウンで157cmでもなんとか!
小柄ライダー向け情報としては、やや番外だが……。
こちらのTenere700にも、公式ローダウン仕様の「Tenere700 Low」が登場している。
ビッグアドベンチャーとしてのアグレッシブな走行性能が自慢のTenere700。2025年モデルでは、電子制御スロットルの採用やスマートフォンとのリンク機能や大型ディスプレイの採用で快適性&利便性も高められ、話題となっている。
が、Tenere700といえば、ヤマハの車体の中でも極端にシートが高く、そのシート高は875mm。一部の競技用モトクロッサーを除いて、公道モデルの中ではもっともシート高が高く、身長が170cmある人でも爪先立ちになってしまうほどだ。
身長157cmの筆者の場合、サイドスタンドをかけた状態のTenere700にまたがって、頑張って左に腰をずらしても、爪先が地面をかすりもしないほど。
乗るか乗れないかではなく、最初から「乗れない」一択しかないキングオブ腰高、それがTenere700なのだ。
そんなTenere700も、あまりに乗る人を選ぶ車格であるためか、公式ローダウン仕様が登場。
それが「アクセサリーパッケージ Tenere700 Low」だ。
こちらは、ローシートとローダウンリンクを装着することで、約30mmローダウンを実現。
XSR125 Low同様に、価格はノーマル車より22000円アップ。ローダウンパーツ+取り付け工賃を含んでいる。
「30mmはたしかに大きいけれど、身長157cmじゃローダウンモデルでもどうせ足は届かないだろう」
と思っていたのが、驚くことに片足が地面に届き、母指球の上端まで接地した。
「小柄で足が届かないけれど、どうしてもTenere700に乗りたい!」
というライダーには、救いをもたらしてくれるモデルに違いない。

「シート高が低ければ足着きはよい」とは限らない。小柄ライダーが考える「これなら乗れる」の基準とは?
ここで再度「小柄ライダーにとっての足着き性」について考えたい。
最近は、ローダウンパーツや厚底ブーツの普及により、身長150cm未満でもバイクを楽しんでいる人が増えているので、果たしてどの程度の身長であれば「小柄」であるかについては、さまざまな意見があるようだ。今回は、身長160cm未満を小柄と考えた。
「体に合った車体であればローダウン等の特別な工夫なしでも乗れるが、大型・腰高な車体は対策なしで乗るのが難しい身長」
といえば、お分かりいただけるだろうか。
そこそこ乗車経験のある人の場合、身長160cm程度あれば、シート高810~820mmぐらいまでは「不安なく乗れる」と感じる足着き性になることが多いようだ。
ちなみに、筆者の場合は身長157cmで、シート高815mmの初期型YZF-R1にまたがって、右足をステップに載せ、左足のみをおろした状態で、画像程度の程度の足着きになる。見た目ではそれほど足着きが悪いようには見えないが、体感的には母指球全体で体を支える感覚になる。自分にとっては
「足着きがいいとは思えないが、取り回しや乗車含めて特に問題はない」
と感じる程度の足着き性だ。

「足着きがいいわけではないが、乗るのに問題はない」
というのは、身長に恵まれている人にはなかなか理解しにくい感覚だと思う。というのも、背丈があるライダーの場合、バイクというのは両足がベタ着きするのが当たり前で、かかとが少し浮いただけでも「足着きが悪い」と感じるケースがあるからだ。
だが、身長160cm以下のライダーの場合、一部のクルーザー以外では、どんなバイクであってもかかとが浮くのは当たり前。かかとが浮く前提で
「どの程度足が着けば自分は乗れそうか」
を探ることになる。

こちらは、筆者が2025年モデルMT-09(シート高825mm)にまたがったところ。
先のYZF-R1とシート高の差はわずか10mmで、見た目にあまり足着きの差はないように見えるが、体感的には母指球上端がわずかに接地する状態で「かなり不安がある」足着き性だ。(※こちらの車体はクラッチ操作不要のY-AMTで、発進・停止時に左右の足の踏み替えが必要なかったため、この足着きでも走り出してしまえばそれほど不安はなかった)
小柄ライダーが足着きを考える場合、先ほどから何度か登場している「母指球(親指の根元すぐ下にあるふくらみ部分)」が接地するかというのが重要で、かかとが浮いていても母指球全体がしっかり接地していれば、それほど不安は感じない、と考えるライダーが多いように思われる。
また、左右の足を同時におろす「両足着き」ではツンツン状態の爪先立ちになってしまう場合も、片足をステップに載せ、もう一方の足を腰からずらして「片足着き」にすればしっかり母指球まで接地でき、そちらのほうが不安は軽減する。
ところで、車体スペックから足着き性を考えるとき、参考にする人が多いのが「シート高」だ。
当記事内でも、ここまでシート高を基準に足着き性を論じてきた。
だが、実のところ、シート高が低ければ足着きはよいとは限らないのが難しいところ。
実際にはシート高以上に、「シート幅」「車体をまたいでまっすぐに脚をおろせるか」のふたつの要素が足着き性を左右することが多い。「シート幅」は、幅が広いほど、脚が外に開くため足着き性は悪化する。「またいでまっすぐ」については、車体下部についているカバー類、場合によってはステップが下ろした脚に干渉して足着きを悪化させることがある。
シート高はあくまで参考資料と考えて鵜呑みにせず、実車をまたいで足着き性を確認するのが大切だ。
乗車キャリアの長い小柄ライダーの方々にとっては「釈迦に説法」レベルの豆知識になるが、ビギナーに近い方が当記事を目に留めてくれる可能性を考えて、もう一度このことを強調しておきたい。
そして、これからバイクを買いたい、できれば足着きに不安がないものを……とお考えの方には
「今年のヤマハ、足着きいいのが揃っている!」
と強調して、当記事を締めくくる。
レポート&撮影●増田恵子
○ヤマハ発動機株式会社(二輪)
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/