バイクライフ

誤解しやすい!?「フライ・バイ・ワイヤ」 ヒモはあるようで無い? というか、何で「飛ぶ」なの?

航空機に由来する技術なので「フライ」

航空機に始まった「操作系の電子化・電動化」は、四輪車に広まり、最近では二輪においても当たり前となりつつあります。

航空機由来の技術(*)であることからFly by wire(フライ・バイ・ワイヤ)と表現されることの多いこのシステムは、シンプル言えば「人力によって動かしていた部分をモーターやアクチュエータによる電動化にすること」です。

フライ・バイ・ワイヤの「バイ・ワイヤ」というのは「電線を使う」ということを意味しています。なので、パイロットの操縦(入力)を電気信号に置き換えて機体を制御するというシステムとも言えます。

*編集部註:F-16戦闘機や超音速旅客機のコンコルドから採用が始まったと言われる。

「電線」はあるけど、アクセルワイヤー/スロットルワイヤーは無い

バイクではアクセルグリップとスロットルをつなぐケーブル部品を「アクセルワイヤー/スロットルワイヤー」と呼ぶため、わかりづらい面もありますが、アクセルワイヤーは機械的につながっているものであって、電気信号に置き換えてはいません。
つまり、それは「バイ・ワイヤ」ではありません。

あくまでも「バイ・ワイヤ」とは、電気信号が流れる配線を介してコントロールする仕組みを指す言葉であることを改めて頭に入れておきましょう。

四輪・二輪ではドライブ・バイ・ワイヤ、ライド・バイ・ワイヤとも言われるように

さて、こうしたバイ・ワイヤ技術が航空機由来ということに敬意を払ってか、二輪・四輪においても同様の技術については「フライ・バイ・ワイヤ」という言葉が使われていた時代もありました。
しかし、時代が進むにつて「ドライブ・バイ・ワイヤ」や「ライド・バイ・ワイヤ」といった表現を使うことで、どんなモビリティに使われているのかを示すようになりました。

とはいえ、必ずしも「ドライブ・バイ・ワイヤ」という言葉が四輪の運転操作の電子化全般を示すというわけではありません。最近の流れとしては「ドライブ・バイ・ワイヤ」というのは、スロットル系のバイ・ワイヤ化を意味するケースが多くなっています(とくにDBWとアルファベットで表記する場合)。
同じく二輪では、まさにスロットル系のバイ・ワイヤ化ということで「スロットル・バイ・ワイヤ」という表現も用いられています(TBWと略される)。

スロットル・バイ・ワイヤを採用するホンダ CBR250RR。
ホンダ CBR250RRのスロットル・バイ・ワイヤの説明イラスト。
アクセルケーブルの無いホンダ CBR250RRの右グリップ。スイッチボックスには「THROTTLE-BY-WIRE」のロゴがある。

これは二輪・四輪とも共通のトレンドです。
二輪でいえば右手でアクセルグリップを回転させた量、四輪では右足で踏み込むアクセルペダルの操作量を電気信号に置き換え、それをECUに入力。そこからスロットルバルブを動かすモーター・アクチュエータに信号を送るというのが、DBWの大まかな制御となります。
そこからさらに、四輪では多段ATやCVT(無段変速)のコントロールにもアクセル操作の信号を活用して、エンジン出力と合わせた協調制御をすることも当たり前となっています。

二輪・四輪ともトラクションコントロールや駆動力による姿勢制御が可能となっているのもDBWが普及したおかげといえるでしょう。
最近、二輪でも広まりつつあるACC(追従クルーズコントロール)において、先行車両に合わせて加減速することもDBWありきの制御であることは言うまでもありません。現代のモビリティにおいて、もはやDBWは必須の技術となっているのです。

ホンダの四輪で初めてスロットルのバイ・ワイヤ化を採用したのは、1995年にマイナーチェンジを行ったNSX(写真は同マイナーチェンジ時に追加されたNSX-T)。
ホンダ NSX(1995年)のDBWの説明イラスト。

四輪ではハンドル操作の電子化も行われている

DBWはスロットル系のバイ・ワイヤ技術といえますが、自動運転テクノロジーに向けて、さらなるバイ・ワイヤ化が進んでいます。

四輪で拡大中なのが「ステア・バイ・ワイヤ」です。
ハンドルでシャフトを回して操舵する──というのが四輪の長い歴史でしたが、ハンドルの舵角センサーを元に主にフロントタイヤを動かすというのが「ステア・バイ・ワイヤ」です。四輪の操舵系では当たり前に普及しているパワーステアリングが電動化したことも、ステア・バイ・ワイヤの拡大を後押ししているといえます。

余談ですが、乗用車が採用する四輪操舵技術の後輪については、ずっと前から電気信号によって動かされています。その意味ではステア・バイ・ワイヤというのは、けっして新しい技術ではないといえるかもしれません。

今後はブレーキも電気信号で動かす時代が来る?

これから発展が予想されているのが「ブレーキ・バイ・ワイヤ」です。
四輪には義務化となっている横滑り防止装置ではドライバーの操作とは関係なく前後左右4つのブレーキを独立制御していますし、衝突被害軽減ブレーキはドライバーの操作とは関係なくクルマを停止させることができます。

また、軽自動車でも採用例の増えてきたEPB(電動パーキングブレーキ)は状況に応じて自動的にパーキングブレーキをかけることも可能となっていますが、通常のブレーキ操作については足でペダルを踏み込むことで油圧を発生させ、それを四輪のブレーキシステムに分配しています。

現在、開発されているブレーキ・バイ・ワイヤは、そのペダル踏力を電気信号に置き換え、各輪に配されたブレーキシステムを制御しようというものです。レスポンスや正確性といった点でのメリットもありますが、もっとも重要といえるのは自動運転テクノロジーとの親和性が高いことでしょう。

アクセル/ハンドル/ブレーキといった操作系をすべてバイ・ワイヤ化すれば、高度な自動運転中には、そうした操作系からの入力をキャンセルすることが可能になります。ドライバーが無意識でハンドルを握ったり、意図せずにブレーキを踏んでしまったとしても、車両は問題なく自動運転を続けることができます。

バリアフリー的な視点でいえば、すべての操作系をバイ・ワイヤにできれば、現在のスタンダードといえる操作レイアウトが扱いづらい人でも簡単に運転できるようになるかもしれません(突き詰めると、ゲーム機のコントローラーのようなもので運転が可能になるかも!?)。

もちろん、自動運転中のトラブルに対して人間が瞬時にオーバーライドできることも考慮しなくてはならないので、そうした部分の難しさもありますが、いずれにしてもモビリティのバイ・ワイヤ化は進んでいくことでしょう。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ/モーサイ編集部 編集●上野茂岐

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