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ディアブロロッソ4は「1銘柄でスーパースポーツ、ネイキッド、アドベンチャーなど多車種に対応」
どんなに車体やエンジンを見事に設計したとしても、最終的にマシンと路面の間にあるのはタイヤです。つまりエンジンはタイヤが許容する範囲でしか性能を発揮できませんし、シャシーはタイヤの性能を引き出すことが役割ともいえます。
そのためタイヤというのはマシン特性やカテゴリーに合わせて設計される必要があるのですが、2021年7月1日から発売されたピレリの新モデル「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)は、スーパースポーツ、ネイキッド、アドベンチャーと幅広いモデルに対応するオンロード用タイヤとなっています。
世界累計500万本以上の販売実績を誇る「DIABLO ROSSO」(ディアブロロッソ)シリーズの第4世代となる「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)ですが、要求性能の異なる様々なモデルに適応できる理由とはどこにあるのでしょうか。
また、ターゲットの幅広さからもわかるように「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)のメインステージはサーキットではなく一般道です。
そこではドライ&ウェットでのバランス性能も求められます。
はたして「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)が、マルチな性能を発揮できる理由とは?
ディアブロロッソ4のプロファイル「スーパーバイク世界選手権由来の技術」
スーパースポーツ系にも対応するということは、単にサイズを設定すればいいというわけではありません。
200馬力を超えるパワーを受け止め、さらにハンドリング性能においては正確なフィードバック性も求められるからです。
そこでキーとなる技術が「マルチラジアスデザイン」です。
これはタイヤを正面から見た時のプロファイル(形状)において、異なる曲率を複合的に組み合わせてつなげる手法のことで、これはピレリがサプライヤーを務めているスーパーバイク世界選手権からフィードバックされたテクノロジーだといいます。
具体的には、どうなっているのでしょうか。
フロント用タイヤでは、センター部分とサイド部分で曲率を変えています。
シャープなプロファイルのセンター部分で素早くリーンできるハンドリングに貢献する一方、サイドエリアは接地面積を増やす形状とすることで、コーナリング時のグリップ性能を高めています。
リヤ用はさらに凝った3段階のプロファイルを採用しています。
従来品に対して10mm高くしたというセンター部分は、よりシャープでクイックなハンドリングに貢献しています。
サイドエリアは9mm広くすることで安心感を担保。そしてショルダー部の曲率最適化によりコーナリング立ち上がりでのトラクションを向上させているのです。
このように前後で異なる特性のプロファイルを組み合わせつつも、全体としてはニュートラルな特性につながるようバランスされているのも見逃せないポイントです。
ディアブロロッソ4のトレッドデザイン「伝統のFLASH™パターンを採用するも、前後で逆の特性に」
タイヤの顔といえるトレッドデザインも、前後で大きく異なっています。
基本的なパターンは、DIABLOシリーズの伝統ともいえる「FLASH™パターン」、名前から想像できるようにイナズマのようなグルーブ(溝)をセンター付近に配する点は「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)前後で共通です。
このパターンの狙いは、タイヤの摩耗が均一になることと、速度を出したときの排水性。まさにストリートタイヤとして求められる機能を満たしていることがトレッドデザインの思想から感じられます。
ただしトレッドデザインの指標といえるボイド/フィル比(溝比率)は前後で考え方が真逆となっているのが「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)の進化ポイントとなっています。
ディアブロロッソ4、フロントのトレッドデザイン
フロントは、従来モデルであるディアブロロッソ3と比べると、中央部のボイド/フィル比をわずかに増加させる一方、ミドルエリアとサイドエリアのボイド/フィル比を15%から11%程度へと約3割も減らしています。
つまりドライ時のコーナリングでフルバンク状態にしたときのグリップを高めていることが期待できるのです。
ディアブロロッソ4、リヤのトレッドデザイン
逆に、リヤのトレッドデザインでは中央部のボイド/フィル比を従来モデルの11%から9%程度に抑えています。その狙いは高速走行での走行安定性と、摩耗の均一性を高めるため。
このように同じ「FLASH™パターン」を採用しているように見えながら、前後で異なる特性を与えています。これも「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)の特徴となっています。
言うまでもなく、バイクにおいてリヤタイヤはパワーを受け止め、的確に路面に伝えるのが大きな役割となります。
トレッドデザインにおいても、そうした意識の強さが感じられるのです。
サイズによって異なるコンパウンドを採用したリヤタイヤ
さて、冒頭でも記したように「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)のターゲットにはスーパースポーツも含まれます。
ネイキッドやストリートファイター系モデルでも同様ですが、こうしたカテゴリーにおいてはリッタークラスになると200馬力級が当たり前となっています。
一方で、アドベンチャーモデルのパワーはその半分程度──。
そうした幅広いモデルに適切に対応するのは難しいのですが、「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)ではサイズに合わせてコンパウンド特性を切り替えることで、その難題をクリアしました。
ディアブロロッソ4、フロントのコンパウンド
まずフロントタイヤでは、中央部にウエット時のグリップ性を考慮したハードコンパウンドを配しています。
ニュートラルな感覚を重視してリーンアングル35度の領域までは、このハードコンパウンドを使い、そこから先のバンク角が深くなるときに使うサイドエリアには、シリカ含有量の多いソフトなコンパウンドを使うデュアルコンパウンドとなっているわけです。
リヤ用タイヤはさらに細やかなコンパウンド設計になっています。
190/50ZR17以下のリヤタイヤはデュアルコンパウンド仕様
比較的ローパワーなモデル(あくまで現代のバイクとしては)に適合する190/50ZR17以下のサイズにおいては、フロント同様のデュアルコンパウンドが採用されます。
中央部には素早く暖まり、なおかつ省燃費にも貢献するフルシリカコンパウンドを採用。深く寝かせたコーナリングで利用するサイドエリアには、ソフトなシリカコンパウンドという組み合わせです。
190/55ZR17以上のリヤタイヤはトリプルコンパウンド仕様
一方、ハイパワーモデルに装着されるケースが多い190/55ZR17以上のサイズは、トリプルコンパウンドとなっているのです。
こちらは中央部にハードコンパウンドを、ミドルエリアにはドライ&ウェットでグリップを発揮するフルシリカコンパウンドを、そしてショルダー部分にはレースシーンからフィードバックされた100%カーボンブラックのコンパウンド(耐久レース仕様の「SC3」相当)という組み合わせ。
これにより、200馬力級のスーパースポーツであっても、コーナリング立ち上がりでしっかりとトラクションが確保されるのです。
ディアブロロッソ4のサイズ展開
リプレイスタイヤというと、サーキット向けであったり、オフロードに最適化したものだったり、特化した性能を持つタイプが目立ってしまう部分もありますが、オンロードで使うのであればバランス重視で選ぶのも「アリ」だと思います。
そうした視点で「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)の設計思想を見ると、ドライ&ウェットでのグリップ力、耐久性とコーナリング性能の両立など、高次元でバランスを狙ったタイヤであるのがわかります。
さらに、ハイパワーモデルにはトリプルコンパウンドを用意することで、そのパフォーマンスを存分に味わえるよう設計されているのも「DIABLO ROSSO」という伝統の名前を受け継ぐ最新モデルとしてふさわしいといえるのではないでしょうか。
ピレリの最新テクノロジーを投入した「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)のラインアップは以下のようになっています。
■フロント用
120/70ZR17
■リヤ用
160/60ZR17(デュアルコンパウンド仕様)
180/55ZR17(デュアルコンパウンド仕様)
190/55ZR17(トリプルコンパウンド仕様)
200/55ZR17(トリプルコンパウンド仕様)
レポート●山本晋也 写真●ピレリジャパン 編集●上野茂岐