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ライダーの正装たる革ジャン。メイドインジャパンを貫き、末長く愛用できる製品を作り続けているブランドが、PAIR SLOPE(ペアスロープ)だ。この秋冬にぜひ手に入れたいペアスロープのニューアイテムとモノづくりへの思いを紹介する。
お客さんにどれだけ喜んでもらえるか
「お客さんにいいものを届けたい。そんなうちの職人たちの心意気はいいんだけど、作業が丁寧で時間ばっかりかかっちゃって。完全にコストオーバーだね」
そう言うのはもうすぐ創業40年のペアスロープ三橋代表。ペアスロープは、革ジャンなどのライディングウエア、グローブ&ブーツ、小物まで製造販売するバイクアパレルブランドだ。その全てはメイドインジャパンで、特に革ジャンは本店2階の工房から生み出される。
「日本人って、手先が器用で技術的に優れてるってこともあるけど、やっぱり相手を思いやる心を持ってるじゃない。ものづくりでも、ステッチが少しでも曲がっていたらお客さんはどう思うかなとか自然と考えちゃって絶対に手を抜けないんですよ。その辺も日本の職人気質なのかな」
ペアスロープはそもそも、安く作ろうとか大量生産なんて考えていない。どれだけ喜んでもらえるかを思いながら、20時間以上かけて、20年30年と着続けられる1着に仕上げていく。さらに最近は、オーダーを選ぶ人が増えたという。
「いくら職人が丹誠込めて作っても、サイズや用途が合っていなければお客さんに我慢を強いることになってしまう。だから試着してもらって、袖が短ければ、『もう少し長くした方がいいですね』とか提案もする。人によって体のサイズはさまざまだし、どんなバイクに乗っているのか、普段使いもしたいのか、走るのがメインなのかとか、調整する要素はたくさんある。その人の好みに合わせられるのは、工房が2階にあるうちの強みです」
革ジャンは10万円以上と決して安い買い物ではない。だからこそ、後悔のない1着を手に入れてほしい。ペアスロープの革ジャンは、丈夫に、そして修理もしやすいように、誰も気づかない箇所まで工夫されている。長く着続けられる相棒のような革ジャンが欲しいなら、東京・大田区、夫婦坂にある小さなお店を訪れてみよう。きっと自分だけでなく、子供にも継承できる1着と出会えるはずだ。
秋の新作は、名品フライトジャケットをライダー用にリバイバル
「試しに作ってみたら反響が大きくて。意外と若い人たちも見に来てくれる」というMA-1は2022年秋の新作だ。オリジナルのMA-1は、言わずと知れたフライトジャケットの名品。つまり、戦闘機乗りたちの正装だったわけで、あちらはナイロン製。本家は前丈より背丈が短くなっているが、ライディング用として背丈は前丈と同じ長さとした。もちろんペアスロープらしく、丈夫でしなやかな「牛革」で。手間は惜しまず、その機能性と雰囲気を追求した。多少ゆったりめの設計で、街着としても活躍間違いなし。完全受注生産。ライダーのために最適化されたMA-1で、気分はトム・クルーズ?(本家はMA-1を着ていないが……)。
20年、30年とともに走り続けられる本物の革製品であるために
ペアスロープ東京本店の2階では、この道30年以上のベテラン職人が日々革ジャンを作り続けている。彼らの技術は非常に高く、正確無比のステッチでレザーを次々と縫製していく。と言っても、革の裁断から縫製、完成まで1着作るのに20数時間。サイズオーダーはそれ以上。追い求めるのは、美しく、丈夫で着心地のいい革ジャン。着る人に買って良かったと思ってもらいたい。そんな日本人らしい真心と職人技で、ペアスロープの革ジャンはできているのだ。
●革ジャンのショルダーは重なっている革の枚数が部分的に異なるため、そのまま縫製すると凹凸ができてしまう。気づく人はいないかもしれないが、ペアスロープでは革を薄く削り、段差のないフラットな仕上がりを実現している細部まで手を抜かない職人の心意気
●革ジャンの性格により革を使い分ける。基本となる牛革は、ステアの中でもキップ(生後約1年)に近い柔らかなもの。より軽快な着心地となる馬、さらに柔軟で伸縮性も備える鹿の3種を用意
●ペアスロープは既製品も販売しているが、袖丈や着丈などのサイズ調整、カラー変更も請け負う(有償)。決して安い買い物ではないからこそ、自分の好みに合った革ジャンを着てもらいたい
バイクに合わせて選べる多彩なラインアップ
C57シングルアーバン
普段使いできるシンプルモデル
●日常使いもしやすいパターンのシングルライダース。スマートなシルエットも魅力。11万5500円〜。写真はカスタムオーダー品
G310Dハイスピードライディング
前傾の強いバイクに最適な設計
●超高速走行を想定。腕の取り付けは前傾姿勢に合わせられており、身頃も背中の方が長い。フィット感のある着心地。13万7500円〜
革ジャン以外のアイテムにも注目
ワークブーツジップ
●内側にファスナーを備え、脱ぎ履きをしやすくした。ビブラムソールも柔らかめで歩きやすい。丈夫な牛革製だ。4万5100円
鹿屋島
●ペアスロープの革の中でも最上級の柔らかさで、牛革を超える引き裂き強度を持つ鹿革を使用。手に吸い付く使用感。1万8150円
大田区の環七沿い、夫婦坂のお店へぜひ
東京は大田区、環七沿いにある小さなお店には、革ジャンやテキスタイルのジャケット、グローブ、ブーツ、小物が並ぶ。スタッフと相談しながら、自分だけの1着を作り上げよう。月1ペースで京都伏見店をオープンしている