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アッ! サーキットで転倒!!バイク用エアバッグシステム「hit-air製MLV-C」にマジで救われた話

試したくてもなかなか試せない、リアルな防御性能

筆者が普段から愛用しているヒットエアー製の一体型エアバッグ・ハーネス「MLV-C」

これまで、さまざまなバイクパーツやウェアなどを試してきましたが、セーフティグッズに関するレポートは歯がゆい思いが少なくありませんでした。例えば、ヘルメットの安全性について、自らコケて試すことはできません。不可能ではないものの、メーカーが想定するような条件を再現するのはなかなか難しい。また、ウェアに内蔵されるプロテクターというのも、お伝えできるのは「ライディングウェアの一部かのようで、動きづらいとは感じません」などと、肝心な〈防護性能についてリアルな感想〉からは程遠い表現になってしまうものです。

だいたい、クルマの衝突実験を見ればわかる通り、シートに座っているのは実験用のダミーであり、人柱になって命知らずなテストに挑もうなどということは滅多にない。あったとしてもそれは危険行為に等しく、とてもモーサイ読者にお届けできるものではありません。

しかし、テスターが不慮の事故を起こした際、「ヘルメットが役立った」「プロテクターのおかげでケガを免れた」といった証言はどうでしょう。防護製品のスペック、効果・効能を知ったテスターのリアルなインプレッションほど役立つものはありません。今回、お届けするのは筆者自身が心ならずも開いてしまった「着るエアバッグ:Hit-Air(ヒットエアー)」に関するインプレです。結論を先に述べておくと、「バイクの転倒時にこれほど有用なものはない」「普段からの着用を強くオススメしたい」この二点です。

装着アイテムは無限電光のエアバッグ「ヒットエアーMLV-C」(4万4000円)

首気室、胸気室、背中気室、脇気室、尻気室に分かれる各パート。ボタン止めされていた各部が展開時に外れ、マチが開いて膨らむ仕組み。エアバッグ前面の右下側にカートリッジボンベを配置

無限電光の着るエアバッグ・ヒットエアーは、その名の通りライディングジャケットやレーシングスーツの上から着用ができるもの。ロード用やサーキット用といったスタイルに加え、上半身を広くサポートするタイプから、頸椎の損傷を防ぐ目的に特化したタイプなど、様々なニーズに応えてくれる製品がラインアップされています。

仕組みはとてもシンプルで、車体とエアバッグをつないだワイヤーロックが転倒・追突などによって外れると、エアバッグ内部にある炭酸ガスボンベのバルブが開き、瞬時(0.1-0.2秒)に膨らんで衝撃を緩和してくれるというもの。ちなみに、ワイヤーやロックの構造に工夫があり、マニュアル通りに装着すれば立ちゴケ程度で開くことは滅多にありません。ロックが外れるには約30kgの張力が必要なため、ロックを外し忘れて降車してしまったとしても引っ張り感があって割と気づきやすく、簡単に膨らんでしまうことはないと思います。

首の後ろの膨張によってヘルメットが動きづらくなるため、筆者の場合はヘルメットに擦り傷などのダメージはほとんど受けませんでした
膨張するエアバッグのイメージ。首から背中、そして脇から回り込むように肋骨の周辺をカバー。背中から尾てい骨あたりまで防護してくれるのがロード向けタイプの特徴
車体からライダーの身体が離れた際に作動するよう、伸縮ワイヤーはバイクの所定の位置に長さ調節して取り付け。本体には夜間の被視認性を高めるリフレクター素材「LUMIDEX」を採用

さて、筆者が着用していたのはMLV-Cというスタンダードタイプで、首から上半身、腰回りまでバッグが膨張してくれるモデル。普段から一般道はもちろん、サーキットでの練習走行などでも使い、なかば着用は習慣化していたといってもいいでしょう。ちなみに、酷暑の時期は薄手のインナーウェア一枚に、ヒットエアーだけでバイクに乗ったこともありました。あまりオススメできる服装ではありませんが、プロテクター入りメッシュジャケットの数倍は涼しくてとても重宝した記憶があります。

あまりオススメはしづらいものの、猛烈に暑い時期は夏用インナーの上からヒットエアーを着用していました。プロテクター入りメッシュジャケットに比べ、抜群に風通しがいいんです

不意の転倒でコロコロ転がるも、ヘルメットの帽体には傷ひとつなし

で、10月のある日、筑波サーキット(TC2000)で練習走行をしていた時のこと。前回を上回るタイムを刻んでいたのですが、これが「もっとイケる!」という欲とか焦りのようなものを生んだのでしょう。最終ラップにほど近いタイミングで、第一コーナーへの突っ込みもいくらかオーバースピードだったかもしれません。あるいは、スピードこそ同じでも、アクセルを開けるのが早すぎたのかもしれません。いずれにしろ、ヤバいと思う間もなくあっという間に転倒し、グラベルゾーンへと滑っていったのでした。

この際、覚えているのは自分が丸太棒のようにコロコロと回転していたこと。どこかに衝撃を受けたかどうかというのはまったく覚えていません。そして、どういうわけかグラベルではうつぶせに倒れることなく、手と膝をついて四つん這いになっていたのです。

グラベルで我に返ると猛烈な息苦しさを覚え、バイザーをあげて息を吸い込もうとしたものの苦しくて我慢がなりません。この時「これでお陀仏か」と観念したこともお伝えしておきましょう。とどのつまり、息苦しさはエアバッグの膨張による身体側への圧迫が強烈だったということで、筆者が丸太のように転がったのも、身体の周囲に膨らんだエアバッグによる衝撃緩和の効果だったということ。あたかも、柔道黒帯の巧みな受け身をエアバッグが再現してくれた、といったらご理解いただけるでしょうか。

また、救護室でヘルメットをチェックして気づいたのですが、バイザーに擦り傷があったのみで、帽体はかすり傷すらありませんでした。これは首の後ろでバッグが膨張した効果と思われますが、後から首が痛くなったなどということも一切ありませんでした。

残念ながら、転倒時にどこかにぶつけたのか、左手の親指だけは脱臼してしまいましたが、その他の部位は病院でレントゲンを撮るまでもなくまったくの無傷・無損傷! これには、同行していたチームのメンバーはもちろん、救護室のナースさんまで驚いていました。バイク自体はスライダーが削れ、ハンドルバーが曲がった程度なので、さほど大きなクラッシュでもなかったかと。それでも、もしエアバッグを付けていなかったらと思うとぞっとします。それなりのスピードで、不意にコケたのですから、あばら骨の一本や二本は折れていても不思議ではなかったはず。地味に痛いですからね、あばらの骨折は(笑)。

ヒットエアーのMLV-Cはフィッティングの調節ベルトが付いているので、キャメルバック(背中のこぶ)のついたレーシングスーツでも心配なし

一度開いても再度使えて、ボンベも自分で交換可能という納得のコスパ

さて、エアバッグの膨張後、炭酸ガスはしばらくすると自然に抜けてきます。その後は、展開したバッグを折りたたみ、再びスナップボタンで留めるだけ。実に簡単です。また、ボンベの交換も付属するレンチを使って5分とかからずできるかと。この手軽さも海外製品などに対する大きなアドバンテージだと思います。なお、滅多にないとされていますが、エアバッグが傷ついたり穴が開いたとなったら、無限電光は手厚いケアサービスを用意しています。遠慮なく問い合わせるなり、点検を依頼すべきでしょう。

安全に対するコストの負担感は人それぞれですが、ヒットエアーは価格面でも大いにアドバンテージがあります。およそ4~6万円で手に入り、MLV-C用の60cc容量の交換用ボンベなら1320円であり、付属する工具を使って自身で交換が可能となっています。対する海外の類似製品は、購入費用からしてヒットエアーの数倍というのがほとんどで、さらにひとコケ数万円、商品によっては定期的に点検費用がこれまた数万円かかるというセレブっぷり。ならば、ヒットエアーは価格だけでも一考に値すると言っても差し支えないでしょう。

さて、心ならずも体を張ってレポートできたのも、エアバッグが開いて無事に帰ってこれたからこそ。これからは「着るエアバッグ、いいよ! だって、筑波でコケた時にさぁ……」と、胸を張ってオススメしようと思います。

ヒットエアーMLV-C装着して走り出す筆者。腹部から車体伸びるワイヤーが転倒や追突で外れるとエアバッグが展開。ちなみにレース用タイプは前傾しやすいようボンベとワイヤーが背中側に配置

hit-air一体型エアバッグ・ハーネス「MLV-C」製品データ

  • カラー:レッド、ブルー、ホワイト、ブラウン、ブラック
  • サイズ:L(Medium/M〜2XL対応)/2XL(Large/2XL〜4XL対応)
  • 使用CO2ボンベ:60cc
  • 重量:1.15kg(Lサイズ)
  • 材質:600D(ポリエステル)、LUMIDEX、メッシュ(ポリエステル)、リップストップ(ナイロン)、エアバッグチューブ(ポリウレタン)
  • 装備品:伸縮ワイヤー、CO2ボンベ(60cc)、取扱説明書、工具セット(セッティングボルト、六角レンチ)
  • 関連オプション:胸部パッド、脊髄パッド、サイドパッド
  • 価格:4万4000円

レポート&フォト●石橋 寛

CONTACT

無限電光
TEL:052-807-7750
https://www.hit-air.com/motorcycle/ (ヒットエアー公式サイト)

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