【第2回】品質管理部に潜入──
日々繰り返される性能試験
第1回で紹介したように、アライヘルメットの耐衝撃性能は群を抜く。アストロ系のような中間グレードでも、PSC/JISやSNELLの規準値を余裕を持ってクリアする衝撃吸収性を持ち、FIAがカーボン用として設定するF1用安全基準の一部をFRP製でクリアする。
しかし、アライは改良への歩みを止めない。「ヘルメットは軽ければ軽いほどいい。材料や作り方もまだまだ吟味する必要がある。新しいものがあれば当然、軽くそして強くを目指すので、ものすごい量のテストを行なう必要がある」。アライヘルメット品質管理部の岩崎雅之さんは、自身の業務をそう位置づける。
しかし、いくら安全基準をクリアしていても、実際の事故における安全を保証するものではないことを岩崎さんは百も承知している。数値化する試験業務に携わるからこそ、数値化できない「かわす性能」の重要性を強く意識するのである。
- 衝撃吸収性の評価試験は人頭模型(主にマグネシウム製)にヘルメットを装着し、規定の高さから落下させて衝撃加速度(G)を計測
- 現在もっとも厳しいF1用ヘルメットのテストでは4.87mの高さから落下させる(300G以下)
「かわす」ためには帽体の強さが大事
「レプリカブームだった10代からバイク好きで、アライへ先に入社したバイク仲間に誘われて働くことになりました。入社してみると『バイクに乗れ、乗ってナンボだ』とよく言われました。それだけ一本芯の通った会社。それは、我々にとって当然プラスに作用しています。社長がバイク乗りだけに要求は厳しいわけですが、言わなくても従業員が自ら感じているものはたくさんある。そのよさを、従業員みんなで伸ばしていきたいと考えいてます」

「できるだけ強く、軽く作ることが使命です」と語る品質管理部・岩崎雅之さん
- (1) SNELL規格に合わせた落下試験を2回行なった帽体。塗装面がひび割れているが、帽体が破断するなどの損傷はなし
- (2) 3kgのストライカーを3mの高さから落下させて帽体の強度を見る
- (3) 帽体に穴がわずかにあくものの、スチロール層で止まり貫通することはない
- (4) あごひも試験。10㎏の重りを75㎝の高さから落として35㎜以上伸びてはいけない
- (5) シールドのテスト。6mm径の鉄球を約500km/hで当てても貫通しないことが合格条件だ
取材協力:アライヘルメット http://www.arai.co.jp/jpn/top.html
(report●辻 司 photo●岡 拓 )