時代の節目に生まれた最後のミュンヘナー
1923年に第一号車のR32を発表して以来、自社のフラットツインにさまざまな改良を加え、着実に動力性能を高めてきたBMW。そのひとつの完成形と言えるのが、1955/56年から発売が始まったR50・60・69シリーズだ。何と言っても、同社の量産車で初となるアールズフォーク+スイングアーム式リヤショックを導入したこのシリーズは、各部の改良と派生機種の追加を行いながら、15年にわたって生産が続くロングセラーになったのだから。
かなり大雑把な表現になるものの、BMWフラットツインの歴史は、排気量の主軸が500と600㏄だった’23〜69年、750㏄を基盤にして1000㏄にまで発展を遂げた’69〜97年、1100→1150→1200㏄へと移行してきた’93年〜現代の3期に分類できる。もっとも、さすがにこの分類はちょっと大雑把すぎる気がするが、第1期の後半となる’55〜69年に発売されたアールズフォーク+スイングアーム採用車が、BMWにとってはひとつの完成形だったことに、異論を述べる人はいないだろう。
ちなみに、日本では“旧タイプ”と呼ばれることが多い、アールズフォークモデルの変遷は少々ややこしく、第一弾として’55年に登場したのは、500㏄ベーシック仕様のR50と600㏄スポーツ仕様のR69で(R51系とR68の後継)、R67系の後継として600㏄ベーシック仕様のR60が発売されたのは’56年。そして’60年になると、R50とR60は各部の改良を受けた/2に進化し、さらにはエンジンチューニングを受けたR50SとR69Sがデビューするのだが、2台のベーシック仕様と共に’69年まで販売が続いたR69Sに対して、R50Sはわずか3年でカタログから姿を消している。

ヘッドライトに内蔵されるスピードメーターはVDOで、タコメーターはオプション設定だった。ニュートラル/チャージランプは、’50年代生まれの車両としては画期的な装備。

燃料タンクは2種類が存在。ツールボックスのスペースは、17ℓの標準タンク:左、24ℓのラージタンク:上面。

影車はソロシート+キャリヤというスタイルだが、そのほかにソロシート+タンデムシート、オーソドックスなダブルシート、北米市場向けの幅広いダブルシートなどもあった。

R67/2用をベースに熟成が図られたフラットツインは、圧縮比の変更(5.6→6.5:1)を筆頭とする各部の改良によって、最高出力を26→28psに高めている。ちなみに同時代のアールズモデル各車の最高出力は、R50(/2):26ps、R69:35ps、R50S:35ps、R69S:42ps、R60/2:30psだった。

フロート別体式のキャブレターはビング。R50とR60の口径が24㎜径だったのに対して、Sモデルは26㎜径を採用。

従来は前後19インチホイールが多かったBMWだが、アールズフォーク時代は全モデルを前後18インチで統一。

R60系のファイナルギヤは8/25が標準で、サイドカー用はローギアードな7/27。前後ブレーキドラム径は200㎜。