雑ネタ

タイ税関がついにキレた! 「違法輸入車はその場でぶっ壊す」インチキだらけだったタイのバイク輸入方法

タイでは大型バイクに乗ることは収入的に難しい

1990年あるいは2000年代に入ったばかりのころ、タイは首都・バンコクでさえ外装がボロボロのクルマが多かった。

今日ではバイクも含めて「オンボロ」と呼ぶにふさわしい車両はあまり見ない。この背景には、タイ人全体の所得が上がって、ローン購入も当たり前になって新車が好まれるようになったこともあるだろう。

そんなタイでは、2010年代以降から大型バイクの人気が高まっていき、それまではひとつの運転免許証ですべてのバイクが乗れたが、2021年から「大型バイク」の免許区分ができた。
しかし、これから大型バイクが増えていくにしても、タイ国家統計局によればタイの平均月収は2.6万バーツ程度(日本円換算で約9万1000円)。100万円以上もする大型バイクは若者にとってはもう手が出せない価格なのだ。

大型バイクに乗る人が減るかもしれないと思うと残念だが、そんなことを思っていたら、ふと20年近く前にボクの友人であるタイ人が日本の中古バイクに乗っていたことを思い出した。その友人の話を聞いてみると、驚きの方法で輸入されていたバイクだったのだ。

タイで見かけたホンダ CB400SS。エンジンは397ccの空冷4ストローク単気筒OHC4バルブ。

日本の中古車をバラしてタイ現地で組み立てる「インボイス車」とは

2000~2005年辺りの話だ。そのころ、タイ人の友達はホンダ CB400スーパーフォアを愛車にしていた。ボクが16歳で普通自動二輪免許を取る時期に出たばかりのバイクだったので、見ていて羨ましかったものだ。

タイでもCB400 スーパーフォアの新車価格が60万円程度したはずだ。友人のバイクが中古車両とはいえ、タイでは関税の関係上、輸入バイクが高額なものだと知っていたので、いくらで買ったのか聞いてみた。なぜなら、友人の月収は6万円に届くかどうかだったからだ。

「乗り出しで5万バーツだった」

ホンダ CB400 スーパーフォア。エンジンは399ccの水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ。2003年12月に発売された写真のモデルはエンジンが「ハイパーVTECスペックIII」に進化、当時価格は税抜62万9000円〜だった。

つまり、5万バーツ=約15万円だ。月収より高いにしても、当時ほとんど普及していなかった大型バイク(タイでは小排気量バイクが多く、当時としては400ccは大排気量バイクであった)にしてはかなり安いと思える。
異常な価格帯に驚くと、友人は「中古車だからじゃないか?」と返すが、あとで中古バイクを取り扱う輸入関係者に話を聞いてみると、そんなやり方も世界各地であるかもしれないが……という方法だった。

答えは単純で、「いかに高い輸入関税を避けるか」である。まずタイの輸入業者は日本の業者と結託し、日本で分解した中古車のパーツをタイに輸出する。リサイクル用産業廃棄物などの名目で入れれば、バイクにかかる関税よりずっと安い。この部品が到着したら、タイのバイクショップで組み上げる。

しかし、これだけではタイでも車両の登録手続きができない。そこで、業者はすべてのパーツのインボイス(輸出入に必要な送り状)を持って財務省に向かう。納税済みであることを証明したり、関税の不足分を払うとバイクの使用許可が下りるのだ。

だが、この時点ではサーキットや私有地などでしか走行できないので、今度はその書類を持って保安部品やタイの道交法に定められた基準や整備を行っていることを陸運局で承認を得られれば、正規のナンバープレートが発行されるという流れだ。

こういった法の網の目をくぐり抜けた車両をタイでは「ロット・インボイス」(インボイス車)と呼ぶ。

2022年2月から違法輸入車はすべてその場で破壊する!?

だが、しばらくして「インボイス車」という手法は廃れた。バラバラに部品を輸入するので、ある程度のバイク知識がないと騙されるケースがあったのも「インボイス車」が廃れたひとつの要因だ。

ほかにも、2010年以降から大型バイクの需要が高まるまでは中々売れなかったこと、税関の取り締まりが強化されたという理由もあったかと思う。しかし、「インボイス車」も完全になくなったわけではなく、今でもレース関係者の中では稀に行われているようだ。

その後に登場した手法は、ペーパーカンパニー(法人登録はされているが、事業活動をしていない会社)などを利用して輸入し、港に着いたバイクやクルマを意図的に引き取りに行かないという方法らしい。
すると、港に放置された車両はタイの関税局で差し押さえとなり、その後定期的に開催される違法輸入車オークションで業者が買い戻すのだとか。やり方によっては正規輸入よりも安く購入できたそうだ。

しかし、これも今はできない。そもそも最初の入札価格がかなり高いので、一般の競売参加者には安く感じても、さらに業者は輸出元と関税局にお金を支払うことになる。結果的に安く輸入するには正攻法が一番いいようになっているのだとか。

タイではクラシックバイクやレトロカーなど、古いデザインの車両が若者の間で流行となっている。

タイでは様々な方法で、安くバイクを輸入しようと試行錯誤(!?)しているが、それも2022年2月から実施されている「中古バイク輸入禁止措置」によって不可能に近い行為となるだろう。これは違法輸入車が見つかった場合、その場で税関職員がバイクを破壊する権利を有するとのこと。

そうなれば、大型バイクは新車しか購入できず、より一部の層しか楽しめない乗り物となる。さらに「中古バイク輸入禁止措置」で懸念されているのは、過去に販売されていたクラシックバイクの輸入を禁止する点だ。
博物館に飾る目的であればタイに輸入できるが、日本や欧州などで販売されているクラシックバイクを購入してもタイでは走れない状況になることが予想される。

2005年ごろ、タイで人気だった車両はちょっと古めのバイク

余談にはなるが、当時の友人にホンダ CB400スーパーフォアのほかにタイではどんなバイクが人気だったのか、と聞いてみた。

「SR400が人気あったなあ。あとはVFR400Rもあったし、カタナも憧れたね」

2005年ごろは、400ccでも大排気量クラスだったのだ。ボクが高校生の時代はホンダ VFR400Rが人気で、バイク好きはNC30とカッコつけて呼んでいたものだ。
また、2005年以降だと思うが、ちょっと古めのバイクがバンコクを中心に大人気になった時期もあった。この頃はツーリングクラブもあちこちで設立されたという。

また、日本車だけでなく、ちらほら外車も見かけた。正規輸入車なのか、「インボイス車」なのかは判別がつかなかったが、外車メーカーの中でも特にドゥカティが一番人気だった。その記憶が人々に根付いているのか、今でも人気の外車メーカーなのだ。
しかし、バイク市場をデカくできる環境があるにもかかわらず、タイ政府などによってバイクの選択肢が狭まっていくのがタイの残念なポイントだ。

1978年3月に発売されたヤマハ SR400。エンジンは399ccの空冷4ストローク単気筒OHC2バルブで、2021年までほぼ同じ姿で生産され続けたロングセラー車。
1989年1月に発売されたホンダ VFR400R(NC30)。399ccの水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するスポーツモデル。

レポート●高田胤臣 写真●ホンダ/高田胤臣 編集●モーサイ編集部・小泉元暉

プロフィール

■高田 胤臣(たかだ たねおみ)

1998年からタイで過ごしはじめ、2002年にタイへ移住。タイにある「華僑系慈善団体」でボランティア、現地採用会社員として就業。2011年からライターの活動をし『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)をはじめ、書籍や電子書籍を多数発行。
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