雑ネタ

市販車にも関係ある? 「Cd値」や「ダウンフォース」、「ミュー」の意味とは

空力や路面に関する単位の意味を解説

スーパースポーツなどカウル付きのバイクでは、よく「Cd値」という言葉が使われます。空気抵抗を表す数値なのですが、実際これはバイクにどんな影響を与えるのでしょうか?
また空力関係ではほかに「ダウンフォース」といった言葉や、レースなどでは路面について「ミュー」という言葉も使われます。ここでは、そういったバイクにまつわる単位の意味と、市販車の場合にはどんな効果があるのかなどを紹介します。

燃費や加速性能の指標になる「Cd値」

Cd値は、バイクだけでなく、クルマなどでもよく使われます。特に、最近はハイブリッド車や電気自動車などのエコカー。これらのクルマのカタログには、燃費性能につながる指標の一つとして「Cd値」を表示しているものがあります。

Cd値とは空気抵抗係数のことで、空気抵抗の大きさはCd値に車体を正面から見た場合の面積(前面投影面積)をかけて求められます。さらに、走行するバイクやクルマにかかる実際の空気抵抗は、スピードの二乗に比例して大きくなっていきます。
そして、エンジン、車重などそのほかのスペックが同じならば、Cd値が小さいほど走行時の空気抵抗は少ないので、理論上は燃費や加速性能に優れていることになるのです。

特に、燃費性能を重視するエコカーでは、空気抵抗の低さが燃費の良さを示す目安となるため、最近はカタログなどで使われているのですね。
バイクメーカーでも、特にカウル付きの高性能バイクなどでは、空力性能を高めるために、走行時の空気の働きをシミュレートできる風洞施設でテストを繰り返し、Cd値が小さい新しいバイクの開発を進めています。

ヤマハYZF-R3の風洞実験の様子。空気抵抗を低減しつつ、効果的にエンジンを冷却できるカウル形状を追求

ヤマハYZF-R3。スクリーンも走行中のヘルメット周囲に発生しやすい乱流を低減する形状となっている。サイドカウルにはウイングを設けダウンフォース効果も追求されている

また、空気抵抗を少なくするためには、一般的に空気の流れがスムーズな流線型のデザインにすることが多いようです。新幹線や戦闘機など、スピードが出る乗り物の先端が丸い形状をしているのもそのためです。

バイクも同じで、メカニズムがむき出しでライダーの姿勢も起きる感じのネイキッドタイプよりは、車体がすっぽり包み込まれたフルカウルのスポーツタイプのほうがCd値は小さくなります。バイクレースのライダーたちが、直線で体を前傾させてカウルの中に入るのは、できるだけ空気抵抗を減らすためなのです。

空気抵抗は市販車に影響ある?

レースなど特殊な環境下ではCd値の重要性は無視できませんが、わたしたちの普段のバイクライフでCd値という指標がどのぐらい影響があるのでしょうか。

例えば、バイクに風防(ウインドシールド)を装着すると、まさにライダーのための盾となって体にぶち当たってくる風をウソのように軽減してくれます。
特にスクーターなどに装着する直立した大型のものは効果絶大です。冬の冷たい風はもちろん、日中は暖かくくても、夕方に日が沈んでくると急に寒くなる春の時期にはありがたい装備ですね。

半面、走行中の風をあれほどしっかり防いでくれる風防は、かなりバイクのCd値を大きくし、空気抵抗を増やしているように思えてなりません。そうなると、燃費を悪化させたり、心地よいスピードの伸びを殺してしまったりすることにならないかと、ついつい考えてしまうところです。

メーカー純正、アフターマーケット製問わず、さまざまな「後付け風防」があるが……(写真はベスパ GTSシリーズの純正アクセサリーのスクリーン)

しかし、個人的な体験ですが、市街地など一般道を走るスピードなら、風防の装着による変化は「ほとんどない」といえるでしょう。風防を付けたことで、満タンで走行できる距離は変わりませんでしたし、加速も普段乗りで不満が残るような物足りなさを感じさせることもありませんでした。

むしろ燃費についてはタイヤの空気圧をこまめにチェックしたり、急加速などを行わないエコ運転を心がけたりするほうが、Cd値の変化よりもはるかに実用上の効果はあると思います。

ダウンフォースは車体を路面に押しつける空気抵抗

空力性能を考える上で、Cd値と切り離せない関係にあるのが「Cl値」です。Cl値は垂直方向に働く揚力係数を表します。高速道路でスピードが出てくると、車体を上方向に浮き上げる揚力(リフト)が発生します。リフトは走行を不安定にしますし、車体がフワフワして心許ない感じがするので運転者も不安を覚えます。

そこで、Cl値を増大させ、リフトを抑えるための空気抵抗として「ダウンフォース」を得る方法があります。ただしCI値が増えるとCd値は犠牲になるため、両方のバランスを取ることが重要になります。

二輪レース最高峰のMotoGPでは、最近のマシンにダウンフォースを得るためにウイングレットと呼ばれる空力パーツが登場しています。
ダウンフォースを発生させることで空気抵抗は大きくなりますが(Cd値が大きくなる)、車体を下方向にしっかり押し付けることで、タイヤのグリップ力を高め、路面に吸い付くようなコーナーリングを可能としています。

ホンダのMotoGPマシン「RC213V」。写真は2019シーズンのマシンだが、カウル先端には大きなウイング状パーツが装着されている

そして、最近は市販のバイクでもレース参戦を前提にした1000ccクラスのスーパースポーツなどにこのウイングレット付きが増えてきています。
これらのマシンは、市販車でもサーキット走行も考慮して作られていますので、ストレートや高速コーナーなどでタイヤのグリップ力向上が主な目的でしょう。見た目もカッコイイですしね。

ミューは路面の滑りやすさを表す

また、タイヤのグリップ力と言えば、ダウンフォースだけでなく、路面の摩擦係数「μ」(ミュー)も大きく関係しています。「摩擦」ということは、つまり路面が滑りやすいか、滑りにくいかの目安になる単位なのです。
雨が降った後など、路面がぬれている時は「この道路、ツルっと転びそうで怖いなあ……」と、ヒヤヒヤしますよね。そんな時は、まさに路面のミューが小さくなっている状態といえます。

バイクやクルマの試乗記などで「路面のミューが…」なんて表現を見たことがある人も少なくないはず

一般的に舗装道路のミューは0.8前後とされています。これが濡れていると0.6~0.4、雪道になると0.5~0.2、凍結した道路では0.2~0.1にまで小さくなってしまいます。
ちなみに、マンホールのふたなどの鋼板は乾いている状態では0.8~0.4ですが、濡れると0.5~0.2と、雪道と同じようなミューになってしまいますので、雨天時などは特に注意が必要です。

レポート●紺野陽平 編集●平塚直樹

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