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横浜【モトドーウェル】の野心作に注目! Part.2 「刀フォーエバー」「刀フォーエバー・リトラ」製作の苦悩

■タイトル写真:ヘッドライトを開いた「刀フォーエバー・リトラ」。タンクなどと理想的な位置関係でライトを開閉させるために、コンパクト化したフロントカウルが特徴的。

初代カタナをモチーフに生まれた「刀フォーエバー」

先日の前編では、横浜モトドーウェルの発想と努力の成果として「RZ25」を紹介しましたが、今回はその後編です。モトドーウェルの代表的なカスタムには、初代カタナ(GSX1100Sカタナ:1981)をイメージしたモデルがあります。ご存知の方も多いスズキの名車ですが、これを現行のKATANAをベースに、手のかかるチリ合わせをしつつ、FRP外装を製作して初代カタナフォルムに変身させた「刀フォーエバー」です。

刀フォーエバー:ホイール径やジオメトリーで近代化を感じさせつつ、ギュッと凝縮された印象の青い刀フォーエバー。ゴールドのフォークほか、ブルーをあしった各部の補色的な配色が好印象。
刀フォーエバー:タンクの前後長が分かりやすい、リヤ側からのアングル。

現行のKATANAのデザインも決して悪くないものの、初代カタナの強烈な印象は色褪せる事がありません。そんな昨今に登場した「刀フォーエバー」は、初代のカタナファンはもちろん、他車種の愛好家にも知られているようです。

この「刀フォーエバー」に対しては、オリジナルを至高のものとして捉える愛好家の方の中では、おそらく賛否があるでしょう。一方で、近代テクノロジーを満載したシャシーやブレーキを活用し、当時の刀のイメージに近いパッケージとすることにも、走りの面でも改造の手間を大幅に省けるという面でも大きなメリットがあるかもしれません。

少し個人的な話になりますが、筆者は過去に元祖カタナのインプレと撮影のロケで、そこそこな距離を1100(ノーマルとカスタム車両数台)を乗り換えながら走りましたが、その際の経験や750、400のカタナと比較した場合の市街地での印象として、初代のカタナ1100は長所と短所それぞれを持っていたわけです。

まず唯一無二のデザインは、ストレートにカッコ良い。でも、一つ問題なのは大きさとライポジで、私自身そう長身なわけではないのでタンクの長さやハンドルの遠さなど、細かいところが少し気になっていたのもよく覚えています。

ニーグリップなりくるぶしでのホールドは問題ないものの、腕を突っ張らない程度の両腕の自由度が、もう少しあったら良いのになあと感じました。体格に恵まれた方には不便はない話でしょうが、刀狩り対策で国内仕様の750(GSX750S:1982)に純正採用された”耕運機ハンドル”であれば、シートの着座位置から近くなります。でも「もうちょっと低くても良かったのでは?」と発売当時は思ったものです。

運動性能の高さを感じる反面、シート高は少々手強い!?

一方で、刀フォーエバーのタンクは、元祖カタナと比較すると、短い。そのうえトップブリッジ周辺の工夫により、シートからハンドルまでの距離が近く自由度が高くなっています。

刀フォーエバー:メーター周辺にもオーナーの拘りが感じられます。様々な情報を表示可能。
刀フォーエバー:ハンドルとタンクの関係が分かりやすいカット。適度な高さ、タンクに干渉しない位置関係といった配慮が感じられます。

理想を言うのは簡単ですが、全体のラインを繋ぎ合わせてこの位置関係を実現させるのは、そうそう簡単な話ではなかったはず。またがってみると、そうしたことを実感できます。

ただ、この「刀フォーエバー」と、3型カタナ(GSX750Sの3型:1984)をモチーフに製作された「リトラ」。長距離でもへっちゃらそうなシートを持ち合わせている反面、足着きはあまり良好ではないです。ベースとなった現行KATANA自体が意外にシートが高めなのもその要因でしょうが、運動性の面ではシート座面が高い方が良いケースは多々あります。

これまた古い話で恐縮ですが、BMWのK1200RSが出た当時、盛岡まで長距離試乗に出て、シートの高さをロー&ハイで切り替えて比較しつつ走り回った結果、東北道やワインディングでは、ハイシートの方が運動性は明らかに良く感じた経験があります。シートは、低ければ良いというものではないというわけです。

ただまあ、刀フォーエバーやリトラのシート高は、あまり身長の高くない私のような高齢ライダーや、小柄な女性ライダーには少し厳しいかもしれません。今のスズキ車で言うと、Vストローム800DEの足着き性とほぼ同等のシートの高さと感じました。

刀フォーエバー:ブレーキと手を入れられたサスペンションなどにより、走り重視なのが分かるフロント周り。
刀フォーエバー:ベルトも装備されたシート周り。肉厚は十分でクッション性も良好ですが、座面はかなり高め。

この点に関しては、筆者が所有していて過去にカスタムしたカワサキZZR600のシート形状のように、“三角木馬”にならない2歩手前位の角の落とし方でクッション材を削ってみたい気がしました。

モトドーウェルの投稿記録を見ると、女性ユーザー向けにGSX-S750ベースで製作された刀フォーエバー75があり、それを拝見すると足着き性はかなり良いとの事。なので、このあたりはユーザーの要望に、ある程度応えてくれるのではないかと思います。

刀フォーエバー:タンク~シート前端を上から見たアングル。すっきりした丁寧な仕上がりが分かります。
刀フォーエバー:「秘密のフタ」ではなく、この車を走らせるためのアクセスドアで、フタを開けると奥にイグニッションキーが配置されています。

刀フォーエバーに続く「フォーエバー・リトラ」開発の苦闘

全体がよくまとまった「刀フォーエバー」に飽き足らず(?)、モトドーウェルが次いで手掛けたのが「刀フォーエバー・リトラ」です。リトラクタブルヘッドライトを採用して当時話題となったのが3型カタナ(GSX750S:1984)ですが、それよりもコンパクトに造られた「リトラ」のフロント周りが特徴的です。

刀フォーエバー・リトラ:ヘッドライト格納時の”リトラ”。菅野さんご自身は「怪獣”エレキング”に似てる」とコメントするものの、空力が良さそうな印象。
刀フォーエバー・リトラ:ライトを消灯状態でオープンしたところ。ライトの高さを青のフォーエバーと見比べていただきたい。
刀フォーエバー・リトラ:タンク下からテールエンドまでのラインの繋がりが美しい。
1984年に国内販売されたGSX750S(Ⅲ型)は、従来のハンス・ムートデザインではなくスズキの社内デザインを採用。リトラクタブルヘッドライトが最大の特徴で、コアなファンが存在。

四輪のチューニングやラジコンカーの方面でも、ユニークな企画製作で知られるモトドーウェルCEOの菅野さんですが、彼女には元々”確かな企業”で技術を磨き続けていたバックグラウンドがあるのでした。

この「リトラ」のリトラクタブルライトの格納システム、変形ロボットのような動きを部分的に思いつかなかったら、実現しなかったかもしれません。開発の初期には、トラブル続発でお店が閉まった後も自宅で長時間考え込んだり部品を作り直したりの連続だった模様。小部品やアクチュエーターがうまく作動してくれず破損が発生したり、モーターサイクルショー直前には最初の動き出しで開閉機能がうまく作動せず、相当悩んだとのこと(ほどなく解決)。

寝食を忘れて作業に没頭し、帰宅後に玄関先でそのまま気絶状態で寝入ってしまったエピソードも伺いましたが、そうしたのめり込みぶりなくしては、モーターサイクルショーでの展示は実現しなかったのでしょう。

刀フォーエバー・リトラ:エンブレムにも遊び心で最後のR(リトラのR)に赤を配色。
刀フォーエバー・リトラ:KATANAとFOREVER RETRAのロゴはステッカーではなく、ペイントでの仕上げ。
刀フォーエバー・リトラ:フォークの位置からカウリング先端までの距離に注目。このスペースでリトラクタブル機能を実現しているのです。
刀フォーエバー・リトラ:カウルからタンクへ繋がるエッジの効いたライン構成。
刀フォーエバー・リトラ:曲線と直線の繋がりで工夫を感じさせるリヤビューの造形が美しい。
刀フォーエバー・リトラ:同じ位置からリトラクタブル(格納式)ヘッドライトの開閉を比較。2軸式でスラスト(前進から後方移動)させる機構をコンパクトなスペースに内蔵。
刀フォーエバー・リトラ:同じ位置からライトアップ状態を見る。ヘッドライト左右に付くのは、法規制に対応した昼間点灯用のDRL兼ウインカー。
刀フォーエバー・リトラ:ゴールドのステップ周りに対して、サイレンサーは黒と赤いロゴで引き締めた印象。
刀フォーエバー・リトラ:意外にも、あまり考えずに選んだというミラーだが車体にもいい雰囲気でマッチ。
刀フォーエバー・リトラ:ブルーのフォーエバーは長身のオーナーに対応したシート高のようですが、リトラはそれよりは馴染みやすいシート高でした。

「刀フォーエバー」と「リトラ」について、個人的な感想も含めて忖度なく書かせていただきましたが、本当によく作れたものだと思います。菅野姐さんへの敬意と親しみが、以前に増して深まった気がしました。長時間取材と撮影にお付き合い下さり、有難うございました。

模型界にも人脈のある菅野代表。家でも仕事の続きをしてしまうというメカフェチ確定の御仁。

【取材協力】モトドーウェル
https://www.motodowell.com/

レポート&フォト●小見哲彦

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