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リニアなレスポンス特性で扱いやすい688cc並列2気筒エンジンを搭載したヤマハのスーパースポーツモデル、YZF-R7がモデルチェンジ。日本では2026年5月29日に116万6000円〜という車両価格で発売予定だが、一足早く海外からインプレッションをお届けする。リポーターはイギリス人モーターサイクルジャーナリストでマン島TT参戦などレース経験も豊富なアダム・チャイルド氏だ!
※本文で言及されている車両価格や周辺事情などはイギリスおよびヨーロッパ諸国のものです。日本国内とは異なる箇所があります。
豊富な電子制御とシャープなシャーシで進化
近年、各メーカーは自社のスポーツエントリーモデルを、ビギナーや若者を引きつけるバイクにするために躍起になっている。ヤマハの人気車であるYZF-R7は、ライバルたちに包囲されているような状況だ。

スポーツエントリーモデルのセグメントは急成長しており、そこに属するバイクは改良され続けている。軽量かつ手頃な価格であるこれらのマシンに対するユーザーの期待感は高く、スポーツバイクは決して衰退していないと言える。今年からスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)と並行して、YZF-R7やCBR600RR(ホンダ/599cc並列4気筒)、GSX-8R(スズキ/775cc並列2気筒)、ニンジャZX-6R(カワサキ/636cc並列4気筒)、RS660(アプリリア/659cc並列2気筒)、デイトナ660(トライアンフ/660cc並列3気筒)、450RR(コーベ/443cc並列4気筒)といったバイクが用いられるスポーツバイク世界選手権(WorldSPB)がスタートしているのも象徴的だ。

ヤマハは2022年にこのクラスにYZF-R7を投入して高評価を得たが、その後、日本やヨーロッパ、さらには中国からのライバル参入が激化。それに対抗するために今年、YZF-R7の性能を大幅に向上させ、市場に再投入することとなったのである。

ヤマハは新型YZF-R7を開発するにあたって、日常的な乗りやすさを維持しつつ電子制御機能を充実させて、公道とサーキットの両方でさらなるパフォーマンスを引き出すことを目指した。おなじみの689cc「CP2(クロスプレーン・コンセプトに基づいて開発された2気筒)」エンジンの内部構造は従来型から変更されていないが、Y-CCT(ヤマハ・チップ・コントロールド・スロットル=ヤマハ電子制御スロットル)の導入によってより精密な制御が可能となり、最大トルクがわずかに向上したほか、ライディングモード(スポーツ、ストリート、レイン、カスタム、トラック1/2/3/4の8種類)やトラクションコントロールなどのライダーアシスト機能が初めて搭載された。

そして、スポーツエントリーモデルであるにもかかわらず、走行中の車体姿勢の変化をライダーアシスト機能に反映させるための6軸IMU(慣性計測装置)を装備しているという点は特筆すべきであろう。ライダーアシスト機能の内容も、ABSやトラクションコントロールに加えて、スライドコントロール、リフトコントロール、クイックシフター、エンジンブレーキマネージメント、ローンチコントロール、バックスリップレギュレーター、さらにクルーズコントロールやスピードリミッターまで搭載されており、その多彩さはヤマハスーパースポーツモデルのフラッグシップであるYZF-R1に匹敵する。70馬力強の最高出力で、価格が9,500ポンド強からというクラスのスポーツバイクとしては、驚くほど充実した装備となっている。

車体面では、ヤマハ独自の鋳造技術で軽量化されたホイールにはブリヂストン バトラックスハイパースポーツS23が装着され、サスペンションも刷新、フレームは剛性が高められている。また、ライディングポジションは従来型よりリラックスしたものとなり、シート高はわずかに低くなった。燃料タンクの形状変更も実施されている。

ヤマハは、公道とサーキットの両方で新型YZF-R7の性能を試すことを私たちメディア陣に望んだ。そのため、スペインからポルトガルへと160kmの公道を走り抜けた後、2024年にオープンした新設コース「Circuito do Sol」でサーキット走行を行うという濃密な1日を過ごすこととなったのであった。
柔軟な足周りと洗練されたエンジンで走るのが楽しい!
新型YZF-R7には3つのカラーバリエーションがある。ブルーとブラック、そして、ヤマハ発動機創立70周年を記念して用意された、1964年に250cc世界チャンピオンマシンとなったRD56に着想を得たという、象徴的なホワイト×レッドのカラーリングである。スーパーバイク世界選手権のファンなら、たちまち30年ほど前、芳賀紀行選手など伝説のライダーたちが駆った元祖YZF-R7(OW02)の時代へと誘われるだろう。そして私自身も、すっかりこのカラーに魅了されてしまった。

とはいえ、5バルブの749cc並列4気筒エンジンをアルミ製デルタボックスⅡフレームに搭載していた元祖YZF-R7は、最高峰のレース参戦を目的に製造された限定生産のホモロゲーション・スペシャルという、まさに“生粋の独自性”を備えた存在であり、2022年以降のYZF-R7とは多くの点で比較にならない。

一部の純粋血統主義者からは「このホワイト×レッドのカラーリングは極めて特別なヤマハ車にのみ採用されるべきだ」、あるいは「歴史の1ページに永遠に留めておくべきだ」という声も間違いなく上がるだろうが、この新型YZF-R7に非常に良く似合っているカラーリングであることも事実だ。

平凡なレベルを凌駕しているのは、カラーリングだけではない。新形状のトップブリッジはファクトリー仕様のYZF-R1を彷彿させ、フルアジャスタブルなフロントフォークは本格的なサーキット走行性能をほのめかし、Bluetooth接続機能を備えた新しい5インチのフルカラーメーターは高級感を加えている。

1万ポンド未満のスポーツエントリーモデルをこれほど視覚的に魅力あふれるものに仕上げるのは容易なことではないが、ヤマハはそれを成し遂げた。初心者からベテランライダーまで、誰もが外観を見ただけでYZF-R7を高く評価するだろう。このクラスでは他に類を見ないほどの“感動的要素”を、このバイクは秘めているのだ。
試乗はスペイン南西部のアラセナからスタートし、まずは昼食会場でもある「Circuito do Sol」へと公道を走った。

YZF-R7のコックピットビューは紛れもなくヤマハらしさを感じさせる。スイッチ類はメニュー選択用のジョイスティックやダブルタップ式のウインカースイッチ(どちらもライダーによってその操作性に好き嫌いが出そうだ)など、最近のヤマハ車でおなじみの構成が採用されている。

新型ディスプレイはすっきりとした見た目で、視認性と操作性が良く、表示パターンはラップタイムをメインにしたスポーティなものから、情報量の多さを重視したものまで、4種類のテーマから選択できる。

ライディングモードの変更は走行中でも可能で、ほとんどのライダーアシスト機能も同様に切り替えられる。変更操作は比較的シンプルで、このクラスのバイクとしては最高レベルのディスプレイだと言えよう。

ライディングポジションは従来型と比べるとよりリラックスした印象で、その違いはすぐに実感できる。ハンドルバーは3.6mm高くなり、ライダーに8.4mm近づき、幅も12mm広くなった。シート高は従来型より5mm低い830mmとなったが、実際にまたがるともっと下がっているようにも感じる。

従来型YZF-R7は玩具じみていると思われるほどコンパクトだったが、新型YZF-R7はより大人びて決然としているように感じられる。ワイドなハンドルバーがこれを大きく後押ししていると思うし、新形状のトップブリッジなど主要な視覚的要素の質の高さも一役買っている。高級感がバイクに備わっているのだ。
ヤマハはYZF-R7のフレームとスイングアームの剛性を高めた(これはおそらくサーキット走行やレースを意識した変更だろう)が、その一方でKYB製のフルアジャスタブルフロントフォークはソフトな設定にしている。従来型との車体セッティングの違いははっきりと感じられ、特にサスペンションからライダーに伝わる情報量が増している。乗り心地はよりしなやかで快適になり、サーキット志向のマシンというよりは、むしろ汎用的なストリートモデルに近い。スペインの道路の一部は荒れていて穴だらけだったが、YZF-R7はそのような路面からの衝撃を難なく吸収してくれた。ゆとりのあるライディングポジションも相まって、あえて言うなら、リラックスできて快適なスポーツバイクである。新型YZF-R7の感触をつかむにつれ、このバイクで午前いっぱい走るショートツーリングに出かけるという考えが、突然魅力的に思えてきた。

エンジン性能に関係する変更点は、ライド・バイ・ワイヤの採用に伴って吸気系と燃料噴射の設定が調整されている程度だ。最高出力は8750回転で73馬力と公称されており、これは従来型と同等。最大トルクは6500回転で従来比プラス0.1kgf・mの6.9kgf・mと、向上してはいるがわずかな差だ。
しかし、新型YZF-R7を実際に走らせたときのCP2エンジンのフィーリングは、従来型よりも滑らかで力強く感じられ、特に低中回転域でそれが際立っている。アップ・ダウン両対応のクイックシフターもスムーズだが、試乗する中で、従来型に比べてギヤチェンジの回数が減っていることに気づいた。追い越しを素早く済ませたいときでも、ギヤを2段下げるのではなく、1段下げるだけで十分になったのだ。また、町を出て4速や5速に入れたままで走っている自分自身のズボラな運転から、それらの段数でも十分な加速感を得られているという事実を見出した。新型YZF-R7は驚くほど洗練されている。

もちろん、エンジンを回す楽しさを追い求めることもできる。CP2エンジンは全域でトルクフルだが、レッドゾーンへ向かってぶん回すような走りにもマッチする。リフトコントロールをキャンセルして、クラッチレバーの操作でコントロールしてあげれば、1速や2速で前輪を軽々と浮かせることもできる。
このバイクは決して遅いわけではなく、公称されている73馬力よりも力強く感じられる。公道試乗中、アールの大きいカーブが続く高速区間でその本領を発揮し、時速60マイル(約96km/h)で走行する車列を安全に追い越した後、時速90マイル(約145km/h)以上まで加速することもできた。そして、よりせせこましく曲がりくねった区間に入っても、新型YZF-R7は再び期待をはるかに上回るパフォーマンスを見せた。ソフトなサスペンション設定とグリップ力の高いブリヂストン製スポーツタイヤの組み合わせが豊富なフィードバックをもたらし、自信を大いに高めてくれる。そのため、私はニースライダーを路面にしっかりと擦り付けながらカーブに進入することを繰り返した。

新型YZF-R7のサスペンションは、しなやかでありながらしっかりとしたサポート感があり、公道を走るスポーツバイクのセッティングとしてまさしく理想的だ。そして、カーブが途中でわずかにきつくなっていても、車体傾斜感知型ABSのおかげで、膝を擦りながらでもフロントブレーキを軽く掛け増しすることができる。路面状態が劇的に悪化した場合でも、万が一に備えてスライドコントロールとトラクションコントロールが備わっている。
新型YZF-R7はミスを犯しがちな初心者や経験の浅いライダーをターゲットとしており、搭載されている最先端の電子制御は、そういったライダーを助けるのと同時に、経験豊富なライダーが運転技術をふるうのを最大限にサポートしてくれる。私も初めてスポーツバイクを所有したときにミスをやらかしたものだが、あのバイクにも車体傾斜感知型ABSが搭載されていれば良かったのに……と心から思う。今ある傷跡の原因となった事故のいくつかは避けることができたであろうから。なお、新型YZF-R7のライダーサポート機能は、介入を望まない場合はいつでもキャンセルすることができる。

唯一、新型YZF-R7の柔軟なセッティングのわずかな欠点と言える部分は、走りのペースを上げたときに明らかになる。公道試乗中のほとんどの時間、新型YZF-R7のフィーリングとグリップレベルは常に高い水準を維持していたものの、カーブの奥深くに向かってレイトブレーキを掛けたり、ブレーキを引きずりながら進入していく際、ストローク量120mmのフロントフォークが過度に沈んでしまい、もっと踏ん張ってほしいと感じられた。ただし、これはサスペンションのセッティングを変更することで対応可能だということは、後のサーキット走行で確かめることができた。
☆【ヤマハ YZF-R7(2026) 試乗記:サーキット編】に続く……
ヤマハ YZF-R7(2026) 国内仕様諸元
エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:80.0×68.5mm 総排気量:688cm3 最高出力:54kW<73ps>/8,750rpm 最大トルク:68Nm<6.9kgf・m>/6,500rpm 燃料タンク容量:13L(無鉛レギュラーガソリン指定) WMTCモード燃費:25.2km/L 変速機:6段リターン 全長×全幅×全高:2,070×725×1,160mm ホイールベース:1,395mm シート高:830mm 車両重量:189kg タイヤサイズ:(F)120/70ZR17 (R)180/55ZR17 カラー:ブルー、ブラック、ホワイト 価格:116万6000円(ブルー、ブラック)、125万4000円(ホワイト) 発売日:2026年5月29日



report:Adam Child photo:Ant Production/ヤマハ まとめ:モーターサイクリスト編集部




































