独自性の追求こそが顧客満足につながる
ライディングウエアの老舗 、クシタニのデザイナーにインタビュー。 製品開発に限らず、生産管理から店舗運営までクロスオーバーした視点で、新製品「キマイラコンテンドジャケット」を題材に良品を生み出す努力を語ってもらった。インタビューを受けてくれたのは、企画生産管理部 企画部長の鷲澤 亨さんだ。
──キマイラコンテンドジャケットは新製品ですね。
以前から展開しているスポーツモデルのコンテンドジャケットを着てみたいけれど、ロゴがたくさんついているのは苦手というお客様の要望が開発のきっかけです。
そこで、パターン(型紙)は「コンテンド」を踏襲し、生地感や見た目は同じく定番のシンプル系な「アメニタジャケット」から採用。2モデルの中間ということで、合成生物のキメラから名付けました。
──3つの製品の違いは?
コンテンドとキマイラは前傾姿勢なのに対し、アメニタはアップライトです。また、キマイラとアメニタは縫い目にシームテープを貼った簡易防水仕様。多くの場合、フロントファスナーを止めているステッチは表に出るのですが、これらには縫った上から防水テープを貼っています。
一方のコンテンドはシームテープを付けると硬くなってしまうので、スポーツモデルであることを優先して貼っていません。選択肢を増やすことでブランドに奥行きを持たせたいと考えており、基本的にはお客様自身で要望に合ったものを選んでいただくというスタンスです。
──製品開発でのこだわりは?
お客様に喜んでいただくためには独自性の提供が重要だとえています。生産効率を上げて安く供給するメーカーが多いのですが、私たちは生地も自社で制作し、 パターンの設計も一元管理しています。わざわざ難しい形状にしているのも、ライディングでのメリットを提供するためです。襟ぐりを縫製しづらくてもコの字形にしているのは、乗車姿勢で首を上げるのを阻害しないため。平面の生地を体に沿わせるには立体的に計算する必要があり難しいのですが操作性向上のためにアームホールをワンパーツにしています。
──デザインはどのように?
アーカナシリーズなど毛色が違うように見えるものもありま すが、そこにも統一性を持たせてひとつのブランドであることを意識しています。その中で生地をエンボスで華やかにしたり、切り替えしの量を調整したりと、アイテムごとにまぶすデザイン量を変えてバリエーションをつけています。 富士山のロゴを外してもクシタニだと分かるデザインを心掛けてい ます。
― 品質管理もご担当を?
企画開発から検品、納品まで私が全て担当しています。多くのメーカーさんは数十着のうち一着を見て、それがダメならNOという抜き打ち検品。しかし私たちは国内で一着ずつ全て検品するので、問題があればそこでストップでき、クレーム率は飛躍的に減ります。もちろん人の目で見るので100%ではありませんが、そうした努力が品質を評価いただいているゆえんだと思います。
多くのウエアメーカーが量販店を通しての販売が主体の中、 クシタニは昔から実店舗を運営しています。
──メリットや大変さは?
何かあればクシタニのお客様は諦めず店舗に持ってきていただけます。その情報が私に集約されノウハウとなり、品質向上につながる。店舗運営は大変ですが、同時に恵まれていると感じます。
K-2379 キマイラコンテンドジャケット製品概要
価格:4万1800円
カラー:ブラックアウト、ホワイト、ブラックカモ
サイズ:M、L、L/XL、LL、XL
プロテクター:肩、肘、背/胸 (オプション)
KUSHITANI PROSHOP 世田谷
玉川通りと環八通りの交差点付近に構える店舗。駐車場も併設されており、アクセス良好。 新作の販売はもちろん、レンタルスーツの利用も可能だ。
住所:東京都世田谷区瀬田3-15-9
営業時間:11:00〜20:00
定休日:水曜 TEL:03−3708−3551
レポート●田中伸吾 写真●長谷川拓司/クシタニ 編集●モーサイ編集部・中牟田