バイク用のグローブとフットウエアは操作性・安全性に直結するだけあって、ユーザーからシビアな視線が注がれている。価格も決して安くはないものが多いため、期待値も高い。日々、そうした要望やプレッシャーを受けながら製品開発にいそしむメーカーの方ならば、ベストアイテム探しの助言をしてくれるはず。
ということで今回、高品質と独自性を理念としながら長年にわたりライディングウエアを作り続けてきたクシタニの企画開発者に話を伺った。お二人とも市場動向や他社製品にも精通しており、製品の素材やパーツ選択理由は快適性と安全性に基づくものだった。ここでのアドバイスを製品選びの目安にしてほしい。
教えてくれた人たち
クシタニ 企画生産管理部 グローブ担当 小澤浩史さん
●グローブやその他レザー製品に携わる。新製品の企画開発はもちろん、ユーザーからの意見をフィードバックし、定番製品のブラッシュアップもし続けている
クシタニ 企画生産管理部 フットウエア担当 鷺澤 亨さん
●シューズのみならず、ウエア全般のデザインや生産管理に携わる。生地やパーツなどの素材はもちろん、工場の持つ技術にも詳しく、日々研究を重ねている
Q.春夏のツーリングで快適なグローブを選ぶポイントを教えてください
A.通気性とフィット感にこだわりましょう
グローブはやはりフィット感やグリップ感が大切です。また、春夏は特に汗ばみやすいので、安全面からも通気性に優れた製品を選びましょう。エアーコレクトグローブは甲側に吸汗速乾機能を備えた2ウェイストレッチメッシュ素材を採用し快適性を追求。手のひら側は強度とグリップ性に優れたスウェード調の人工皮革を使用しています。軽快な操作性を重視する方にお薦めです。より防護性を求める方には、レーシングモデルをツーリング向けに改良したエアーGPSグローブをご提案します。国産の牛革を使用し、写真のモデルでは白い部分は傷を防ぐために塗装した牛革を採用。手のひらは汗が浸透しにくいように撥水加工し、またグリップ感を高める目的で塗装は無しです。転倒時に怪我をしやすい薬指と小指は高強度のザイロン繊維で補強しています。また、ライニングをポリエステルにすることで快適な着け心地を確保するほか、革が傷みにくく、色落ちもしづらくしています。 (小澤)
オススメ!
K-5339 エアーコレクトグローブ
オススメ!
K-5340 エアーGPSグローブ
Q.サイズ選びで迷ってしまいます
A.試着で確認すべき点があります
近年はオンラインショップを利用される方も多いかと思いますが、初めて購入する商品はやはり店頭での試着は必須です。手の感覚は非常に繊細ですし運転への影響も大きいので、ご自身の手に合うものをじっくり選んでいただきたいです。グローブをはめて拳を握ってみて、甲部や指先が突っ張りすぎたり緩すぎたりしないかチェックしましょう。 (小澤)
フットウエアはアイテムごとに木型が異なるので、こちらも試し履きは必須です。一般的に靴は爪先からかかとまでの足長を目安にサイズを選びますが、同時に甲周りのフィット感も気にしてください。経年で横に広がることがあるので、緩すぎないものを選ぶのがポイントです。また、インソールによって着用感は大きく変わるので、サイズ感の調整に用いるのも手段のひとつです。なお、レザーブーツは履いているうちに革が伸びると言う人がいますが、実際にはほとんど伸びることはありません。特にライディングシューズは厚い革なので。伸びるというより、足の形状に革がこなれてくるという感じが表現として正確かと思います。 (鷺澤)
Q.革製品の取り扱いで注意すべきことは?
A.水分は革の大敵です
革は一般的に乾くときに油分が抜けることでダメージを受けます。ですので、なるべくぬらさないこと、急激に乾燥させないこと、適度に油分を補充する「保革」をすることが大切です。ちなみに、クシタニのレザーブーツはフッ素加工をしたKWPレザーという撥水性の高い革を使用しているので、水分を含みにくく乾燥も早く、革の風合いはほとんど変化しません。 (鷺澤)
レザーグローブも同様に水は避けるべきです。汗をかいたとしても水での丸洗いなどをせず、ブラシとぬれタオルで汚れを落とし薄くオイルを塗るメンテナンスにしていただければと思います。使用頻度などにもよりますが、クシタニの製品はきちんとメンテナンスすれば数年間は使い続けられるので、ぜひ大切にしてあげてください。 (小澤)
Q.春夏のツーリングにお薦めのフットウエアってどんなものですか?
A.街歩きにも使いやすいカジュアルなタイプです
ツーリング先での街歩きやタウンユースになじむカジュアルなデザインのものが使いやすいと思います。市場のライディングシューズのラインアップを見渡すとスポーティなデザインの占める割合が多かったことから、カジュアルに使えるものが欲しいと考えてフローシューズを制作しました。この製品は走行風を取り入れるためにアッパーにはパンチングメッシュを、シュータンにはポリエステルメッシュを採用しているので、春夏のツーリングでも快適です。ライディングではもちろん、クルマの車内エアコンを足元に向けていただいても風を感じられるくらいに通気性にこだわっています。BOAフィットシステムは数年前のモデルから採用しているのですが、カジュアルさを追求するため、レースを通す8つのガイドのうち6つをアッパーで隠すことで、メカニカルな印象を軽減させています。また、今シーズンでは高級感のある裏革を随所に施し、デザイン上のアクセントとしています。 (鷺澤)
オススメ!
K-4566 フローシューズ
report●田中伸吾 photo●永田まさお
クシタニ
TEL:053-441-2516
https://www.kushitani.co.jp