2019年に、免許取得に必要な日数が最短3日から2日に短縮され注目を集めたAT小型限定普通二輪。その免許で乗れる原付二種スクーターの多くは2つのタイプの輸入車だ。1つは国内メーカーの海外工場で作られるバイク(ベトナム製のホンダPCX、インドネシア製のヤマハNMAX、台湾製のスズキ スウィッシュなど)、もう1つはここで紹介する海外メーカー製スクーターだ。
クラッチ操作が必要なく、小回りが利き、燃費性能に優れる小型スクーターは、日常の足=シティコミューターである。そのため、コミューターとして必要な性能を突き詰めていけばいくほど”実用車”になりがちだ。だからこそ、他人とは違う個性的なモデルに乗りたいと思う人も少なくないだろう。
そんな人にお薦めしたいのが、個性的なデザインを採用した海外メーカーの原付二種スクーターだ。ここでは、日本メーカー製とは異なるテイストを持つファッショナブルなモデルやスポーツモデルなど、実用性一辺倒ではない、“楽しめる”輸入原付二種スクーターを紹介しよう(一部モデルは排気量が異なる同形モデルや日本未導入カラーの写真も含まれる)。
ベスパ プリマベーラ125 ABS

●ベスパ プリマベーラ125 ABS
価格:46万7500円
カラー:イノチェンツァホワイト、ミッドナイトブルー、ベージュ、ミントグリーン
輸入スクーターとして最も有名なのがイタリアのベスパだろう。このプリマベーラは、50年以上の歴史を持つベスパを代表するスモールモデルだ。空冷単気筒OHCエンジンは国産スクーターと同等の10.7馬力/1.04kgmを発揮し、安定感と軽快感を両立する12インチホイールと相まって街なかをキビキビと走ることができる。エッジを廃したスタイルは国産車とはひと味違う雰囲気を持ち、スピードに依存しない“移動する楽しさ”を味わえるはずだ。最新モデルらしく標準でABSやUSB給電ポート、イモビライザーなどを装備し、ヘッドライトとテールランプは高輝度LEDとなる。今年4月には春を意味するプリマベーラの名にピッタリのミントグリーンのカラーも追加された。原付二種スクーターをおしゃれに乗りこなしたい人にピッタリの1台と言える。

●新色のリラックスグリーン
キムコ ターセリーS 125

●キムコ ターセリーS 125
価格:27万5000円
カラー:マットシルバークリスタル、ディープブルーメタリック
欧州でも高い人気を誇る、台湾ナンバー1のバイクメーカーがキムコ。このターセリーSは、石畳が多いヨーロッパの道でも安定して走れるクラス最大級のフロント16インチ/リヤ14インチホイールと、乗り降りしやすいフラットフロアタイプながらPCXやNMAXを超える全長2085mmの大型ボディが特徴。大型スクリーンとナックルガード、リヤボックスを標準装備し、国内メーカー車よりも安価な価格設定も魅力だ。エンジンは11.3馬力/1.06kgmの性能を持つ空冷単気筒OHCで、ABS付きの前後ディスクブレーキが備わる。灯火類は全てLEDで、ハンドル脇にはUSB給電ソケットも装備。優れた実用性、使い勝手の良さ、スタイリッシュさを兼ね備えている。

●ヘルメットは、シート下に1つ、リヤボックスに1つ収納可能

●比較的アップライトな乗車姿勢。大柄なサイズなのでタンデム走行もしやすい
ランブレッタ V125 Fix/Flex

●ランブレッタ V125スペシャル
価格:41万円/バイカラーは46万円
カラー:[Fix]オレンジ、マットグレー
[Flex]レッド、ブルー、ホワイト、ブラック、ブラウン、
[Flex・バイカラー]ホワイト+レッド、ホワイト+ブルー
1947年創業のイタリアの二輪メーカーで、70年代に工場が閉鎖されたが、2017年に新生ランブレッタとして復活。スチールモノコック製のボディに50cc、125cc、200ccエンジンを積むVスペシャルシリーズをラインアップ。いずれも、固定式フロントフェンダーの「Fix」と可動式フェンダーの「Flex」を用意する。原付二種となるV125スペシャルは、10.2馬力/0.94kgmを発揮する124.7cc空冷単気筒エンジンを搭載。やや角張ったスタイリングはレトロ感が漂うが、灯火器は全てLED式で、前後コンビブレーキも搭載される。日本ではサイン・ハウス車両事業部が取り扱い、正規販売店だけでなく、全国どこのバイクショップからも購入できるのが特徴だ。

●フィックスモデルは、フロントフェンダーの形状がフレックスモデルと異なるがその他のパーツは共通
プジョーモトシクル ジャンゴ125

●プジョーモトシクル ジャンゴ125 ABS
価格:38万2800円
カラー:マットグレー、マットブラック、ディープピンク
フランスの自動車メーカー、プジョーの二輪部門として誕生したプジョーモトシクルは、ジャンゴ、シティスター、スピードファイトという3つのスクーターを用意する。その中で最も広いバリエーションを持つのが、柔らかな曲面を用いたスタイリングや独立したタンデムシートが特徴のジャンゴだ。50cc、125cc、150ccモデルをラインアップするが、原付二種のジャンゴ125は10.2馬力/0.9kgmの空冷単気筒OHCエンジンを搭載し、フロントABS付きの前後ディスクブレーキも採用。フロントシート下にはヘルメットも入るトランクを装備しており、グローブボックス内には12Vシガーソケットも備わる。レーシーなデザインのスポーツや、ツートーンカラーのエバージョンなどバリエーションも豊富だ。

●左はジャンゴ125スポーツABS、右はジャンゴ125ABSエバージョン(2018モデル)。価格はいずれも39万3800円
イタルジェット ドラッグスター125

●イタルジェット ドラッグスター125
価格:63万8000円
カラー:マットブラック×レッド×ホワイト、マットブラック×イエロー、マットブラック×ブロンズ
個性的という点で他の追随を許さないのがイタルジェットのドラッグスターだ。2018年のミラノショーで話題になった新型ドラッグスターは、1995年登場の初代とは異なる、より独創的なスタイリングで登場。この125ccモデルは、アルミプレートを備えたトレリスフレームに14.9馬力/1.27kgmの性能を持つ水冷単気筒DOHCエンジンを搭載。路面からの振動をステアリングに伝えないI.S.S.(インディペンデント・ステアリング・システム)を採用し、油圧式ショックアブソーバーとの組み合わせによりノーズダイブを抑えたブレーキングを可能としている。車体構成は200ccモデルと同じため、フロント120/リヤ140サイズの太いタイヤも特徴だ。“魅せる”スクーターとしては最右翼のモデルと言えるだろう。

●センタートンネル部にショックアブソーバーを備えた
I.S.S.フロントサスを採用。
サスペンションは前後ともスプリングのプリロード調整が可能
キムコ ダウンタウン125i ABS

●キムコ ダウンタウン125i ABS
価格:52万8000円
カラー:パールブラック、マットグレイメタリック、マットホワイト
兄弟モデルのダウンタウン350iと共通のボディは、国産250ccスクーターはもちろん、スズキ バーグマン400よりも大きい全長2250mm×全幅780mm×全高1345mmという堂々としたサイズを持つ。その車体を受け止めるためサスペンションは350ccモデルと共通とし、前後ブレーキにはボッシュ製9.1M ABSが組み合わされる。エンジンは14.3馬力/1.1kgmを発揮する水冷単気筒OHCで、39度の最大バンク角によりスポーティな走りも得意だ。その大きなボディを生かし、2個のフルフェイスヘルメットが収納可能なシート下トランクを備え、フロントにはアクセサリー充電ソケット付きのデュアルグローブボックスも装備する。タンデム走行を重視したいなら候補の筆頭に挙げられる1台だ。

●外光センサー式LEDルームランプを備えた
大型スクーターと同等のシート下スペースを持つ

●ナンバープレートを見なければ原付二種にとは思えない大きなボディは
タンデム走行にもピッタリだ
プジョーモトシクル スピードファイト125 R-CUP

●プジョーモトシクル スピードファイト125 R-CUP
価格:36万7400円
カラー:アイシーホワイト
シリーズのアイコンでもあるデュアルヘッドライトを採用した、プジョーモトシクルのスポーツスクーター。最高出力11馬力、最大トルク1.1kgmとジャンゴよりもハイスペックな水冷単気筒OHCエンジンを、全長1900mm以下、乾燥重量116kgのコンパクトで軽量なボディに搭載。タイヤは前後とも130/60-13サイズと太く、前後連動機構を持つフロントブレーキにはペタルディスクブレーキを採用するなど、スポーティなデザインにふさわしい性能を持つ。デジタルディスプレイ下のダッシュボードには、ナビアプリなどを使ったツーリング時に便利なスマートフォンホルダーを標準装備している。
日々の生活が楽しくなる、輸入スクーターがオススメ!
コロナ禍で自粛ムードが続く中、バイクの販売・登録台数は意外にも堅調だという。統計がある国内4メーカーでは、海外製モデルが多い原付二種は82.2%と減少したが、近年減少傾向にある原付一種が前年比で93.1%、趣味性が高い小型二輪(251cc以上)は96.3%と比較的好調で、軽二輪(126〜250cc)は前年比109.7%と増加に転じている。その要因としては、”密”になりやすい電車やバスなどの公共交通機関を避ける動きがあったこと、バイクの修理を行う社会インフラとして二輪販売店が営業を続けたことなどが挙げられるという。
バイクという乗り物の良さを改めて感じたい、でも街でよく見る実用的なバイクはつまらない。そんな人はぜひ輸入スクーターにも注目してほしい。国産スクーターとはひと味違う個性的なデザインは、普段使いだけでなくちょっと遠くのカフェや普段はクルマで出掛けるような場所まで、ショートツーリングに出掛けたくなること請け合いだ。
輸入車と聞くと”高い!”と思われるかもしれないが、PCXが34万8700円、NMAXは35万7500円なので、ドラッグスター125やダウンタウン125iなど一部のモデルを除けば価格は国内メーカー車+5〜10万円程度に納まり、ターセリーSはむしろ国内メーカー車よりも安い。大型バイクのような専売店は少ないが取り扱っている二輪販売店は比較的多いので、購入のハードルはそれほど高くはないはずだ。
まとめ●片倉義明