試乗インプレッション

本場・イギリス生まれのハイパフォーマンスカフェレーサー! TRIUMPH SPEED TRIPLE 1200RRの衝撃

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「RR」と言えば、フルカウルをまとったレーシーなバイクが思い浮かぶライダーも多いのではないだろうか。しかし、トライアンフの「RR」は、ひと味違ったインパクトを備えたバイクだった!

姿と走りの絶妙なバランス

2021年にフルモデルチェンジされたスピードトリプル1200RSをベースに、フロントフェアリングを装着したRRが登場した。通常は、フェアリング装着モデルが先にあって、そこからネイキッドマシンが誕生するという流れが多いのだが、元祖ストリートファイターとも言うべきスピードトリプルからフェアリング装着モデルが派生したというのは面白い。

そして、興味深いのはそのスタイリングである。ハイパフォーマンスマシンのフェアリングというと「どれほどまでに空力が優れているのか? 防風効果は?」といったテーマと向き合うこととなる。結果的に、メーカーが異なっても見た目が類似する傾向もないわけではない。しかし、RRに与えられたフェアリングはレトロなロケットカウルルックで、カフェレーサー然としたスタイリングが新鮮である。それでいて、ヘンに異彩を放つようなアンバランスさはなく、全体としてきれいにバランスされているのも特徴だ。

またがってみると、やはり前傾がやや強めのスポーティなライディングポジション。とはいえ、いわゆるカリカリなレーサーベースマシンなどと比べるとハンドル位置は低すぎることはなく、シート位置にしても、さほど腰高感はない。ステップ位置もバンク角重視で設定しているといった雰囲気は薄く、ピリピリとした緊張感をライダーに与えるといったことがない。そして、とにかくスリムでマシンが軽い。使い勝手や快適性を考えればRSのライディングポジションは魅力的であるが、RRの人車一体となった姿は(自分では確認できなかったとしても)さらに魅惑的であるといえる。

「優美さ」もテーマのスタイリング

丸目1眼ヘッドライトと、ロケットカウル的なコックピットフェアリング、低く構えるライディングポジションによりカフェレーサーの雰囲気が満点。また、RSよりもカーボンパーツを増やすことで高級感を高めている

大出力を自在に楽しめる足周り

180馬力を発揮するエンジンはスピードトリプルRSと完全に同じスペック。軽量小型化が徹底されているので車重低減にも貢献
強烈なパワーに対して十分な制動力を発揮すべく、フロントはφ320mmフローティングディスク+ブレンボ スタイルマラジアルマウントモノブロックキャリパーを採用。リヤはφ220mmディスク+ブレンボ製ツインピストンキャリパー
前後サスペンションはともにオーリンズ製で、減衰力を電子制御する

Specifications

【エンジン・性能】種類:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:90.0×60.8mm 総排気量:1,160㎤ 最高出力:132.4kW<180ps>/10,750rpm 最大トルク:125Nm<12.7kgf・m>/9,000rpm 燃料タンク容量:15L 変速機:6段リターン WMTCモード燃料消費率:15.9km/L 【寸法・重量 ※は車検証上の値】全長:2,080(※) 全幅:758 全高:1,120 ホイールベース:1,439 シート高:830(各mm) 車両重量:200kg タイヤサイズ:(F)120/70ZR17 (R)190/55ZR17 【カラー】白×濃灰、赤×濃灰 【価格】228万5000円(白×濃灰)、231万7500円(赤×濃灰)


スピードに依存せずに充実した走りを堪能できる

エンジンから吐き出されるエキゾーストノートは、RSのそれと変わらず、良い音色を奏でる。フルモデルチェンジされてからのこのトリプルエンジンは、パワー&トルクアップといった出力面だけでなく、フリクションロスの低減など精度の高まりも感じさせる。ミッションも遊びが少なく、タイトにカチカチとギヤチェンジすることが可能だ。

矢継ぎ早にシフトアップを繰り返し、ギヤをトップにたたき込む。トルクフルさが車体の軽量さと相まってグングンとスピードを上げていくさまは、痛快でもある。シフトアップが「ちょっと早すぎたかな」と思う瞬間でも、エンジンはぐずることなくスロットルの動きにしっかりと反応してくれ、守備範囲の広さを改めて感じさせた。180馬力あるというエンジンはRSと共通のもの。昨今のスーパースポーツマシンは200馬力オーバーというのがスタンダード化している中ではおとなしめのスペックにも思われるが、それは数字上の錯覚であり、特に今回の取材日のような極寒期ではタイヤのグリップ感などが著しく低下するため、十分以上にパワフルに感じられる。試乗中も何度かフルパワーを味わおうとスロットルをワイドオープンするも、瞬時に恐ろしいほどの速度域に突入しそうになり、慌ててスロットルを戻したほどである。

ただし「自分はこのバイクに負けた……」などと気落ちすることなく、その時々の回転数や開け方によって充実した世界を楽しめるのが、このエンジンのすばらしいところである。のんびり走っても感じられる表情豊かな味わい。より過激なスポーツバイクであれば低い速度域ではストレスをためてしまうことにもなりかねないが、そうならないのがスピードトリプルの魅力なのだ。

足周りはRRもRSも前後オーリンズ製サスペンションを採用。メーカーは統一されているが、RRは電子制御式のセミアクティブ仕様となる。モードによって、あるいは任意でも減衰力設定ができ、この寒い時期にもかかわらず、RSに比べてよりソフトで良好な動きを見せてくれた。電子制御サスペンションが登場したばかりの頃は、その動きに違和感を唱えるライダーは少なからずいた。しかし、この分野の技術革新も目覚ましい。一部の特殊な走りを除けば、運動性のみならず、快適性と安全性をも担保する。RSにもぜひ装備してほしいと思わせる足周りだった。

高速道路も流す程度で走ってみた。前傾姿勢の具合は手首に強く負担が掛かるほどでもなく、心地良い。スーパースポーツマシンらしさも持ちながら、これなら意外なほど快適に高速移動ができそうだと感じられた。

2021年、モーターサイクリスト誌6月号でのRS試乗記に「このパッケージを使ったフェアリングモデルの登場を希望」と記した。本心としては、そういったモデルがリリースされることはきっとないだろうと想像しつつの願いでもあった。しかし、トライアンフはそれを良い意味で裏切り、期待に応えてくれたのだ。RRは、RSの核となるすばらしさはそのままに、RSとはまったく異なるとさえ思わせる魅力を備えたマシンに仕上がっていた。

さまざまな状況に合わせてアレンジ自在の豊富な電子制御

ブルートゥース通信によって、音楽再生や電話の受発信、ナビの表示、GoProの操作が可能な「My Triumphコネクティビティシステム」に標準で対応するフルカラー5インチTFTディスプレイを採用。ここに各種機能のセッティング画面が表示される。オプションの「TPMS」を装着すれば、前後タイヤの空気圧まで確認可能
ライディングモードはレイン、ロード、スポーツ、トラック、ライダー(オンロード/トラック)の5つ。各モードに応じた範囲内で、ABS(2種類)、スロットルレスポンス(3種類)、トラクションコントロール(4種類+オフ)、サスペンション(6種類)を任意に変更することが可能だ
電子制御サスペンションの設定は、コンフォート、ノーマル、ダイナミック、フィクスド3、2、1(数字が少ないほど軟らかい)の6種類。先に挙げた3つでは伸圧両側の減衰力が走行条件に合わせて継続的かつ自動的に調整され、フィクスドでは固定となる
多彩な機能が潜む各部ディテール
左スイッチボックスには通常のスイッチ類に加えて、モードボタンやジョイスティック、クルーズコントロール設定スイッチが備わる
右スイッチボックスにはキルスイッチ一体型のスタータースイッチとハザードランプスイッチ、ホーム画面呼び出しボタンを配置
灯火類は全てLEDを採用。ウインカーはオプションでスクロール式に変更可
ブレーキレバーはスパンとレシオを調整できるブレンボ製MCSレバーを装備する
クラッチレバーはスパン調整機能付き
アップとダウン、双方向対応のクイックシフターを標準装備


スピードトリプルの真髄とは

トライアンフのマシンに乗っていつも感じるのは、ライダーのことをしっかりと考えた設計・マシン作りをしている点である。スペック競争に飲み込まれるようなことはあえてせず、ライダーが乗って楽しいと感じるキャラクター作りを常に念頭に置いているように思えるのである。そのポリシーがスピードトリプルという存在にも現れていると感じさせる。

トライアンフは過去にはさまざまなレースで栄光を勝ち取ってきたブランド。現在も、ミドルクラスにおいては世界選手権Moto2クラスへのエンジンサプライヤーとして活躍している。一方、最高峰クラスにはトライアンフ製のマシンは久しく参戦していない。これこそ、あえての判断ではないかと思うのである。

「どれだけパワーがあるのか? ラップタイムはどうだ?」

これが重要なライダーが世の中にどれほどいるのかを真剣に考える。とはいえ、モーターサイクルとしてのスリルやパワフルさは必要とも考える。そうして作り上げられたのがスピードトリプルなのかもしれない。1994年に元祖ストリートファイターとして登場してから、時代のニーズに合った改良を重ねてきた。そして昨年フルモデルチェンジされた新型RSは、パワーアップとともに大幅な軽量化も実現。こんなに速くていいのか?と思わせるほど、特にストリートにおいては200馬力も180馬力も大きな違いがないと感じさせるほどパワフルである。一方、そのパワーに手こずったとしても、違うパートを選択すればパワーを使い切ることに未練がなくなるほど魅力的な表情を見せてくれる。3気筒ならではの豊かなトルクは回転数や開け方によってさまざまな表情を見せ、その懐の深さは相変わらずの印象だった。

車体も従来モデルとの比較においては圧倒的に軽くてスリム。シャープな反応で気持ち良く旋回してくれる。しかし、ここでもエンジン同様、硬質というよりも軟質と言うべきか、ライダーに歩み寄ってくれるかのような優しさがどこかにあるのだ。ハイパワーでありながら、そこに依存しない魅力。味わいやフレンドリーさを身につけている。もちろん、それはよくできた最新の電子制御があるからにほかならない。

RSを新たに加わったRRと比較すれば、ネイキッドマシンらしい自由度や快適性がより強く感じられる。スペックに振り回されない、充実した走りのDNAは、スピードトリプルが生まれ持った特性である。RSもRRも、スピードに関係なく、とにかく楽しいマシンに仕上がっている。

RRとRSの双方に貫かれた独自の哲学

スピードトリプル1200RRスピードトリプル1200RS
エンジン種類水冷4ストローク
並列3気筒DOHC4バルブ
ボア×ストローク
(各mm)
90.0×60.8
総排気量(㎤)1,160
最高出力132.4kW<180ps>
/10,750rpm
最大トルク125Nm<12.7kgm>
/9,000rpm
燃料タンク容量(L)15
変速機6段リターン
減速比(1次/2次)1.85/2.588
キャスター角23.9°
トレール量(mm)104.7
全長(mm)2,080(※)2,090(※)
全幅(mm)758792
全高(mm)1,1201,089
ホイールベース
(mm)
1,4391,445
シート高(mm)830
車両重量(kg)200199
タイヤサイズ(F)120/70ZR17
(R)190/55ZR17
価格228万5000円〜
231万7500円
203万円
※は車検証上の値  

外観はフェアリングの有無によって大きく異なる2台だが、エンジンスペックのほか、減速比、キャスター角、トレール量などは共通。しかし、乗車姿勢や足周りが異なるため、運動性にも違いが出ている。

RRとRSの違い

1:ハンドル&ステップ

ハンドルはセパレートタイプで、トップブリッジ下にマウント。ステップは、RSとステーやヒールプレートのデザインが同様なので見逃しやすいが、RSよりも後方に位置。

バーハンドル採用で、ミラーはバーエンドタイプ。トップブリッジはRRとRSでハンドルポストの有無だけなく形状も異なっている。ステップはRRよりも前方に位置。

2:タイヤ銘柄

RRはピレリ ディアブロスーパーコルサSP V3を、RSはメッツラー レーステックRR K3を標準装備している。どちらもハイグリップ銘柄だが、特性は異なる。

3:前後サス

メーカーはオーリンズで共通。電子制御式のRRに対してRSは手動調整式で、前後ともフルアジャスタブル。ハイグレード品であることに変わりはない。

RIDING POSITION

ライダーは身長165cm。シート高はどちらも830mmと、スポーツバイクとしては標準的。シート形状は理想的にシェイプされていて、数値以上に足着き性は高い。車体のスリムさ、軽量さは、安心感に加えて一体感にも寄与。RRとRSではハンドル位置が大きく異なり、Uターンなどの取り回しやすさに差が出たが、一度スピードに乗ればRRの設定にも納得。ステップ位置も各車のキャラクターに合わせて異なる。

report●鈴木大五郎 photo●岡 拓

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問い合わせ先

トライアンフ
TEL:03-6809-5233
https://www.triumphmotorcycles.jp

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