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新世代の油冷エンジンはトルクフルかつ滑らかな特性
新世代の油冷エンジン「SOCS」と低価格で話題を集めているジクサー250シリーズだが、フルカカウルのジクサーSF250が先に2020年4月24日発売となった。
(ネイキッドのジクサー250は2020年6月17日発売)
前後17インチタイヤを採用する車体はコンパクト。装備重量は158kgで、このクラスの単気筒モデルとしてはホンダCB250Rよりやや重いものの、押し歩きしてみると数値以上に軽く感じるので、重心位置が良いのかもしれない。
その感覚を裏切ることなく、走りは軽快そのものだ。
新型油冷SOCSエンジンは、予想したよりもメカノイズや振動が少なく、精度のあるメカニズムが動いているフィーリング。その遮音性はウォータ―ジャケットを備えている水冷エンジンと変わらないのではないかと思わせる。
アイドリング(やや高め)からクラッチのミートだけでトコトコと走り出すほど低回転のトルクがあり、穏やかで扱いやすい。スロットルを開けていくと3000回転を超えたあたりからレスポンスが元気になり、大きく開ければ力強く加速していく。
このエンジン、トルクはかなりフラットなフィーリングだが、それでも5000〜6000回転くらいでパワーが乗ってくる感じがし、トルクピークを迎える7500回転くらいまでが最もパワフルでレスポンスも良い。実用においても使用頻度が高く、かつ使いやすいパワーバンドになるだろう。
そこから開け続けると、パワーピークの9000回転を超えるトップエンドまでキレイに回転は伸びて行くので、頭打ち感やパワードロップなどのデッドエンド特性も悪くない。高速道路ではトップ6速・6500回転で、おおよそ100km/hくらいとなるが、あまり振動も大きくならないから快適だ。
総じて、エンジンはギンギンに尖ってはいないように見せておいてで、実はけっこう力強い性格のようだ。低回転の扱いやすさと高回転の伸びと力強さは、250cc単気筒として高いバランスを実現しており、なかなか秀逸なエンジンではないだろうか。
ジクサーSF250は油冷エンジンだけでなく、軽快さも武器
ハンドリングも軽快だ。前後17インチのタイヤサイズ、しかもフロントは柔らかめ、リヤはやや硬めに感じるサスペンションのせいなのか、スイスイ向きを変えて行く。コーナーリングもバンクさせずとも自然に曲がって行く感じでまったく気負いがない。
その車格やライディングポジションが、比較的コンパクトなこともあって、この気楽さは大きな魅力である。レスポンスの良いエンジンと相まって、ビギナーでも街中やワインディングでキビキビとした走りが楽しめるはずである。
ただ、フロントサスペンションのダンパーがあまり強く利いていないため、沈み込みが大きく、ボトム付近で一定の荷重になるとフワフワ動く場合がある。硬めに感じるリヤとのバランスもライダーによっては気になるかもしれない。
もっとも、これで乗り心地も良く、扱いやすく、価格も廉価なのだから、そこまで求めるのは贅沢な話なのだろう──こういった性格を考えれば、ズバッと寝かし込んでいくよりも、優しくスムーズにコーナーリングしていくほうが気持ち良く走れそうだ。
ジクサーSF250はフルカウルのスポーツモデルでありながら、コミューター的な扱いやすさを備えており、過不足のない250cc万能バイクとして重宝するはずだ。
ジクサーSF250:足着き&ライディングポジション
シート高は800mm。タンクとシートの接合部の形状が比較的絞られているので、身長170cmのライダーなら足着きはまったく問題ない。ライディングポジションもコンパクトでセパレートハンドルの割には、アップライトで快適である。
スズキ ジクサーSF250主要諸元
【エンジン・性能】
種類:油冷4ストローク単気筒OHC4バルブ ボア×ストローク:76.0mm×54.9mm 圧縮比:10.7 総排気量:249cc 最高出力:19kW<26ps>/9000rpm 最大トルク:22Nm<2.2kgm>/7300rpm 燃料タンク容量:12L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】
全長:2010 全幅:740 全高:1035 ホイールベース:1345 シート高:800(各mm) 車両重量:158kg タイヤサイズ:F110/70R17 R150/60R17
【実測燃費】
30.0km/L
【価格】
48万1800円(税込)
試乗レポート●関谷守正 写真●岡 拓/スズキ 編集●上野茂岐