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【スズキGSX-8TT 1DAY試乗】楽しめるスポーツロードスターの要は、フレキシブルなツインエンジン+軽快な車体パッケージ

スズキが満を持してリリースしたネオクラシックロードスター

ミドルクラスのネオクラシックネイキッドとして、2025年夏前に欧州で発表され市場に投入されたGSX-8TとGSX-8TT。日本では2026年1月より発売され、早くも注目を集めている。

GSX-8T(左)とGSX-8TT(右)

1000cc以下のミドル、アッパーミドルクラスでネオクラシックカテゴリーのモデルと言えば、日本で大人気のカワサキZ900RSとZ650RS、ヤマハではXSR900/同700、トライアンフのボンネビルT100やスピードツイン900/スクランブラー900などが思い浮かぶが、スズキはこのカテゴリーでは存在感を発揮していなかった。

そして、ミドルネイキッドのSV650も生産終了となり、スズキファンは近未来的なフォルムのGSX-8SかGSX-8Rのいずれかを選択するしかない状況だったが、そうした中でGSX-8Tと同8TTが登場。オーソドックスなスタイルを望む層に向けて、非常にいいタイミングでの導入ではないかと感じられた。

パワーユニットは、すでに定評のある270度クランクの775cc並列2気筒エンジンで、フレームは高剛性なスチール製ダイヤモンド型に軽量なアルミスイングアームの組合せ。エンジンとシャシーともに既存のGSX-8S/8R系と共用してコストを抑えつつ、外観は8T/8TT用に専用設計している。

ネイキッドの8Tは、60年代後半に登場したスズキの2スト名車T500の馬蹄型イメージの丸型ヘッドライトをアクセントとして現代風で軽快なスタイルに。8TTは、70年代の4スト名車GS1000Sのそれをオマージュしたビキニカウルをアクセントにし、スズキオリジナルな外観をそれぞれアピール。それを軽快かつコンパクトな現代的なパッケージでまとめたことで、同社の従来のファンも、伝統のモデルを知らない若いライダーも興味を引くスタイルとしている。

GSX-8T(右)と60年代後半に登場したスズキの2ストモデルT500(左)
GSX-8TTがオマージュしたモデルはGS1000S(1979)。当時のAMAスーパーバイクで故ウェス・クーリーが駆ったGS1000レーサーがこの配色をまとったことから「クーリーレプリカ」とも称される

個人的には試乗以前から好印象を持っていたが、さて実車の乗り味はどんな具合か。今回も300kmほどのワンデイツーリングで確かめてみる。

GSX-8TT

■試乗車はビキニカウル(正式名はヘッドライトカウル)、アンダーカバー、専用ステッチと表皮のシートを装備したGSX-8TT。カウルレスのGSX-8Tに対して車重は+2kgとなり、価格は8万8000円高の138万6000円。

GSX-8TT

■ストリートファイター風テイストも取り入れたネオクラシックロードスターは、フロントのボリューム感に対して軽快なリヤまわりを演出。リヤシートは短めで高い位置に上げられ、テールの灯火類は長いステー状のリヤフェンダーで後端へ配置される。

ミドルならではの軽さとコンパクトさが感じられるパッケージ

試乗で借用したのは、ビキニカウル付きのGSX-8TT。精悍で引き締まったブラックのボディに赤と黄の縦ラインが差し色として入り、赤いホイールもアクセントとなっていてセンスよくまとめられている。このほか、エキパイ下側を覆うアンダーガード、赤いステッチ入りで滑らかな表皮の専用シートが8TTの特徴だ。こうした装備の追加で、8TTは8Tよりも2kg増の203kg、シート高のスペックは8Tの815mmよりも5mm低い810mm。ただし微妙な差であり、重量感、足着き性で差は感じない。

またがってみると、173cmの体格での足着き性は1cmほど両カカトが浮くが、まったく不安感はない。上体はごく緩い前傾となるがハンドル位置は近め。わずかに広めのバーハンドルは、グリップ部があまりライダー側に絞られていないフラットなタイプだが、レバーも違和感なく握れて操作しやすい部類だ。

身長173cmの体格でのライディングポジション

■身長173cm、体重76kg、股下約80cmのライダーの着座姿勢。上体はごく緩い前傾姿勢となるが違和感なくスポーツライド可能。両足接地ではカカトが1cmほど浮くが、全く不安なし。

セルボタンで目覚めたエンジンでまず印象深いのは、よく消音されて静かなこと。冷間時はオートアイドル機構で若干回転が上がるものの、早朝の住宅街からの出発でも気を使わなくていい音量と感じられるほどだ。

走り出すと、軽快な回転感で上昇していくエンジンは、270度クランクらしく後輪が路面を掴んで蹴り出していく感触が確かめられるが、荒々しい感じはなく、滑らかな印象が上回る。一般道でトップ6速のギヤに入れると回転は2500rpmで60km/hを指すが、この状態からだとキレのある加速には十分でない。

この速度レンジだと4速ないし5速が適切で、2500~3500rpm付近を使って流すのが気持ちいいだろう。この領域でスロットルを開け閉めしているときのエンジンの滑らかさ、粒の細かい鼓動と適度にダイレクト感のある駆動力の伝わり方が気持ちよく、スズキがこのエンジンを現行ラインアップのミドルに多用している理由がよく分かる。オンロードのGSX-8系、アドベンチャーのVストローム800系、いずれに使用してもオールラウンドに使えて扱いやすいことが想像できる。

GSX-8TT

防風よりも整流効果を感じる「ヘッドライトカウル」

高速道路での775ccの並列ツインは、さらに生きのよさを発揮する。トップ6速の80km/hで3300rpm、100km/hで4100rpmと増速していく間もエンジンは綺麗に回転上昇し、スロットルを開けるだけで十二分に加速して周囲の交通を置き去りにする。120km/hで約5000rpmとなっても回転上昇は滑らかで、気になる振動もない。最高出力を発生する8500rpmもストレスなく超え、レッドゾーン付近の1万rpm手前まで回り切って行くだろう。

ただし、高速巡航に利するのかと想像していたビキニカウルは、防風の役には十分ではない。上体を伏せていなければライダーの胸から上へ直接風が当たるからで、ネイキッドの8Tよりは整流効果があるというレベル。コンパクトに感じる車体サイズの割に直進安定性も悪くないと感じ、先日試乗したCB1000FとZ900RSの乗り味を思い出してみたが、遜色はない。そう思って車体サイズを確認してみると……
■GSX-8TT=全長2115mm/軸距1465mm/車重203kg
■CB1000F=全長2135mm/軸距1455mm/車重214kg
■Z900RS=全長2100mm/軸距1465mm/車重216kg

車重は2車に対して10kg以上軽いものの、車体サイズは特にコンパクトというわけではない。それでも軽く感じるのは、4気筒とは異なる2気筒エンジンの軽く弾ける回転感、視界に入らないバーエンドミラーによる前方の見通しのよさといった視覚的なものが、そう感じさせるのだろうか。

GSX-8TT:専用装備のヘッドライトカウル
GSX-8TT:専用装備のヘッドライトカウルの機能

■8TTの大きな特徴のヘッドライトカウル。カウル内側に設定した開口部からの空気の流れと、スクリーン端の玉縁処理により、風圧の軽減ほか空気の流れの制御をねらっている。スタイリングと機能性を両立した工夫で、整流効果は実感できるが、防風効果はミニマムだ。

最近のモデルでは標準装備が多くなり、8TT/8Tでも装備しているバーエンドミラー。このミラーは位置が広めのため後方視認性がいいのが利点だが、一方で、ライダーの前方注視から視線を動かす量が多くなること、そしてハンドル左右エンド幅よりはみ出すこと(すり抜け等の際に左右の障害物を引っ掛けやすい)が個人的にはまだ慣れない面もあるが、距離を重ねると気にならなくなっていくのだろう。

GSX-8TT:専用のカウルに覆われたハンドル周り

■ストリートファイター風にフラットで、やや幅広な形状のバーハンドル。あまり絞り込まれていないグリップながら、レバーの操作性も違和感ない。バーエンドミラーは8TT/8Tの標準装備だが、幅広な位置にあり後方視認性は良好。専用の燃料タンクはGSX-8S/8Rより+2L大きな16L容量のものを採用。

過不足なく、ストレスなく、いい塩梅のスポーツ性能を確保したオールラウンダー

ワインディングに入っても、8TTの軽快さは好印象だった。切り返しは素直で軽快で、エンジンはどの回転域からでもピックアップがよく、それでいて唐突過ぎずにトラクションがかかって滑らかにコーナーをクリアしていく。前後ブレーキも、引きずりつつの車体制御、強めの制動のいずれの場面でも操作しやすく、不満のない効力を発揮する。

GSX-8TT

少し引っかかる部分があるとすれば、先日試乗した2車(CB1000FとZ900RS)に比べて、荒れた塗面などで跳ね気味の成分がやや出やすいかなということ。サスの設定を変える必要は感じないが、2セット目のタイヤの銘柄(試乗車はダンロップのロードスポーツ2を装着)で、自分だったらもう少し穏やかな指向のスポーツツーリング向けタイヤを履かせるかもしれない。

また、近年のスポーツバイクで増えてきたクイックシフターだが、8TT(8T)でも標準装備されており、一般道でもワインディングでは有り難い。しかし、並列4気筒車よりもトルク変動が大きい2気筒ゆえなのだろう、先日のCBやZより低いギヤ(1~3速)でのショックが出やすい傾向は致し方ないところか。

色々と述べてきたものの、トータルのパッケージとして、GSX-8TTは大型二輪の範ちゅうにありながら、低中速でも高速でもストレスのないスポーツ性を味わわせてくれる好印象のモデルだった。エンジンのピークスペックは80psを1万rpm以下で発生するもので、近年の同クラスのモデルの中では大した性能ではない。しかし、200km/h超えの巡航性能でも求めない限り、これで何の不満があるだろう? 使い場所のない100ps超のピークパワーより、個人的には50~100ps以下の性能に好感が持つが、GSX-8TTは大型バイクの性能メリットを手軽に引き出せ、一般道でもパワー過多でのストレスを感じない「いい塩梅」が光る。

ちなみに、一般道から高速、ワインディングを含めた約300kmの行程での燃費はちょうど24km/L。300kmを過ぎてしばらくすると燃料警告の最後のひと目盛りが点滅を始めるが、これも給油タイミングとして、早すぎずちょうどいい塩梅。パワー偏重主義ではないライダーにとって、1日をオールラウンドに楽しく走り回れるスポーツモデルとして、よき相棒となるに違いない。

GSX−8TTの各部紹介

GSX-8TT:水冷並列2気筒の775ccエンジン

■775cc並列2気筒のエンジンは、現在のスポーツツインモデルでは主流の270度位相クランクを採用。1次振動と偶力振動の抑制として、2つのバランサーをクランクシャフトに対して90度に配置する2軸1次バランサーを搭載。スムーズな走行感に貢献している。なおパワーモードはA(アクティブ)、B(べーシック)、C(コンフォート)の3段階から選択でき、トラクションコントロールも連動してライディングを支援。


GSX-8TT:標準装備のクイックシフター

■S.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)の一部として標準装備されるアップ/ダウン対応のクイックシフター。1~3速といった低速ギヤでは変速時に多少ショックが出やすいが、一般道、スポーツ走行での機敏な変速では有効。


GSX-8TT:5インチカラーTFTディスプレイ

■鮮明な色使いで視認性の高い5インチカラーTFTマルチインフォメーションディスプレイ。円形の回転計、数字での速度表示のほか、ギヤ段数、時計、TC(トラコン)介入度、ドライブモード、時計、燃料残量などを通常表示。下枠の部分は切り替えで、オド/電圧計、トリップ1/2と各平均燃費のほか、写真の航続可能距離計/瞬間燃費を表示。燃料残量が気になる状況で、この情報は有効。

GSX-8TT:液晶パネルの基部の左側には、USB Type-C電源ソケット(定格5V/3A)を装備。

GSX-8TT:左グリップの操作系

■左グリップの操作系。グレー部分が表示切り替えのセレクトスイッチで、その内側の黒いMODE表記部がTCとドライブモードの選択ボタン。そのほかはウインカー、ホーン、前方側にヘッドライトのハイ・ロー切り替えとパッシング兼用レバーを配置。


GSX-8TT:右グリップの操作系

■右側グリップの操作系は、セルスターター&キルスイッチ、ハザードスイッチのみ。


GSX-8TT:前輪周り

■フロントフォークはKYB製インナーチューブ径41mmの倒立タイプで130mmのストロークを確保。無調整式だが、街乗りからロングツーリングまで幅広く対応できる設定とアピールされる。ブレーキは310mm径ダブルディスクにニッシン製ラジアルマウントキャリパーの組合せで、良好な制動力を確保。


GSX-8TT:後輪周り

■アルミ製両持ちスイングアーム+KYB製リンク式モノショックに支持される後輪。プリロード調整付きで、タンデムや荷の積載に合わせて荷重設定が可能。リヤブレーキは240mm径ディスクに片押しシングルピストンキャリパーの組合せだが、操作性・制動力ともに不満なし。


GSX-8TT:ステップ周り

■適度に後退し、高い位置にあるステップはスポーツラン、ツーリングにもフィットする設定で、ステッププレートのホールド性も良好。


GSX-8TT:専用の表皮とステッチの入ったシート

■8Tのタック&ロール入りシートに対し、より滑らかな表皮にアクセントのステッチを入れた8TTのシート。スペック上は8Tより5mm低い810mmとされるが、大差はなく足着き性、快適性ともに良好。


GSX-8TT:シート下スペース

■キー開閉式のリヤシート下にはミニマムなスペースがあり、ETC機器などの後付けに対応。シート裏には荷掛け用のベルトが左右に格納されており、この部分と前側のタンデムステップステーエンドのフック状の部分を使って荷を固定することになるが、リヤシートの面積も狭く、荷の積載については安定度は今ひとつだ。またヘルメットホルダーは非装備のため、後付けしたいところだ。

GSX-8TT:試乗ルートは編集部から中央道経由で相模湖、道志みちを経て山中湖までの行程だった

GSX-8TT/同8T主要諸元

※< >内は8T
■エンジン 水冷4サイクル並列2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク84✕70mm 総排気量775cc 圧縮比12.8  燃料供給装置フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力59kW(80ps)/8500rpm 最大トルク76Nm(7.7)kgm/6800rpm  燃費23.4km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速3.071 2速2.200 3速1.700 4速1.416 5速1.230 6速1.107 一次減速比1.675 二次減速比2.764
■寸法・重量:全長2115 全幅775 全高1160<1105> 軸距1465 シート高810<815>(各mm) キャスター25°00′ トレール104mm タイヤF120/70ZR17 M/C(58W) R180/55ZR17 M/C(73W) 車両重量203<201>kg
■容量:燃料タンク16L オイル3.9L
■車体色:パールマットシャドーグリーン、グラススパークルブラック<マットスティールグリーンメタリック、キャンディバーントゴールド、マットブラックメタリックNo.2>
■価格:138万6000円<129万8000円>

レポート●モーサイ編集部・阪本一史  写真●モーサイ編集部、長谷川拓司

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スズキ
TEL0120-402-253(お客様相談室)
https://www1.suzuki.co.jp/motor/

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