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【120万円以下で新車購入可能なドゥカティの名機!】 スクランブラーアイコンダーク試乗記

著名なイタリアンバイクメーカーのドゥカティが「THE LAND OF JOY」というフレーズを掲げて展開している、定番ネオレトロのスクランブラーシリーズ。そのバリエーションモデルのひとつである「アイコンダーク」は、ミニマルスタイルでシリーズの妙味を楽しめるバイクだ。このモデルの試乗インプレッションを、二輪ジャーナリストの鈴木大五郎の文章で紹介しよう。

漆黒の衣をまとった最新型スクランブラー

MotoGPなどロードレースシーンでの活躍が印象的なドゥカティの中で、スクランブラーシリーズは異色なスタンスに映る。2015年に登場したスクランブラーアイコンは、オフロードテイストを感じさせるシンプルなマシンだが、実は1962年に同社が発表した初代スクランブラーをオマージュしたモデルでもあった。現代によみがえったスクランブラーは、気楽に乗れてファッション性も備わることで人気を博し、さまざまなバリエーション車もリリースされた。そして、2019年にマイナーチェンジされ、23年には現行モデルである第3世代へとつながれている。今回は、最新型のベーシック&シンプル仕様である「アイコンダーク」に試乗した。

スクランブラーアイコンダークは、スクランブラーアイコンのカラーバリエーションとも言えるモデルで、外装のカラーリングが黒で統一されているのが特徴。価格は119万9000円で、スクランブラーアイコンより13万円以上安いのも魅力だ。
こちらはスクランブラーアイコン。価格は133万3000円で、車体色はイエローとレッドから選べる。さらにオプションのカバーキットを含めれば多彩なカラーリングが用意されている。

15年型からずっと大きなイメージ変更はないが、実は最新型は従来モデルから70%ものパーツが刷新されているという。それは外装類だけでなくシャシーにまで及び、フルモデルチェンジと言っていいくらいの内容。絶対的性能が売りのモデルではないからといって妥協することなく、着実にアップデートされているのである。

重量は従来型(19〜22年型)からエンジン単体で2.5kg、車両全体で4kgも軽量化された。前18/後ろ17インチのホイールは、デザインが刷新されている。
周囲にデイタイムランニングライトを備える丸形LEDヘッドライトに、往年のオフロードレースシーンを想起させる×字のラインが組み合わされている。
テール周りはコンパクトなLED灯火器でスッキリとまとめている。ナンバープレートステーはスイングアームマウントだ。

実車に接すると、とにかくコンパクトな車体が好印象。昨今はかなり大柄なモデルが多いが、このマシンは800ccでもためらうことなく日常的に使える。ちょっとした取り回しを面倒に感じるだけでも出動機会は減るものだが、このマシンなら車庫からの出し入れや取り回しもイージーだ。

スクランブラーアイコンダークのライディングポジション。軽量かつコンパクトなうえ、足着きも良好。プレッシャーのない、ふだん使いできる設定となっている。アップライトなバーハンドルはリラックス度が高いが、やや切れ角が少ないのでUターンなどでは注意が必要。 ※ライダーは身長165cm、体重62kg。
シート高は795mmで、両足を下ろした際にはどちらも親指の付け根辺りまで接地する。 ※ライダーは身長165cm、体重62kg。
バーハンドルはコントロール性を高めるため、従来型より低くライダー寄りになっている。
着座位置を動かしやすい前後一体型シートも、従来型から形状が変更された。表皮には×字をかたどったパターンがあしらわれている。

走り出してもこのコンパクトさの恩恵は大きい。ハンドル切れ角が意外に少ないことには注意が必要だが、とにかく気楽で扱いやすい。発熱量の少なさも、暑い時期が年々長くなっている我が国においては歓迎すべき点だ。初期型では発進時の出力特性に手ごわさを訴えるライダーもいたが、第2世代で改良され、さらに最新型ではライドバイワイヤを採用したこともあり、しつけが行き届いたスムーズな特性となっている。心地良い鼓動を感じさせつつ、ドゥカティらしい高回転へ向けての伸び切り感を味わえる。伝統の空冷Lツインはなかなかにパワフルで、扱いやすくも無機質にならず、やはり良いエンジンだと感じる。

モンスター796やハイパーモタード796に搭載された「デスモデュエ」をベースとした“空冷Lツイン”エンジンを搭載。第2世代から現行型に移行して、オプションでアップ・ダウン両方向対応のクイックシフター(4万7300円)を装備することも可能となった。
マフラーは右側下部1本出し。純正オプションでテルミニョーニ製サイレンサー(21万4962円)が用意されている。

最新型は走行モードも選択できるようになり、排ガス規制などの制約をクリアしながらも元の魅力は失われていない。また、走行中にその存在を意識することはなかったが、トラクションコントロールが装備されているのも安心だ。以前、ドゥカティの開発メンバーから「スクランブラーはシンプルなことが重要。電子制御を拡充することは考えていない」と聞いたことがあったが、モーターサイクルを取り巻く環境はその時点から変化している。安全性に関するアップデートは歓迎すべきだろう。

メーターパネルには4.3インチTFTカラーディスプレイを採用。ライディングモード(ロードかスポーツを選択可能)は速度表示の右側に表示される。ギヤポジションはタコメーター中心部に大きく表示され、見やすい。
燃料タンク容量は14.5L。WMTCモード燃費(19.2km/L)で計算すると、燃料満タンからの航続可能距離は278kmほど。

おしゃれな姿だが、ドゥカティのマシンらしくワインディングも存分に楽しめる。アップライトな乗車姿勢と前輪荷重が少なめな車体設定により、ハンドリングは非常に軽快。そんなセッティングながら意外とよく曲がるし、昔のドゥカティ車で語られたようなマニアックさは皆無で、幅広いライダーが扱いやすく、そのポテンシャルをしっかり引き出しやすい。

フロントブレーキは330mm径シングルディスクとブレンボ製ラジアルマウント4ポットキャリパーの組み合わせ。コーナリングABSも備わる。フロントサスペンションは41mm径のKYB製倒立フォークを採用。
リヤブレーキは245mm径ディスクとブレンボ製1ポットキャリパーの組み合わせ。標準装着タイヤはピレリ MT60RS。
リヤサスペンションはKYB製モノショックで、プリロード調整が可能。

スクランブラーブームが落ち着いたこともあり、最近はあまり話題に上らない本シリーズだが、その実力を思えば、個人的には少々不遇と思う。今回の試乗で現行型までの着実な進化を実感し、バイク本来の楽しさをバランス良く味わえる傑作だと改めて感じた。 

スクランブラーアイコンダークでワインディングを快走!

report:鈴木大五郎 AMAスーパーバイクなど数々のレースへの参戦経験、そして、国内外さまざまなメーカー・カテゴリーの市販バイクの試乗経験を持つ二輪ジャーナリスト。ライディングスクールの主催者やインストラクターとしても活躍中だ。

photo:岡 拓

スクランブラーアイコンダーク 諸元

エンジン種類:空冷4ストロークV型2気筒OHC2バルブ
ボア×ストローク:88×66mm
総排気量:803cm3
最高出力:53.6kW<73ps>/8,250rpm
最大トルク:65.2Nm<6.7kgf・m>/7,000rpm
燃料タンク容量:14.5L
WMTCモード燃費:19.2km/L
変速機:6段リターン
全長×全幅×全高:――
ホイールベース:1,449mm
シート高:795mm
車両重量:176kg(燃料を除く)
タイヤサイズ:(F)110/80R18 (R)180/55R17
カラー:マットブラック
価格:119万9000円

ドゥカティ スクランブラーシリーズには、「アイコン」や「アイコンダーク」以外にも、カフェレーサー的スタイルの「ナイトシフト」や、ストリートトラッカースタイルの「フルスロットル」などがラインアップされている。
CONTACT

ドゥカティ TEL:0120-030-292 www.ducati.com/jp

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