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レーシングマシンを彷彿する軽量パーツは憧れ
バイクやクルマのパフォーマンスの目安としてパワーウエイトレシオ(車体重量を最高出力で割ったもの)が有効なのはよく知られているが、車体の軽量化というのはそのまま加速性能に直結する。ブレーキングにおいても軽量な車体の方が基本的には有利だ(ブレーキシステムの優劣もあるが)。
特に1/1000秒を争うレーサーマシンは、グラム単位での軽量化に勤しんでいる。チタン製のボルトやマフラーのほか、カーボンパーツを多用しているのは少しでもタイムを削り取るための意味がある。
当然、そうしたカーボン製の軽量パーツというのは我々一般ライダーにとっても憧れだ。カーボンを使った軽量カスタムのメニューは数多く用意されている。いずれも、それなりにコストはかかるものだが、軽量パーツが持つ凄味というのは所有欲を満たしてくれるのも事実だ。
カーボンパーツを採用すればFRP製より20%以上軽くできるが……
小さな部品であるチタンボルトなどは軽量化という面ではグラム単位とも効果も小さくなってしまうが、ドライカーボン製のカウルであれば、FRP(Fiber Reinforced Plastics=繊維強化プラスチック)製に比べておおよそ20~25%程度も軽くなる。
たとえばホンダがCBR1000RR-R ファイアブレードに用意しているオプションパーツの「ドライカーボン製アンダーカウル」の重量は685gで、標準パーツと比べると25%も軽くなっているという。
メーカー純正パーツとしての高い安全基準を満たしながら、アンダーカウル部分部分だけで約230gも軽くなっているというわけだ。一方お値段の方も立派で、「ドライカーボン製アンダーカウル」の価格は22万円となっている。
そのほかCBR1000RR-R ファイアブレードに用意されたメーカー純正パーツで軽量化に貢献するカーボン製パーツには「カーボンエアボックスカバー」(11万5500円)「カーボンハガー」(7万3700円)「カーボンフロントフェンダー」(9万3500円)があり、すべて装備すると約460gの軽量化になるが、その合計金額は50万2700円と高額だ。



フルカウルのスーパースポーツモデルで、すべてのカウルをカーボンに置き換えれば、おそらく多くのライダーが「軽くなった」と体感できるレベルとはなるだろう。
では、そうした軽量カスタムに意味はあるのだろうか。
結論から言ってしまうと「公道走行を前提としている限り自己満足でしかない」。
1円も使わない軽量化「もっとも手軽な軽量化は燃料を減らすこと」

たとえばカーボン製軽量化パーツによって5kg軽くするとしよう。
「ドライカーボン製アンダーカウル」だけで22万円もするのだから、おそらく、その5kgのためには何十万円といったカスタム費用がかかるはずだ。
しかし、5kgくらいなら一銭もかけずに軽量化することも可能だ。
燃料を満タンにしないだけでキログラム単位の軽量化につながる。
たとえば5kgというと、ガソリンでいうと約7Lに相当する。リッタークラスのモーターサイクルであればガソリンを満タンにせず、常に半分程度にしておけば数十万円に相当する軽量化となる。
さらに、ほとんどの二輪車においてガソリンタンクは高い位置にあるためガソリンを少なめに入れておくのは取り回しの面でも有利に働くことだろう。
もちろん、航続距離は短くなるのでロングツーリングのときに半分しか入れないというのはあり得ないが、日常使いであれば「腹八分」感覚でガソリンを給油することで軽量化を簡単に実現できるのだ。
ライダー自身のダイエットも効果的だ
もっといえば、ガソリンを減らすよりもライダー自身のダイエットのほうが有効だ。
一般的にパワーウエイトレシオの計算ではモーターサイクル単体で計算するが、実際に走るためには当然ながらライダーが跨った状態である。
ミニバイクのレースなどでは体の小さな子供や女性が速かったりすることからも分かるように、ライダーの軽量化はパフォーマンスに直結するのだ。
ランニングを日課にするなど、お金をかけないダイエットであれば車両に施す軽量化カスタムほどお金はかからない。さらに体を鍛えれば、ニーグリップもしっかりでき、ライディングフォームも安定するはずで、トータルでのパフォーマンスアップに一石二鳥だったりもするのは、言わずもがなだ。
そうは言ってもダイエットを続けることが難しいので、お金で解決できるマシンの軽量化に励んでしまうのが人情だったりもするが……。
いずれにしても、何十万も掛けてやっと数グラム……という軽量化カスタムをするくらいであれば、お金をかけずにやれることはいくつもある。

公道では保安部品を外すのは絶対NG
ただしお金をかけないカスタマイズといって、ウインカーやバックミラーなどを外してしまうのは絶対にNGだ。公道を走る限り、保安部品を外してしまうのは違反行為になってしまう。
厳密にいえば、タンデムシートやステップを外してしまうことも乗車定員が2名である限りは違反行為になる。タンデム用のパーツを外すのなら、乗車定員を登録し直す必要がある。
そのあたりの事情をしっかり踏まえた上で、自分にとって不要なパーツをはずすことで愛車を軽量化するというのであれば、お金をかけない軽量化カスタムとしてアリだろう。
軽量ヘルメットはライディングもラク
個人的には「車両意外の軽量化」といってもライダーを守るプロテクターを省いてしまうのはおすすめできない。必要な機能を満たしつつ、可能な限り軽くするというマインドが重要だ。
身に着けるものでいえば、しっかりと安全性が確保されたヘルメットで軽量タイプを選ぶというのは費用対効果が高い買い物だ。ライダー自身の装備重量は軽くなるし、首の負担も軽減できるから、愛車に乗るのがいっそう楽しくなるはずだ。
レポート●山本晋也 写真●モーサイ編集部 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実