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キャンプにおける焼き肉は、今も昔も誰もが認める永遠の定番メニューだ。しかし、ひと口に焼き肉と言ってもあらゆる焼き方がある。当記事では、どの焼き方が一番おいしいのか徹底的に実験してみた。
※この記事はモーターサイクリスト2021年4月号の記事を再構成して掲載しています。
焼肉はどの“焼き方”が一番うまいの!?
キャンプと言えば焼き肉! これはもう日本のみならず世界中のキャンプ愛好家の合言葉のようなもの。キャンプで焼き肉を食べたことのない人は皆無だろう。しかし、その焼き方に疑問を感じたことはないだろうか?
通常、一般的なのは鉄板焼きだろう。バーベキューを始め、小学校の飯ごう炊さんでも定番のアレだ。鉄板で焼き肉と焼きそばを一緒に楽しんだ人も多いはず。次に多いのが、焼き肉店で炭火の七輪を使って網で焼くパターン。これはキャンプならずとも多くの人が経験済みだろう。
キャンプブームが訪れてから早数年。世のキャンプ道具は細分化の一途をたどり、日々進化し、あらゆる道具が次々とリリースされている。焼き肉を楽しむための調理道具もしかり。そこで今回は、いろいろな方法で同じ肉を焼き、どの焼き方が一番おいしいのか、という実験をしてみた。
バカバカしいと思うなかれ。キャンプを人生の趣味として楽しんできた筆者にとって、この実験は長年の疑問に終止符を打つ、非常に重要で興味深く、意義のあるテストなのだ。また自分ひとりの結論では信憑性が低いので、モーターサイクリスト編集部の五十嵐、そして平島カメラマンにも参加してもらった。さぁ、この壮大なる実験の数々をとくとご覧あれ(このテストには個人差があります)。
肉は輸入カルビを使用&火力はガス、薪、炭
TEST 1:鉄板部門で焼き肉がうまいのはどれだ!
まずは定番である鉄板部門から開始。最近はこのタイプが非常に人気で、各メーカーからいろんな製品が販売されている。比較的厚めの鉄板が蓄熱効果が高くおいしく焼けるようだ。また使い込むと味わいが出るのも魅力だ。
01.冒険用品「ヨコザワテッパン」
価格:4665円
素材:鋼鉄
本体サイズ:148×210mm(A5サイズ)
重量:約1kg
釣り関係のライターとして活躍する横沢テッペイ氏が考案した厚さ5mmという極厚のシンプルな鉄板。大きさはA5サイズなので、そこそこ大きめのステーキも焼ける。今から15年ほど前に生まれたという、このヨコザワテッパンこそが、釣りキャンプやソロキャンプでの鉄板焼きのブームを作り出したといっても過言ではない逸品だ。もちろん焼き肉の味はかなり高得点。ただし真っ平らなので、縁から脂や食材がこぼれ落ちることも多い。
02.BELMONT「BM-287極厚鉄板」
価格:4070円
素材:黒皮鉄板
本体サイズ:150×210mm
重量:約1.5kg
最近焚たき火台などで話題のベルモントが作った極厚の鉄板。その厚さはなんと6mm! 熱を入れるとカルビはカリっとジューシーに焼け文句なくウマイ。縁が若干立ち上がっているので脂や食材が落ちにくく、付属のハンドルで移動もしやすいのが後発の強み。使い込むことで一生モノになること間違いなしだが、さすがに1.5kgあると、バイクで運ぶには重めの荷物となってしまうのが玉にキズ。
03.tent-Mark DESIGNS「男前グリルプレート」
価格:2178円
素材:鋳鉄
本体サイズ:207×143mm
重量:875g
サーカスTCや炎幕、パンダといった名作テントをリリースしているテンマクデザインによる鉄板。この鉄板をプロデュースしているのは水道橋でカフェを経営している料理人にしてライダーであり野宿の達人。他の3製品とは違い鋳造式で、さらに底が波打っているため焼き目が美しく、脂が落ちてさっぱりめに焼き上がるのが特徴。サイズも少し小さめで重量も875gと程よいので、ツーリングでも非常に使いやすい。
04.TURK「クラシックフライパン4号」
価格:2万2000円
素材:黒皮鉄板
サイズ:φ240×長さ460×高さ115mm
筆者である櫻井の愛用品。タークは、1857年に鍛冶職人のアルバート・カール・タークが創業したドイツのフライパンメーカー。このクラシックモデルは1枚の鉄板を鍛造してハンドルまで延ばしているので、かなりの堅牢性を持っている。鍛造で荒々しい仕上げだが、そこに脂がなじむと焦げ付くこともなく、食材がおいしく焼ける。厚みが2.5mmあるので蓄熱性も良い。今回のカルビも油を敷かずともカリカリに焼けた。
シーズニングとは?
ここで紹介している鉄板はいずれも、調理をする前に鉄粉を取り油をなじませるシーズニングという作業が必要だ。まず鉄板を洗剤でよく洗い、表面の鉄粉や防錆剤を洗い流す。次に油をたっぷりと塗り火に掛ける。本来ならこのときに野菜くずなどを一緒に炒めるとさらに鉄粉が取れていい。鉄板全体によく油をなじませたら、その油を一度捨て、再度お湯か水で洗えば完了だ。その後は、使っていくうちに脂がどんどんなじんで、黒くつやつやに“育って”いく。
TEST 2:非鉄金属部門で焼き肉がうまいのはどれだ!?
鉄ではなくステンレスやアルミで作られた調理器具もかなり出回っている。鉄と違ってさびる心配が少なく、シーズニングも必要ないので使いやすい。鉄板に比べて味わいが結構違うのも面白いところである。
05.tent-Mark DESIGNS「ホルモン焼き板」
価格:2068円
素材:ステンレス
本体サイズ:220×140mm
重量:640g
こちらもテンマクデザインの製品で、本来はホルモンを焼くために作られた奇抜な製品。ステンレス製で全体に穴が開いているのが特徴で、この穴から脂が落ちていくのでヘルシーに焼き上がる。事実、焼き肉は鉄板よりも若干さっぱりめの印象。構造上、脂が下に落ちるので、ガスストーブを使うと脂まみれになってしまうので注意。熱源は焚き火か炭火がいいだろう。
06.BIG FOREST「黒船」(Mサイズ)
価格:4950円
素材:アルミニウム
本体サイズ:217×143mm
重量:約450g
高さ1cmほどの縁に長いハンドルが装備され、まさに黒船のようなデザインの調理鉄板。素材は鋳造アルミで底が波打っており、表面にはフッ素樹脂がコーティングされている。アルミなのでさびず重量が軽めなのも特徴だ。その焼け具合は、肉がなんだか柔らかくふんわりした感じ。他とまったく違う焼け具合に全員が驚いた。表面がカリっとした感じがしないのだ。
TEST 3:100円ショップのアイテムの実力は!?
ここ最近のキャンプブームのおかげで、100円ショップにはキャンプアイテムがかなりたくさん並ぶようになってきた。そんな中から今回は、定番のスキレットとミニ鉄板を選出。果たしてその実力やいかに。
07.DAISO「スキレットS」
価格:220円
素材:鋼鉄
本体サイズ:φ130×深さ22mm
重量:約420g
ソロキャンプが流行する前からダイソーに並んでいたこのスキレット。鋳造のザラついた地肌感が良く、シーズニングしてしっかり油をなじませれば焼き肉もおいしく仕上がる。ただハンドルが短いので加熱すると熱くて持てなくなることと、直径が130mmと小さめなのが欠点。カルビを一度に3枚焼くことはできなかったが、ひとりでチマチマやるにはいいかな。
08.Can Do「バーベキュー用ミニ鉄板」
価格:110円
素材:鉄
本体サイズ:132×84mm
重量:約130g
キャンドゥで売られているのがこの鉄板。鉄なのでシーズニングを行う必要がある。132×84mmというサイズは今回使ったカルビだと1枚ずつしか焼けず、厚さも2mmほどしかないので、すぐに熱が回ってしまい焦げやすかった。味は普通でうまみに欠ける。脂もこぼれやすく実用性としてはやや乏しい。まぁ100円なので、キャンプ中の話の種としてはアリだろう。
TEST 4:特殊プレートで焼肉はうまくなるか?
鉄や非鉄金属以外の少し変わったプレートも用意した。溶岩を切り出してプレートにした溶岩石プレートと、岩塩を切り出して作った岩塩プレートである。鉄板とは明らかに異なる味わいに、テスター一同感心し高評価を下した!
09.SOTO「溶岩石プレート」
価格:4180円
素材:溶岩石
本体サイズ:140×140×厚さ20mm
重量:0.9kg
※レギュレーターストーブ専用
今回使ったストーブ、ST-310にジャストサイズで作られた溶岩石プレート。加熱すると、そこから遠赤外線が発せられ、熱が食材の外側からだけではなく全体に均等に行き渡るため、ふっくらジューシーな焼き上がりとなる。また余計な脂は溶岩が吸い取り、ミネラルも付着するという。鉄板とはまた違ったふんわりした味わいに全員が高得点!
10.LOGOS「岩塩プレート」
価格:759円
素材:岩塩
本体サイズ:13×7×厚さ1cm
重量:約220g
プレート状に切り出された岩塩の上で焼くという珍しい調理器具。試してみると、岩塩から遠赤外線が出て肉がふっくら焼け、溶け出した塩が肉に付着するので、適度な塩味が付きおいしい。余計な脂は落ち、ミネラルも摂取できるという優れものである。ただ、溶けた脂や岩塩が下に落ちるので、熱源はストーブではなく焚き火が必須となる。
TEST 5:直火で焼肉した結果は……?
いよいよ最後は直火の炎を使った網焼きを実践した。ふだん肉を焼くときに、針葉樹の薪まきで焼くか広葉樹の薪で焼くか、はたまた炭で焼くかなどと気を遣うことは少ないだろう。ところがどっこい、これがまったく違うのだ。果たして一番おいしかったのはどれなのか?
11.針葉樹での網焼き
焚き火の薪としては最も一般的なのがこの針葉樹だ。杉が多く、ヒノキや松なども混じる。で、こういった針葉樹はよく燃えるので使いやすいのだが、これで肉を焼いてみると、なんかニガいというかススの味がする。それは木の中にあるヤニが原因だ。クッカーなどに黒く付着するアレが肉にも付いてしまうのである。ということで、これは全員一致で最下位が決定した。
12.広葉樹での網焼き
中身がぎっしりと詰まっており、一度火がつくと長時間燃え続けるのが広葉樹の魅力。代表的な樹種はクヌギやナラ、ケヤキ、栗など。硬いカシなどはかなりの高級品だ。針葉樹よりススが少ないので、広葉樹で焼いた肉は普通においしい。また桜など香りの強い薪で焼くと、ほんのりその香りも肉に移って風味も上がる。そのため薫製も広葉樹を使うことが多いのだ。
13.炭での網焼き
最後は炭火による網焼きだ。これはもう焼き肉屋でもおなじみなのでまずいわけがない。炭は大量の遠赤外線を放出しているので、それが食材を芯まで温め、周囲はパリッと焼き上げてくれるのだ。まずさの原因となる煙(肉の脂が燃えて出る煙は別)も出ない。口にすると、パリッとしてジューシー。同じ肉を大量に食べて食傷気味にもかかわらず、全員が高得点を付けた!
結論!:焼肉は鉄板か炭火でやれば間違いなし!!
今回は3人が10点満点法でそれぞれの焼き方に得点を付けた。結果は上図のとおり。炭での網焼きが上位に来ることは予想どおりだったが、溶岩石と岩塩プレートが2位、3位に来たのは意外だった。
1 ~3位に共通するのは遠赤外線である。遠赤外線は中からも外からも食材を温めるので、中はジューシーで表面はパリッとなるのが特長。さらに3つとも余計な脂を落としてくれる点が勝因だろう。
これに続いて厚めの鉄板が上位になったのも予想どおり。鉄板は使い込むほどに食材をおいしく調理できるようになるし、道具としてもカッコいいので1枚は欲しいところ。非鉄金属系は好みが分かれるが手入れが楽なのがいい。100円系はまぁ話の種か。そして最下位はやはり針葉樹での網焼きだった。とにかくススが肉にまとわり付き、ニガみや嫌な刺激となって口に残る。
結論としては、焼肉は鉄板か炭火でやれば間違いないということだ。
レポート●櫻井伸樹 photo●平島 格 編集●モーサイWEB編集部・日暮